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(図11)
もう1つ重要なことがあります。これから具体的な提案を皆さんにお示しします。「結論を早くする。事前調整は0(ゼロ)にしよう」。私は、小泉・石原の約束に10年前に立ち会ったんです。皆さんは十分ご存じですが、都市再生特区というのは、「恐れながら」と日建設計と大成建設が大手町1-6の再開発プロジェクトを東京都庁に持っていくと、東京都庁はそれを絶対引き受けなければいけない。引き受けて半年で調整して、東京都庁がイエスかノーの結論を出す。結論がイエスの場合にはその後アセスメントに1年かける。足して1年半でオーケーできるという話でした。ところが、実際に何が起きたかというと、恐れながらと東京都庁に持っていく前に、事前の打ち合わせというのがある。役人も悪いが、不動産屋も悪い。事前の打ち合わせをして、全部でき上がってから、形式としてそれを都庁に出す。その間に区役所の干渉や、ほかの会社のいじわる、役人の思いつき、そういうのがワンワン積み重なって、事前の打ち合わせに4年も5年もかかる。事前の打ち合わせに4年も5年もかかって、できたといって、都庁へ恐れながらと持っていく。事前に全部できていますから、あとは2~3カ月でオーケーでしょう。
小泉・石原慎太郎の昔の再生特区は、あのとおり動いていますよ。ちゃんと6カ月以内に結論を出して、アセスに出しています、と言いますが、とんでもない。日本はスピード感覚が物すごくよくない。時間が大切だ、大切だとみんな10年前から言っていますが、まさに世界的な都市間競争が起きるまでは、「大したことないや。これはこれでやらせておけばいい。5~6年経てば1年ごとに1つ1ついいものができるからいいのではないか」という調子です。その間にシンガポールや香港など、アジアで事件が起きるんです。
役人というのは、僕が経験したところでは、都庁より区役所の役人がピンキリでね。僕は今危険なことを言っているのですが、これ以上具体的なことは言いません。ピンキリのキリのほうの区役所は、区議会がおっかないという。変な話です。区議会議員は天下国家を論じない。地元ですよ。数百の票のためにいじわるする。そういうことで動かない。これをとにかく何とかしよう。
2番目。附置義務駐車場をやめましょう。あれは僕が元凶なんです。僕が38年につくった学位論文をもとにして、その後の僕の教え子たちが真面目に附置義務駐車場の計画標準をつくったんです。ところが、そのために、空き駐車場が多くなって、家賃がない場合に比べて1割以上、上がりました。2万5000円の家賃で貸せるのを、附置義務駐車場をつくったから2万8000円になる。これをやめましょう。やめても東京がひっくり返るような事態は起きないと思います。パーキングシステムや鉄道が使いやすくなったとか、年寄りが車を転がさなくなったとか、駐車場システムがよくなったなど、いろいろ車を転がさない条件があるんです。これをやめる。それから、皆さん知らないでしょう。消防法と建築基準法で、避難通路や消火栓については、タブルスタンダードで全部違うんです。両方の指示に従ってやらなければいけない。これでは建築屋は泣きますよ。
これは、安倍さんや大臣や役所の次官や局長が決めることではなくて、技術職の一番下を支える人間がやっていることなんです。彼らは真面目ですから、建築基準法の赤本のとおりにやります。そのために国が潰れるんです。国が潰れない時はいいですよ。だけど、日本はもう目の前に国が潰れる状況がたくさん起きてきています。財政赤字から老齢化、新興国の追い上げ。そういう時に今までつくってきた慣習化された計画標準や技術基準を一度全部とってみたらいい。とっても日本人はちゃんと生活しますよ。火災も増えないですよ。交通違反も増えないですよ。
3番目は、もっと危険なことを言っています。全員合意は5分の4にする。5分の4でいけることは4分3に、全部1段階下げる。再開発で最後は過半数だっていいのではないか。これは私が、自分で経験したんです。地権者が50人ぐらいいて、中核的に一生懸命やろうという人たちが24~25人いた。残りの24~25人の説得が大変なんです。ここで人間像がはっきり出てくる。人間像の実体なんていうのは、区役所の役人、都庁の役人、国の役人が何分の2にするというときには全然考えていない。判を押すのが嫌で逃げ回るという人もいる。何の理由もないんです。認知症のおばあちゃんがいて、弁護士がついているけどうまくいかない。これからどんどん増えますよ。判を押さない人間が増えているんです。物事の決定に関与したくない。それからやくざ。そういう人たちが50人の中で1割以上、6~7人いました。僕は25人の過半数がとれたら、残りの人たちはイエスもノーも言わなくていいと考えています。過半数とったら、それで都市再開発やってください。そうでなければ、東京の中は絶対何もできなくなります。そういう提案も1つ議論してみていいのではないかと思うんです。そのかわり中核的過半数が賛成ですから、確認した後、ガッチリとスクラムを組みやすいのです。
