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(図39) 
米国のNRELという再生可能エネルギー研究所がZEBの定義をしています。ここはA、B、C、Dという定義をしています。Aが経産省の定義に近いんですが、建築面積内の再生可能エネルギー。要は建築の屋根等に置いた、壁面につけた太陽電池等でゼロになるというものです。それから、Bは敷地内で賄う。例えば駐車場の屋根につけてもいい。Cがオフサイトの再生可能エネルギー、バイオマスや木材ペレットを持ってきたもので行う。先ほどのオランダのTNOのビルなど幾つかあります。小さな規模のものはアメリカにもあります。オフサイトを使ったものがDです。Dはアメリカでもそこそこあります。実はスタンフォード大学の校舎は基本的にZEBにすると決めていて、新しいビジネススクールもZEB―D。半分くらい省エネして再生可能エネルギーを持ってきてスタンフォードの建物は運営される。ベイエリアで非常に気候がいいので、北側と南側の片方は冷房が入っていない研究室があったり、非常におもしろいことが行われています。
(図40) 
フランスはさらに頑張って、リヨンの開発をしています。ZEB・ZEHは単体だけでは終わらないと思います。コニュニティーにどうやってつなげていくか。再生可能エネルギーが多くなってくると、ネットワークをどんなふうに考えるかなど、スマートグリッドをどう考えるかということは非常に重要な問題です。リヨンは、世界遺産の旧市街の駅を挟んだ反対側を開発しています。そこは、刑務所があったり、工場跡地があり、ボロボロで犯罪が多かったところですが、そこをスマートシティとして改装した。非常に大規模な改修が行われています。
(図41)
スマートをキーワードにして、わざわざ運河やショッピングセンターをつくって、建物も非常に高い値段で売れています。名立たる建築家に頼んでいます。ジャン・ヌーベルが建てたビルがあり、隈研吾さんがヒカリというビルを設計されています。
(図42)
こういう集合住宅があります。ベランダの部分が多くて、ここは遮蔽になっています。この一番上はフットボールの有名な選手が買ったそうです。日本の都心よりも値段が高い。昔はそういう土地だったのが、スマートエネルギーとネットワークで売り出した。
(図43)
非常におもしろい建物がたくさん建っています。
(図44)
NEDOの補助金でカーシェアリングの実験が行われています。再生可能エネルギーで発電されたものをチャデモで充電し、その充電を使って、町の中をカーシェアする。カーシェアをすると、急速充電と、ゆっくり充電をうまく使い分けられる。自分で持っていると、すぐ乗りたいときに充電してないと乗れないけれども、そういうことがありません。
(図45)
これはまだ建設中で基礎しかありませんが、隈さん設計のヒカリというグランドリヨンで行われているプロジェクトです。このマンションはボジティブ・エナジー・ビル(PEB)と言われています。さすが隈先生は早いなと思うんですが、ポジティブにエネルギーをつくり出す、PEBというタイプのものを、すでに始めています。
(図46)
ZEBは今後単体ではなく、コミュミティーとくっついていくんだろなと思います。ZEBもZEB+になるような住宅が出てきたり、ZEBをPEBといっているところも出てきている。ポジティブエナジーは住宅であれば十分可能です。スマートシティの中のものと位置づける。例えば自然エネルギーであれば自然エネルギーが昼間供給され過ぎると、それをどこに持っていくかが非常に大きな問題ですので、BEMSやHEMS、CEMSの重要度が、ただの見える化から次の段階にいくだろうと思います。個々の建築のZEBからコミュミティーやシティを包含したような概念になっていくと私自身は思っています。
(図47)
この4月から林泰弘先生中心にこういうプロジェクトが起こることになっています。早稲田大学にスマート社会技術融合研究機構というのができて、私も手伝ってくださいと言われています。グリッドと業務の建物、住宅の建物をくっつけたもの、発電、社会システムがどうなるか、こういう研究を、学内のいろいろな方々が加わって行う、研究機構ができる予定です。特に日本は震災を契機として社会の意識が変わりましたので、それがどんなふうに社会に波及していくか。私は住宅のHEMSだけが商売になるとはとても思えない。ただ、連携して送電網のネットワークがあり、自然エネルギーがたくさんできれば、それをどこかで送電網として吸収しないといけない。
