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海老塚(比較住宅都市研究会) 笠原課長に2つお聞きしたい。
1つは、大規模な災害があったのに、東日本大震災では何で復興本部を設けて対応しなかったのでしょうか。先ほど技能者不足だとかいう話がありましたけれども、阪神・淡路大震災のときのような体制で取り組んだほうが、余り経験がない東北3県の人たちへの対応としてはよかったのではないかと思っています。たまたま民主党政権下でそういうものができなかったのかどうか、もしお答えいただければ聞きたいというのが1点です。
 もう1つは、担当されてなかったら個人的な感想でも結構です。今日の新聞でも、原発の4町、あの辺の人たちがなかなか戻れなくなって、町が消滅するような状況下にあります。いろんなところの勉強会に行きますと、皆さん戻れなくて大変です。町がなくならないように、地域での拠点、4つの町がそれぞれ別々に持つのが難しかったら、例えば双葉郡である程度まとまって住めるような拠点づくりみたいなことをしてあげないと、町の歴史が消えてしまうのではないかと、個人的に思っています。今回の原発のあの辺の町について、そういった対応はどうお考えなのか、見解があればお聞きしたい。
岡田 若干、本日のフォーラムのテーマを超えているのかもしれませんが、お答えいただける範囲でお答えいただくということでよろしゅうございますね。
笠原 なかなか難しい話ですが、少なくとも今回は、復興庁という別な新しい組織をつくって対応しております。阪神・淡路大震災のときも非常に多様な被害はありましたが、今回の災害は町ごと全部、農業から漁業から、産業含めて全部が一気に流されたということです。中央官庁でいうと、多様な官庁にまたがっての対策が必要だったので、今回は復興庁という各省横断的な組織をつくるということでやったのかと思っています。
 神戸のときも産業がやられなかったわけではありませんが、今度の災害のほうがさまざまな官庁にまたがっているということなのかと思っています。復興の進み方について批判があることは十分承知していますが、実際、中で携わっている者としては、しっかりと機能していると思っています。外にうまくそういうところが伝わっていないので、復興の状況等について、PRにももう少し努めなければいけないなと思っています。
 原発の関係は、復興がどれだけ進んだのかというパーセンテージを宮城と岩手については出していますが、福島に関しては出しておりません。それは原発被災地については街づくりの計画がまだできてない状態で、除染でどれだけ回復できるかとか、今、中間貯蔵施設の問題等もあります。幾つかの町、私の知っている範囲では大熊町や浪江町で、平成29年くらいから帰還が始まるので、その計画づくりを始めています。ほかの地域に比べると遅れていますけれども、そういうことの中でさっきご指摘のあったようなことも議論されるのかなと思っております。
答えになっているかどうかわかりませんが、以上のコメントです。
岡田 お時間が残り5分でございますが、もうお1人ご質問いただければと思います。せっかくの機会でございますので。
 それでは私からさせていただきます。先ほど笠原課長のほうから、最後にとても大事なご指摘がありました。旧耐震の建物の対応、それから、ターミナル駅以外の業務地区、住居地域でのオープンスペース確保の点です。これはその前に述べていただいたいろんなテーマや重点施策の中には必ずしも入っていないように思いますが、今後それを深度化されて、リバイスされて対応していくといった内容で展開されるということでございましょうか。
笠原 もともとの発想は、実は私も略歴にもありましたように、基礎自治体に2度出向したことがあって、まさに市役所の中で防災関係のことも担当していました。震災があって、地域防災計画の見直し等もやってきました。やはり基礎自治体の取り組みというのは、ウエートは地域住民の方々にあるわけです。そこのところに対して避難対策等をやっていくということになりますが、東京のように都心に膨大な昼間人口がいるところでそれぞれの都心の区の方に聞いてみると、問題が大きいだけに帰宅困難者の受け入れ施設とか、区なりでやっていることはあるものの、そこへ来街している膨大な通勤・通学あるいはさまざまな買い物なり、そういうことに来ている方の対策が必ずしも十分にカバーできていないのではないかと危惧しています。帰宅困難者のことはしっかりやっているけれども、本当はもっとけが人とか、救護の問題があるんじゃないかという危機感で始めたということです。
 先ほど申し上げたように、検討会で議論を始めたばかりで、都心の区の方とか都の方との共通の認識になるかどうかはわかりませんが、一応国の組織から見ると、いつも都心の多くの方々のことを言われていながら、行政として対策がとれているのかというと、そういうところは課題があるかもしれないと思っています。都にしても区にしても、もう一歩進んでもらいたいなという思いもあります。実はこの話は、かなり地域地域で民間の方の自助努力、共助でやったいただくところがあれば助かるというのが、行政の側の想いです。
 例えば大手町・丸の内・有楽町エリアにはまちづくり協議会がありますけれども、あのような地域のエリアマネジメント組織なり民間の方々で集まって、その地区、街区で、いざ災害があったら、お互いに助け合おうじゃないかという取組が考えられます。行政でカバーできないところについては、民間の方でやっていただきたいと思っています。
