→日建グループへ





 PDF版はこちらです→ pdf

(図23)
それから、大都市にいろんな都市機能が集中したときに、たくさんの埋め立てをやっているので、臨海部の埋め立て地が今後の潜在的な液状化のリスクにもなっています。
(図24)
それとあわせまして、日本は平地が少ないので、郊外の外延化に伴う造成をやっています。首都圏でもかなり郊外で山を切って土を盛っているところがあり、こういうものが今後の滑動崩落のリスク要因にもなっています。
(図25)
また、東南アジア独特の密集した市街地がたくさん残っています。国交省の基準ですと、全国で約6000ヘクタール程度の木造密集市街地があり、東京でも1600ヘクタール余りあります。東京都はもう少し緩い基準なので、東京だけで6000ヘクタール以上あるような基準になっています。
(図26)
首都直下地震の被害想定です。相模トラフ沿いや、日本海溝沿いの海溝型の地震も想定されていますが、発生確率が低い状況です。基本的には首都直下地震の発生確率が高いので、今回は直下型のマグニチュード7クラスのものを被害想定の前提にしようということになりました。中央防災会議のほうでこういう被害想定を決めました。
首都直下地震では、被害想定を震度7.3、全壊・焼失が約61万棟となっています。被害想定を見ていますと、電気はとまるという前提になっています。鉄道等についても、復旧に地下鉄で1週間、JR、私鉄では1カ月を要するものも出てくるだろうという被害想定を立てているということであります。