オバマも前はグリーンニューディールと言っていましたが、つい最近は、送電網が非常に重要な時代になると言っています。10月にドイツから私の友人が講演に来てくれました。ドイツでは蓄電よりも蓄熱だと言っています。蓄電池なかなか高価なので、蓄電のかわりに、熱をどうやってためていこうかということを非常に考えている。ただ単体で電池をつければできるという世界から、どうやってコミュニティーでそういうものを融通していくかということを我々は考えるべきなんだろうなと思います。これはまた正式には発表になると思います。早稲田の中でも、建築だけでなく、電気の先生や物理の先生、社会科学の先生を含めて研究を始める予定です。
(図48)
アメリカも、シェールガスが出たので、一時の勢いはありませんが、一生懸命省エネ建築をつくっています。アメリカは二次エネルギー消費量であらわすことが多。換算係数を9.76とやると、200キロワットアワー/平米・年が大体2000メガジュールと思ってください。熱源が違うと違うんですが。アメリカの今の合言葉は100キロワットアワー以下のビルをつくりたい。インドも100キロワットアワー/平米・年くらいを目標にしていきましょう。幾つか実例もありますし、アメリカのアシュレイが一般ビルに対して、エネルギーガイドラインで50%削減ビルをつくるためにはどんなデザインをすればいいかというマニュアルも出しています。
(図49)
LEEDとENERGY STARが使われるようになっています。LEEDはエネルギーだけではないですが、ENERGY STARはエネルギーの実際の測定値を申告して上位に入るとこのマークがもらえる。毎年もらえるのでたくさん集めている会社があります。


(図50)
ENERGY STAR取得ビルの最近の伸びです。2001年くらいは非常に少なかったんですが、2012年の実績で年間約2万棟くらいがこのマークをもらっています。
(図51)
しかも、その3分の1くらいは2回目です。1度もらったら次ももらいたいというので申告しています。カリフォルニア州はこの評価制度を省エネに使っています。おもしろいのは、日本だとCASBEEの点数が高いビルになると思いますが、建築確認を早く出すということが行われています。グリ-ンビルを建てれば早く許可してくれるので、金利の利回りが非常にいい。ビルを建てるときに片方のビルは2年待たなきゃいけない。片方は1年でいい。1年で許可がおりれば、その分の金利負担は少なくなりますから、みんなグリーン化に向かうだろうという考えです。
ニューヨーク市はエネルギー消費量を申告しないといけなくなります。ニューヨーク州では、全てのビルが、うちはどのくらい使っているというのを公表しなさいという条例ができていて、そこに経済的なインセンティブを与えようとしている。 
(図52)
カリフォルニア州は省エネ基準を満たしていないところは許可がおりないというふうに変えつつあります。ちょっと厳しいです。
(図53)
幾つかビルをご紹介して終わりにしたいと思います。サンフランシスコには自然換気ビルができています。
(図54)
NRELという再生可能エネルギー研究所はゼロを目指しています。もう少し太陽電池ができるとゼロになります。
(図55)
ひさしのデザインをしている。もう少し高くしてもいいなと思うんですが、ここはライトシェルフになっていまして、室内を明るくしています。ルーバーの角度が特許性があるものです。放射冷暖房をしています。負荷が小さくなっているので、放射冷暖房でもオーケーです。
コロラドなどは非常に高地です。
(図56)
デスクトップパソコンは使用が禁止です。
(図57)
これはルーバーです。外まで行けるルーバーを開発しています。デスクトップ禁止で、新クライアントの端末かノートパソコン以外、持ち込めない。だから、非常に負荷が小さいです。
(図58)
インテリジェントなコンセントがありますが、しばらくいなくなると消えるし、遠隔からでも消したり入れたりすることができます。机は非常にすっきりしています。
(図59)
 これはデータセンターです。PUEが1.1幾つという自然換気型のデータセンターです。アメリカではヒューレット・パッカードがゼロ・エナジーデータセンターを発表しました。PUEは1位です。コンピューターに使うエネルギーしかデータセンターで使っていない。空調に関するものは再生可能エネルギーと自然エネルギーで賄っています。

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