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(図29)
次の年は、私は行けなかったんですが、Cになっておりました。このラベルの効果たるや最たるものです。今、官公庁の建物は、4管になっていなくて、2管で冷暖切りかえなので、エネルギーは非常に少ないんですが、それでも涼しくしていると怒るような風潮がある。国交省や経産省に行って、涼しそうに仕事をして生産性が高いと、何で君らが涼しくしているんだと怒られる。それが私はおかしいと思っています。もっと効率よく仕事をしてもらって、早く帰ってもらったほうがいいと思います。そのためには、ゼロ・エナジーに向けたラベルは非常に効果がある。耐震性に近い表示だと思います。耐震性が悪いところでみんなが働いていいということにはならないのと同じで、エネルギー性能が低いところでみんなが働いているのはいけないと言ったほうが本当はいいと思います。
(図30)
これはパリです。パリは不動産の売買にラベルをつけることが既に義務化されていますので、計画時のラベルが表示されています。不動産屋の店頭に行って写真を撮ってきました。「田辺先生はこのためにパリにご飯を食べに行った」と言っている人がいますが、この写真を撮りに行ってきました。見てください。これはCで、これはFです。こういうふうにいわゆるアパートの賃貸や売買にエネルギーラベル表示がある。どのくらい効果があるんですかと聞いたら、結構正直で、「今のところ、パリは売り手市場だ。物件のほうが少なくて、買い手のほうが多いので、エネルギーのことまで言っているとなかなか物件が決まらない。ただし、買う人は見ています。少し郊外の売り手が多くて買い手が少ないところに行って比較するときに、光熱費がどのくらいかかるかなどを考えるので、十分効果をあらわしている」と言っていました。これはドイツではなく、フランス人がやっている。北のほうに行くと当然のような気がしますが、フランスでもこうやって、不動産屋の前に表示がされているので、すごいなと思います。早晩日本でもこういうことが始まるのではないかと思います。
(図31)
東京は、大規模事業所については排出量の規制が行われています。どうしてかというと、日本全体で見ると、業務ビルは22%しかCO2を出していない。エネルギーもほぼ同じで22%くらいしかありませんが、東京都の場合、CO2排出量の41%が業務用ビルです。しかも東京は大きいので日本の業務部門だけ見ると、東京の温室効果排出は日本の2割になります。東京のビルは先端を走っていただかないといけないということです。しかも、この41%の業務ビルの1500キロリットル以上使っている大規模事業所と言われるものが約1400くらいあります。これが41%の4割を出していますので、残り70万件あるんです。70万件が6割で1400が4割ですから、その1400を規制しましょうというのが、東京都のCO2の削減義務です。早稲田大学も削減義務に入っています。東京大学が東京都で最も大きい排出事業者ですので、我々も一生懸命減らしています。
(図32) 
省エネといえば省エネなんですが、ゼロ・エナジーを目指した超高層や今までよりも少ないエネルギーを目指したビルを建てないと、世界に冠たるものにはなれない。
(図33) 
私も東京都のお手伝いを少ししていますが、その中で、文句が出ました。ちょっと前に、物すごく性能のいい省エネビルを建ててしまいました。お金もたくさん使って、機械も、空調機も、制御もいいものを入れた。そうすると建った時から排出量が少ない。もとが少ないんだから、これから何%減らせと言われても困る。こういう制度をつくると必ずそうなるんです。そういうものをアーリーアクションといいます。人より先に環境努力する。その人たちを評価してあげないと、先にやった人はバカを見てしまう。それで、トップレベル事業所という制度があります。
いわゆる設備の仕様が主ですが、その仕様に対して立派なものを使っていれば、トップレベル事業所にしましょう、そうすると、あなたの排出義務は半分でいいんですよという制度です。本来はアーリーアクションなので、早くお金をかけてやった人が損をしない制度です。ところが、東京都が、ア-リーアクション事業者や早期実施事業者と呼んでいれば誰も乗らなかったと思うんですが、トップレベルといういい名前をつけたので、私もトップレベルを欲しい、うちの設計事務所は1件もトップレベルがないなど、皆さんが競争してトップレベルの事業所を取るようになりました。これは大変いいことだと思います。
トップレベルの人たちが省エネあるいは省CO2ができてないかというと、そんなことはない。これは東京都のデータです。基準年を見ると、トップ以外は123キログラムのCO2を出している。トップは105です。2010年度は107と94で、2011年度は91と80で、ほぼ同等に削減できている。内部環境のトップのレベルは極めて有名なビルで、粗悪な室内環境を提供しているとは思えない。きちんとした設備でアーリーアクションを行ってトップレベルになっても、まだ努力できるところはあると思います。そのとき重要なのはきちんとした環境を整えて、残業しないようなビルが私はいいと思います。
