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【2】ドコモモ(DOCOMOMO)という活動

(図9)
ドコモモという組織がございます。ご存じなかった方は豆知識で覚えて帰ってください。インターネットで調べていただくといろいろな情報が出てまいります。
(図10)
ドコモモというのは、Documentation and Conservation of buildings,sites and neighbourhoods of the Modern Movementの略です。Modern Movement、まさに20世紀前半の建築運動の、建物と敷地と周辺環境の記録や保存を目指した組織です。
これは国際組織ですが、日本にもドコモモ・ジャパンという支部が1999年から立ち上がっております。
この組織の名前が今日もこの後何回か出てきます。先ほどお見せした一般の方に通じやすい様式建築や伝統的な建築の保存ではなく、一般の方になかなか理解されない四角い箱の建物の保存を訴えている組織というわけです。
(図11)
それでは日本では、どういうものが具体的に評価されているのでしょうか。ドコモモ・ジャパンが1999年に、20世紀前半の日本の近代建築ベスト20を選びました。これがその後どんどん増えて、今160ぐらいまで来ています。一番古い建物は1928年の同潤会のアパート、一番新しいのは、1966年の日建設計が設計したパレスサイドビルです。戦争を挟んで40年間ぐらいの間の建物を選んでいます。これら20の建物を御紹介します。
どのような建物が今大事だと言われ始めているかということです。
まずは表参道にあった同潤会アパートです。今は残念ながらなくなって、安藤忠雄さんが設計したビルになりましたが、コンクリートでつくられた日本の初期の重要な集合住宅だったわけです。
(図12)
大阪の住友銀行の本店です。これは今後もずっと大事にしていただくことが決まっております。様式的な柱があると思われるかもしれませんが、これはそのままヨーロッパのまねではなく、幾何学的な構成やディテールの省略が始まっていますので、ドコモモ・ジャパンとしてはアカデミックな目で見て、日本における近代建築の初期のものだと考えたわけです。
(図13) 
藤井厚二という建築家が設計した京都の大山崎にある聴竹居という住宅です。これは伝統的な日本の和風住宅だと思われるかもしれませんが、ガラスの温室があり、アールヌーボーのようなデザインもあり、非常に環境工学的に設計されていると言われております。
(図14) 
小菅の刑務所です。
(図15)
東京中央郵便局は、今は建て替えられています 。
(図16)
土浦亀城という、フランク・ロイド・ライトのもとで勉強した建築家の自邸です。目黒にまだあります。
(図17)
慶應義塾の小学校です。谷口吉郎の作品です。
(図18)
 村野藤吾設計の宇部にある市民館です。これはきれいに改修されて現役で使われています。
(図19)
堀口捨己が設計した一見和風に見える建築です。
(図20)
 ここからが戦後になります。鎌倉にあり、保存問題で揺れている、坂倉準三が設計した美術館です。
(図21)
 増沢洵が設計された個人住宅です。
(図22)
前川國男が設計した神奈川の音楽堂・図書館です。
(図23)
 先ほど登場しました秩父セメント工場です。
(図24)
丹下健三の設計した広島のピースセンター。
(図25)
それから、この後詳しくお話しする日土小学校です。
(図26)
丹下健三の香川県庁舎。
(図27)
 レーモンドが設計した群馬の音楽ホール。
(図28)
丹下健三の代々木の体育館。
(図29)
早稲田の吉阪先生が設計した八王子の大学セミナー・ハウス。壊されてきています。
(図30)
日建設計の林昌二さんが設計されたパレスサイドビルです。
これらの20の物件をドコモモ・ジャパンとしては、日本を代表する近代建築として最初に整理したわけです。
 見ていただくと、かなりバリエーションがある。構造も、コンクリートも、木造あります。デザインも、ヨーロッパの色合いがあるものから、日本的に変形したもの、日本の伝統を重ねたようなものまで、かなり幅広くある。つまり日本における20世紀前半のデザインの仕事は、ヨーロッパの影響を受けながらも、そこに地域性や歴史性を重ねていく仕事だということが非常によくわります。
 日本がこのベスト20を選んだ時に同時に世界中のいろいろな国のドコモモ支部で、それぞれの国のベスト20を選んで1冊の本にしています。その結果、国によって本当にさまざまだったということが改めてわかりました。コルビジェのような白い箱ばかり並べた国もあり、他の国と比べると日本が一番幅広いということがよくわかります。
(図31)
 ただ、こういう時代の建物の保存は、最初に申しましたように、なかなか難しく、現実は厳しい。例えば大阪ですと中央郵便局はつい先般壊され、現在そこに何もありません。広場のまま残されている。
 前川國雄の京都会館も、大ホールが、規模が小さ過ぎて、オペラができないという話になり、左半分だけ、今切り取られて、そこに新しいホールが挿入されることが進んでおります。
 それぞれ、ドコモモも、建築学会も、市民の方々もいろいろな意見を言いましたが、都心の一等地にあり、そのままというわけにはいかなかったというわけです。

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