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(図70)
横軸が延床面積、縦軸がCO2の排出量。プロットすると、確かに少ないほうに固まってはいます。先ほどのニアリーというからには、これくらいのところに入ってこないとゼロ・ネットとは言いづらいと思います。これをいかにゼロに持っていくかというのが今後の取り組みかなと思います。
(図71)
これは、先ほど田辺先生からご紹介があったZEBへのヒエラルキーアプローチを少し整理したものです。先ほど数字が入っていましたが、あの辺は賛同を得られていないので消してあります。概念だけ見てください。基本的にはレファレンスビルをローエナジービルに持っていく省エネルギーの取り組みです。もう1つの取り組みは、省エネルギーというよりもエネルギー自立、自分でエネルギーをつくる力を持っているビルの取り組むです。45度のラインはネット・ゼロ。そこを境に、ポジティブエナジービルがあります。省エネルギーの取り組みとエネルギー自立の取り組みでこのラインに近づく、あるいは超える、そういうアプローチの仕方があると思います。省エネルギーの中のヒエラルキーは、田辺先生と同じですが、負荷を減らして、自然エネルギーを使ってシステムを効率化する、こういう考え方かなと思います。現状ここにあるやつをここに持っていくと、7割や8割の削減になります。先ほど50%という話がありましたが、レファレンスを大きくすると7割とか8割という話になってきて、そんなことできるのかと言われたときによく言っているのがこの話です。
(図72)
デマンド側とサプライ側で同じような取り組みを2軸で考えると、デマンドサイド50%削減、サプライサイド50%削減、そうすると掛け算で0.25、総量としては75%省エネビルになります。もちろんハードルは高いですが、あながち無茶な取り組みでもないと思います。
(図73)
それをいろんな形であらわしたのがこれです。横軸がサプライサイド、縦軸がデマンドサイド、掛け算できいてくるとここを100とするとこの面積は25になりますという話をして、何とか元気を出して取り組んでほしいなということで、この絵も描いています。
(図74)
これは先ほどのデザイン手法をもう少し具体的に書いたものです。大きく言うと、パッシブデザインと言われているところ、アクティブデザインと言われているところ、最後のエネルギーマネジメント、この3段階かと思います。パッシブデザインのところは、田辺先生の冒頭の話にありましたように、屋内環境や屋外環境もきちっと適正化した上で負荷を減らしいく必要があると思っています。それから、つくった後、先ほど運用時のラベリングの話がありましたが、ここがきっちりできていないと本当のネット・ゼロ・エネルギー建築と言ってもらえないのではないかと思っています。
(図75)
この絵だけだとイメージしにくいので、それをもう少しメニュー的に描いたのがこれです。3階建てとか4階建てくらいであれば十分に設計可能な手法なのかなと思います。都心型をどう考えていくか、少し課題があると思っています。さすがに3階建てを都心に建てるわけにはいかないので、7階建てとか8階建てのところでどう取り組んでいくかが今後の課題だと思います。
(図76)
この3階建ての建物でどうなるかためしに試算したものです。
(図77)
一番下をnZEBと呼んでいます。自然採光を重視したかった。暖房負荷と冷房負荷を犠牲にして、照明のほうを重視したプランになっています。
(図78)
計算すると、田辺先生のお話にもありましたが、照明の電力というのは物すごく削減しろがあって、LEDで自動調光してブラインド制御をかけ、さらにタスクアンビエントを組み合わせると80%~90%の削減率が計算上出てきます。2ワット/平米まで落ちてくる計算になる。もちろん夜は自然採光ができません。これは19時で終わっていますが、ここは削減しろとしては大きいだろうなと思います。
(図79)
空調は、自然採光を重視すると、内部発熱が減っていて、外皮負荷が大きくなって、暖房負荷が増えてしまいます。ZEBは暖房で決まる。最近の設計者はこういう感覚がないのではないかと思います。ネット・ゼロという話が出たときは、建物の外皮設計、空調の装置容量設計が今までと少し変わってくるのではないか。変わってくるというより、もしかしたらもっと昔に戻るのかもしれません。
(図80)
NSRIの取り組みとして、いろいろなテーマでNSRI選書という本を出版していこうということになり、第一弾を去年の10月に発刊しました。私の監修で、今日お話ししたようなことも中に入っています。ただし、名前はZEBではなくて、「エネルギー自立型建築」、小さく「ZEBのいま」としています。田辺先生に、発刊に寄せておもしろい話を書いていただいています。まだ買われていない方はぜひ。
(図81)
 残った時間で、ZEBの定義の検討小委員会のご紹介をします。
(図82)
背景は4つあります。ヨーロッパ、アメリカ、東南アジアでZEBに対する取り組みが世界的に動き出しました。日本も何かしなければというのが1つです。それから、東日本大震災でエネルギー自給(自立)という話が認識されたということ。3つ目は、ZEBという言葉が先行してしまって、ZEBって何なのかを定義する必要があり、そこを学会でしようということ。4つ目、学会特有のものですが、空気調和・衛生工学会の21世紀ビジョンの中で、2030年までの「ZEB化技術の確立」、2050年までの「関連分野のゼロ・エネルギー化の完全移行」の圧倒的な寄与がうたわれた。
(図83)
それに対して2012年から委員会を始めています。メンバーは私が座長で、設計事務所、ゼネコン、田辺先生を初め大学の諸先生に入っていただいています。そうそうたるメンバーで、2年近く、10回くらいやっています。出席率の非常に高い委員会で、90%近い出席率です。毎回その後懇親会をやりますが、それも90%近い出席率。ZEBに対する関心は各社さん非常に高いんだろうなと思います。
(図84)
 やっているのは、動向調査とか取り組み事例調査。今後は定義と評価方法をまとめたいと思っています。それから、ケーススタディも行います。
(図85)
去年シンポジウムをやりました。田辺先生のご好意で早稲田大学をただで貸していただきました。175名。関係者を入れると200名近い。非常に盛況で、この辺からも関心の高さがうかがえるかと思います。
(図86)
 委員会の中で、世界あるいは日本の取り組みを調べました。東南アジアのマレーシアと韓国、そしてフランス、フィンランドです。
(図87)
 日本は大手ゼネコンさんの一押し、または公共建築で賞を取った建物など、トップランナーがどうなっているのかというのを調べました。
(図88)
 これがそのチャートです。先ほど田辺先生の紹介にありました丹羽チャート、私が最初に書いたので、そう呼ばれているだけです。横軸が一次エネルギーの消費量(コンサンプション)、縦軸が一次エネルギーのゼネレーション。この45度がネット・ゼロということになります。いろいろプロットしていますが、世界的にはここら辺に来ている建物があります。アメリカのルイスセンターや韓国の環境省の建物、この辺は本当にニアリー・ゼロになっていると報告がされています。
 日本はどうかというと、この辺です。横軸は一次換算のキロワット/アワーで書いてありますので、ややこしい。この辺が1000メガジュール/平米・年です。この辺に日本の最先端のものが固まっているというのは、これを見ていただくとよくわかります。これを左上のほうにいかに持っていくか、そういう今後のロードマップもこの図から見えてくるのかなと思います。
(図89)
これはNEDOでネット・ゼロ・エネルギービル補助事業を環境共創イニシアチブが調査した結果です。これも同じように横軸をメガジュールでプロットしています。エネルギー消費量と総エネルギー量の2軸で評価された同じようなチャートです。ネット・ゼロに近いものがありますが、この辺はほとんど団子状態。この10年徐々 にネット・ゼロに上がってきているというトレンドは見えつつあるのかなと思います。
 私からご紹介することは以上でございます。

 

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