(図27)
ただ、こういう被害想定を出したときに、あわせて耐震化や出火原因になるような感電ブレーカーの設置、初期消火活動をやれば、先ほど言いましたような被害想定は、それぞれ9割、5割と減らせる可能性があるという被害想定が出されました。
(図28)
これに基づいて、国のほうで首都直下地震の特別措置法と南海トラフ地震の特別措置法の2つの法律があって、それぞれで国としての基本計画を立てています。国交省のほうでも、独自に今年の3月末までに首都直下地震の対策計画というものもまとめております。この内容は、都市局以外の道路とか河川等の非常に多様なものを含んでおりますので、飛ばし飛ばしの説明にさせていただきたいと思います。
(図29) 
まずは、使命1の中に、「首都圏の命を守る」ということを掲げています。テーマ1、地震や津波から首都に暮らす多くの命を守る。左側のこういう深刻な事態が起こるだろうから、右側にあるようなことを国土交通省としては取り組みましょうということが書いてございます。
木造密集市街地に取り組みましょうとか、宅地防災をやりましょうとか、津波対策もやりましょうということが書かれています。
テーマ2として、過密な空間に人がたくさんいるので、こういうところの安全確保が必要ですということ。その1として、鉄道、空港、地下街、エレベーター、帰宅困難者対策、こういうことも取り組んでいくということでございます。
その2として、過密な空間で災害があったときに、ビッグデータも含め、いろいろな情報の提供が必要だということや、麻痺したとしても緊急ルートを確保する必要があるということもまとめております。
テーマ3として、膨大な数の被災者・避難者が出るので、物資とか避難所の整備が大事ということも柱の1つとして立てています。
テーマ4として、二次災害、複合災害ということで、コンビナートとかゼロメートル地帯、さらには土砂災害のようなものも複合的に起きる可能性があるので、この対策も大事であるということであります。
テーマ5、首都の中枢機能の麻痺を防ぐということで、信頼性の高い交通とか、情報基盤あるいは官庁街の機能不全を防ぐということも柱として立てています。
テーマ6、あらゆる手段で迅速に回復させるということで、被災直後の被害調査、迅速な復旧をやろうということも掲げています。
テーマ7、長期的な視点に立って、復興をやっていくという意味では、あらかじめ国土とかインフラのあり方も検討していく必要がありますし、復興街づくり等の公共団体が立てていくようなものも支援していくということであります。
こういう対策とあわせて、2020年に東京ではオリンピック・パラリンピックがあって、多数の外国人も滞在するので、そういう対策もとることとしています。
駆け足ですが、全体でこういう計画を立てています。
(図30) 
この中で、都市局として重点を置いてやっていこうとしていることを詳しく説明します。
都市行政で一番大事なのは、首都圏でいいますと、やはり木造密集市街地対策です。先ほど全国で6000ヘクタールあると言いましたが、2020年までにおおむね解消しようと考えています。役所の中で言う解消と、一般の方が思われている解消に感覚の差がありますが、解消というのは、全部木造の家屋がなくなるようにしようということではありません。危険な木造密集市街地の定義があって、1つは不燃領域率ということがあげられます。木造密集市街地の中に空地であるとか、耐火構造のものが4割以上あると、火災の類焼の危険度が大きく下がります。何とかして、空地なり耐火構造の建物を増やして、不燃領域率を40%以上にしようということであります。ただ、超えたからといってまだ現地には木造の建物が残っていますので、その点において、解消ということと違いがあります。
あとは、避難困難性ということです。木造密集市街地の中で家屋の倒壊とか、行き止まりの道がありますので、いざ逃げるときに97%以上の確率で逃げられるようにすることを考えています。これも計算の仕方があって、地区の閉塞度とか不燃領域率が一定の基準を満たすようにするということを2020年までにやろうということであります。
(図31)
次に街路事業についてですが、延焼遮断帯をつくることと沿道を不燃化するということを、東京都のほうで事業化に着手をしておりまして、今の予定では2020年までには完成するということです。環六から環七の間にある密集市街地の中で必要となる延焼遮断帯は2020年には予定どおり完成させるという進め方になっています。
(図32)
延焼遮断帯の中のあんこの市街地の部分につきましても、避難地、避難路をその地区の中でも整備をしていきます。例えば今空き家であっても建物が建っていれば、200平米以下は固定資産税が6分の1に減免されるので、所有者は壊していただけない。一方、不燃化特区であれば、取り壊しても固定資産税の減免が続くとか、いろんな方法をとって、あんこの市街地についても不燃化を進めようということをしております。
(図33)
もう1つ我々として問題意識が高いのは、宅地の滑動崩落です。非常に危機意識を持っています。仙台市であれだけ崩れました。首都直下地震ですと、特に神奈川県、東京都内に造成宅地がたくさんあって、先ほど言いましたように、6000戸余りのものを全部公的な負担で災害復旧事業をやっていますので、崩れてしまってから戻すよりも、事前に崩れる可能性がある盛り土の擁壁にアンカーを打ったり、地下水が抜けてなかったら地下水を抜くような工事をやれば、それほど大きな額かけなくても危険度を下げられるので、そういう取組を進めています。
第一次スクリーニングとして、公共団体の方々に、谷地を埋めたところについては3000平米、斜面地であれば角度が20度以上で、5メートル以上の擁壁が建っているようなところがどこにあるのかを調べて公表してくださいとお願いしています。つい最近東京都が、4月に入ってすぐに公表しましたので、東京都のホームページを見ていただきますと、特に多摩エリアで、どこが盛り土のこれに該当するところなのかということがわかるようになっています。結構精度の高い地図ですので、自分のところが切り土なのか、盛り土なのかがわかるようになっています。それぞれのこういう場所について、崩れる可能性があるのかどうか、さらにスクリーニングができます。一次スクリーニングは終わったところでもできれば二次スクリーニングに進んでいただいて、必要であれば事前の対策工事をやれば、崩れた後に壊れた家を直す、あるいは崩れた造成地を直すのに比べると、ずっと小さな額で対策工事ができるということであります。
(図34)
液状化も事前の防止策はお金がかかるので、なかなかできませんが、少なくとも液状化するというところに関しては、地域住民に知らせたほうがいいということで、既にハザードマップが多くの自治体でつくられて配付されています。大部分のハザードマップでは、沖積層のところは真っ赤に全部塗られているはずです。ただ、今回の地震で、浦安市は液状化したけどこっちはそうならなかったじゃないかという宅地がたくさんあります。地表から5メートル以上液状化しにくい層、粘性土があったり、地下水位がなかったりする層があると、実際には沖積層のところでも液状化する可能性が低いので、基準の見直しが必要です。
これはさいたま市ですが、全国で初めて新しい基準に合うような形で地図をつくり直しました。できればこういう形で基準を見直すと、本当に自分の市の中でどこが危ないところなのかというのが浮かび上がってきます。こういうことを進めてくださいということも今やっております。
(図35)
首都圏では余り大きな影響はありませんが、静岡、高知、宮崎の南海トラフの沿岸域では、ここ数年の間に津波の到達時間内に何とかして逃げられる場所を確保しようということで、1つは津波避難ビルを整備しています。津波の避難想定高さ以上のビルがあったら市役所でお願いして、いざとなったら、そこに逃げ込ませてくださいという協定を結ぶとか、そういうものがない場合には、今年度もかなり助成の申請も出てきましたが、津波避難タワーの整備をかなりの勢いでやっています。
従来は、避難地、避難路というと、大きな道路とか大きな公園というイメージでしたが、最近、沿岸地域でやっているのは、階段をつけるとか、上の高台の平場のところを買うなど、それは道路法上の道路にならなかったり、公園にならないようなものですが、避難場所を確保するようなことを今緊急にやっています。南海トラフの地震に関しても、高い確率で来ると想定されていますので、これを緊急に進める必要があるということであります。

3       10
copyright 2014 NIKKEN SEKKEI LTD All Rights Reserved