トップレベル事業所のどの部分が強いか弱いかも公表されています。
(図34)
耐震性と省エネ性について考えます。耐震が悪いという人はいない。これは地震と建物の関係です。エネルギー消費量は建物と設備の関係なんですが、オフィスビルは人間が使用するので、設備は運用によって変わってくる。ここが耐震性と建物の関係と最も違う。我慢すれば減るということです。我慢しないためには建築性能の高さが非常に重要になるので、ZEBの究極の目的を目指してどんなふうに建物をつくっていくかというのが重要だと思います。
今日は私のところの学生も何人か来ています。よく言っているのは、建築業界は元気がない。建物をつくったり改修するともう建物は要らないと言われたり、そんなことをやってどうするんだと言われますが、私は決してそうではないと思っています。
車をつくる人たちはハイブリッドカーやプラグインハイブリッド、電気自動車などの省エネの車をつくって威張っています。でも、ゼロではないです。燃費性能でキロメートル/リットルで出してどんどん伸びますが、ゼロではない。しかも、日本の自動車は燃費性能のように実際には走らない。例えば30キロと書いてあるのに30キロ走らない。何故なら、エアコンが入ってないんです。ですから、暖房をつけると走らないんです。電気自動車は1回の充電で160キロ走りますが、暖房スイッチを押すと40キロしか走りません。それでも褒められるのに、建築をやっている我々がゼロを目指した家や建築を建てると、箱物は要らないと言われる。この考え方はなくしてほしいと思っています。建築がゼロを目指せば、車をかえるよりいいですよ。場合によってはボジティブエナジーといっていますが、小さな規模のもので、発電するようなものをつくれば、さらに貢献できます。僕は、建築やこういう分野の底上げやプライドのためにも、省エネではなく、ゼロ・エナジーという考え方がいいのではないかと思っています。
(図35)
ヒエラルヒーで太陽電池だけ入れればいいというものではないので、負荷を削減する、パッシブデザインをきちんとする。だから、いかに建築のデザインが重要か。それから、機器を効率化して、再生可能エネルギーを使って、それでもだめなら敷地外の再生可能エネルギーを使っていきましょうというヒエラルヒーのアプローチです。
(図36)
こういったZEBは、ヨーロッパの取り組みが非常に早かった。ヨーロッパも厳しい人たちがいて、本当にゼロにならないだろう。本当にゼロにならないんだったら、そんなのやめてしまえという厳しい意見もあった。最近ヨーロッパの人たちは、nZEBといっています。ニアリー。ゼロに近いのでnを使っています。
(図37)
EPBDの国々は2020年までに全ての新築住宅・建築物を、今まではZEBといっていましたが、ニアリー・ゼロにします、と言っています。少し後退しています。
公的機関は2年前倒しです。
ニアリーは超省エネ化なんですが、先ほどのようなネガティブな意味が非常に少ないので、完全なゼロではないけれども、近づけていきますよということです。
(図38)
 これは後で丹羽さんからご紹介があると思いますが、空衛学会のZEB委員会でつくっているZEBチャート、別名「丹羽チャート」と言われています。こういうふうにしてZEBをあらわそう。例えばレファレンスのビルが、オフィスビルだったら2000MJ/a・m(メガジュール/平米・年)くらいにしておいて1000 MJ/a・mくらいでいいと認めてあげればいいと思うんですが、1600 MJ/a・mくらいのレファレンスビル、今新築のオフィスビルのデータでも1600 MJ/a・mくらいになっているので、いかに減っているかだと思います。800 MJ/a・mくらいまで減らす。そうするとZEBreadyになる。もう少しいくとだんだんニアリーになるんですが、こっち側に上げていくとZEB+。ZEB+はプラスエナジービルなので、再生可能エネルギーでプラスしていくという考えです。まずは、日本のお得意の省エネをどうやるか。その後再生可能エネルギーをどうやって使っていくかということをチャートにプロットしていく。経産省からZEB・ZEHの補助金が出ていまして、それらをプロットしたデータがありますが、非常に少ないエネルギーのビルが動くようになっています。新しいオフィスビルは1000 MJ/a・mくらいものが結構出ていまして、テナントビルでも1000 MJ/a・mで動くビルが出てきています。一昔前の小学校のレベルです。

 

 

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