 帰宅困難者の協議会に行政も入っていますが、基本的には駅周辺の鉄道事業者、商業事業者、ディベロッパーの方々でやっていただいて、いざ帰宅困難者が出たときには、自分たちの協議会で帰宅困難先までご案内したり誘導できるかというと、まだ活動をスタートしたばかりなので、これからもっともっと訓練する必要があると思われます。区のほうで幾つかの帰宅困難者場所を確保しても、どこに行けばいいということが多分伝わってないと思われます。ターミナルに集まった方々に、ここが確保されているから、こっち行ってください、あっち行ってくださいという情報を伝えたり誘導することに行政も努力はするけれども、地域地域の開発事業者などの方と共同でやれるといいなというのが行政の側からの思いでもあります。
 いずれにしても、大都市の多くの人の問題については、官・学・民が共同して連携して対応していかないといけないような大きな課題なのかなと思っています。
岡田 それでは、時間が過ぎましたけれども、ファシリテーターからのまとめを僭越ながらさせていただきます。
 テーマ1の首都圏の防災そのものを考えるときに、考えなければならないことがいろいろ出てきたと思います。その中のキーワードを整理すると、超群衆と複雑な都市空間の中で、避難経路等を含めて課題山積でありますし、東京あるいは首都圏を考えた場合に、今日は外国人の話は余り出ませんでしたけれども、そういった方に対するホスピタリティーの問題、情報をどういう形で提供していくかという問題についても、もうちょっと掘り下げていかなければいけないのではないかと感じました。
 テーマ2で、本日は、ターミナル駅とか避難経路とかを中心に議論をお願いしたわけですが、その中でも避難場所、避難誘導の方法、避難経路とか支援経路の強靭化、言葉は単純ですけれども、それをどういうふうに確保していくかということが課題ということでした。それから、避難の手段。それから、今日の大佛先生のお話につながると思いますが、今建っている建築そのものがどういうふうに安全性を持っているかという評価あるいは計画そのものの見直しにそういったものがうまく使われていくことが、市民にとっての安心につながっていくのではないかと思いました。その部分のルーチンをもうちょっとちゃんとつくる必要があるのではないかと思いました。それは、最後に笠原課長から出ましたが、訓練のようなものを通じても醸成できる問題だと思います。その中で投入できるパイ、お金も人も限られていますから、何に力点を置いて行動したり達成するかということを、押しなべて考えるのではなくて、評価しながら連携していくことも必要だろうと理解いたしました。
 3つ目は、官・民・学の連携ということであります。広範な内容が入っていますから、私のあくまでも今時点の考えでありますが、官のお立場から言いますと、防災対策そのものの優先順位と予算化、ロードマップが明快であるということが一番大事なことだと思います。今日の話は総合的な内容としてはとてもよく理解できましたが、それを全部同時並行的に進めることはとても難しいのではなかろうかと思いました。その中での順位づけなり、あるいは重点化ということは当然お話にもありましたが、もう少し掘り下げるテーマかなと思いました。
 安全性の評価とか方法、訓練、防災・減災情報の一元化、プラットホーム化ということも既にやられておりますけれども、これもさらに進められるべき内容かと理解しました。
 それから、学と計画者、我々の連携内容としてはやはり避難空間とか避難経路の整備計画にもう少しシミュレーションとか、実際的な設計行為を結びつけて確実なものにしていくことが必要だろうと思いました。それから、シミュレーションと可視化を通じて、普通の人がどう避難したらいいか、どう避難したら自分が安全に避難できるかをよく伝えるツールとしてうまく使っていくことが一番大事なことではないかと思います。漠然と、災害が起こったときはどこに逃げるべきかということは理解したとしても、そのときにどういう逃げ方をしたらいいか、そういう行動をある程度視覚化する中で伝えることが大事ではないかと思いました。
 最後は、官と開発者との関係ですが、これは笠原課長のほうから勉強されているとお聞きしましたが、避難空間なり、まとまった経路を確保するときに、単独の事業者、地権者だけではなかなか確保できないわけです。それをいかに連携したり、個をまとめて全体で対応していくといった問題についても、考えるべきではないかと、ファシリテーター側としては理解いたしました。
 時間がオーバーしてしまいましたが、防災まちづくりそのものはとても広範な内容を含んでおりますし、私がこういう形でしゃべったことが全てのまとめではございませんので、こういった機会をさらに持って、この議論を深めてまいりたいと思います。
 地震が来る確率が高まっているということでもありますから、冷静にかつ急いで対応してまいりたいということであります。
 改めまして、本日ご講演いただきましたお2方に拍手をもってお礼を申し上げたいと思います。(拍手)
 今日はご参加大変ありがとうございました。以上をもちましてフォーラムをお開きにしたいと思います。
 (了)

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