今日は言いたいことを全部ここに書いたんです。かなり大事なことです。
(図12)
それを前提にして「7つの具体的な都市計画の提案」をします。
①は「山手線内の安全市街化」。安全にする場所は何も東京23区の必要はないんです。山手線の中だけでいいんです。なぜか。首都直下地震の被害想定ではどこで火災が起きるか。東京都の総務局が全部調べています。23区についての地図がある。例えば久我山5丁目というところを調べると、首都直下地震が震度7で起きたときに出火が2件あると書いてある。久我山4丁目は質がいい住宅が多いから、出火はゼロ。その差は何かというと、4丁目のほうは住宅条件がいいから建物は倒れない。5丁目のほうは住宅条件が悪いから倒れる。倒れる建物が10軒あれば、燃えるのが2軒出る。
そういう地図を見ますと、山手線の中は大体安全なんです。ついでに申し上げますと、東京の首都直下地震が起きた、出火点から火が出た、風が強い、これは大火になるぞ。皆さんの家の周り、例えば100軒の住宅のうち65~66軒までは燃えない、倒れないとなると、残りの質の悪い建物の30軒のうち、火が何軒か出る。それでも3分の2燃えなければ大火にならない。僕たち専門家は、東京23区の市街地で出火点の分布を調べながら、その地域の建物が100あったとき、そのうちの65軒か66軒が木造の防火構造と鉄筋コンクリート造ならば、そこの地域は大火にならないから、少しは燃えるけれど安心してください。そういう説明をしています。
木造の建物は100軒あると、年間100軒のうち2軒ぐらい建て替えがあります。1.5軒かもしれません。地震が起きないで30年経ちます。30年経つと、古い建物100軒の2%ずつ建て替わっていきますから、60%が新しくなる。65%になると大火になりませんから、30年地震がなければ東京の街はかなり燃えにくくなるんです。特に燃えにくくなる場所がどこかというと山手線の中です。山手線の中で燃えやすいところは限定的です。1つは神楽坂。物すごくいい街ですが、燃えます。しかし、あれを全部木造の建物で防火造にできます。これは東京都も決めた新しい防火地域というのがあって、新しい防火地域の中では、木造で絶対に火が移らないという構造を指定して、それで建てれば新しい防火地域の建物として認定することになっています。
もう1つは谷根千です。森まゆみさんが大好きな谷根千。根津に行きますと、お寺さんの言問の坂を上がっていく左側に、非常に雰囲気のいい、木造の古い、60年~70年たった建物がたくさんあります。たいてい、前の道路が2間道路、3.6メートルです。これをどうするか。これは先ほど言った新しい防火地域として、東京都が決めた木造で防火造にすればいいんです。
谷根千と神楽坂だけを手当てすれば、山手線の中は安全になるんです。そこに外国人さんたちは住んでください。そこなら安全で、おまけに安心な道具も入れますよと言います。安心の道具で一番いいのは防犯灯です。防犯灯は、私が住んでいる浜田山の団地の東角に1つあります。普通の電気より照度が高くて、防犯灯の下に立ちますと、普通の防犯灯より2倍ぐらい遠くでも変なおじさんだと認識できるだけの明るさを持っています。それから、「助けて」というブザーがついていて、すごく大きな音が鳴ります。カメラがついています。そういう防犯灯がこの頃増えています。そういうものを入れるだけで住宅地域の防犯性能がグッと上がるんです。一種の予防効果です。
「住みやすい」ということでは、山手線の中の文京区辺りに外国人に住んでもらいたい。いい住宅地がまだまだあるんです。新宿区の市ヶ谷の辺りにもあります。今外人さんがどこに住んでいるかというと、あちこちに住んでいます。しかしカネを払って会社に投資して、日本人を使うような外人さん、つまりアベノミクスのInvest Japanの外国人さん、ずばり言うと、フランス人でもドイツ人でもイギリス人でもアメリカ人でも、コーカシアンの企業、例えばモルガンスタンレーやシティなどの金融系、ベンツなどで働く外国人は、どこに住んでいるか。もう決まっているんです。港区、それから目黒区です。目黒区は燃えやすくて危ないんです。港区と目黒区と、それから渋谷区。コーカシアンでないアジア系は江戸川区や北区です。すごい差別です。しかし、仕方がないんです。カネを持ってきて日本の中でオフィスをつくって就業機会を増やして、金融都市東京になるように頑張ろうという人ですから。そういう人には、目黒区は危ないので、ぜひ山手線の中の文京区に安全だから住んでください。それにふさわしいマンションもたくさんつくります、そういうことをここで言おうとしているわけです。

 

 

        
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