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(図68)
ここで、こうした人たちが必要としている情報を与えたらどうなるか。逆に,帰る人が多くなってしまうという結果になりました。帰宅経路が安全だという情報が入ると帰宅行動を開始してしまうということです。
(図69)
つまり、事業所のとどめ置き体制が整って、とどまるよう指示すれば,ある一定の効果が期待できそうだということです。ただし、一斉帰宅抑制のためには家族の安否情報もきちんと与えてあげないと効果は限定的だということです。帰宅支援の情報は、むしろ帰宅行動を助長する可能性があるので、情報の与え方にも注意が必要です。
(図70)
 最後のテーマです。一時滞在施設あるいは帰宅支援ステーションの混雑状況についてです。
(図71)
 先ほどのシミュレーションモデルに少々改良を加えて、こういった施設がどの程度混みそうかを推計しました。
 一時滞在施設は各自治体が指定しておりまして、それぞれ収容人数が設定されております。把握している数は、今のところ440ぐらいありそうです。
(図72)
 シミュレーションで、どのくらいの人がこういった施設に身を寄せたくなるのかを推計しました。発災12時間後には非常に高い状況になります。
(図72)
 休日の場合には、就業地に身を寄せることができなくて、買物や食事で外出している人が多いので、それ分だけ混雑することが考えられます。特に都心部で混みそうだということになります。
(図73)
 混雑の激しい周りの民間企業の方に協力を依頼するということを今一生懸命やっているわけですが、ここでは100社にお願いするとどうなるかを仮想的にやっており、それがうまく機能すると、大きく減少させることができるといった結果が得られました。
(図73)
平日についても、これだけ混んでいたのがこれぐらいまで低減できそうだといことが結果としてでています。この結果が何を示しているか? 一時滞在施設は公的施設が多いわけですが、公的施設は休日には閉まっていたり、閉まっていなくてもこのくらい混んでしまうわけですから、こういった非常時には到底対応できないことがわかります。民間の方々の協力は不可欠であろうと思います。

 

 

 

(図74)
都心からの距離ごとに施設の混雑具合を見たのがこちらです。都心部で混雑度が大きくなるのは当然でありますが、12キロから16キロ付近、ちょうど23区から出るぐらいのところで高くなっています。これは、施設の数が少なくなる、すなわち,施設の密度が低くなってしまうということと、都心部から歩き始めた人がこのあたりで疲労して、帰宅を断念してしまう。そういうこともあって、このあたりで混雑が激しくなるのではないかなと今のところ考察しております。
(図75)
一方、帰宅支援ステーションですが、これは東京都が指定しております。都立高校やコンビニ、飲食店、給油所などがそれに該当して、一時的な休憩とかトイレ休憩を想定したもので、施設数としては1万弱ございまして、数としては十分なのかなと思います。
(図76)
これは発災後からの経過時間を横軸にとったものです。休日の発災を想定しますと、ピークが早く来ます。外にいる人はすぐに行動を開始するので、平日よりもピークが早く来てしまいます。
(図77)
都心からの混雑ぐあいは、やはり都心部では高い。しかも、主な鉄道沿いの幹線道路に沿って歩く人が多いため、その幹線道路沿いのステーションの混雑が激しくなってしまうことがわかります。
(図78)
次のテーマはゴロッと変わります。
(図79)
皆さんもご存じのとおり、不燃化・耐震化がなかなか進まないことには、いろんな問題が複雑に絡み合っています。私は、こういう問題も1つ根本にあるのかな・・・と考えております。
つまり、どのくらい危険で、どう整備すれば、どのぐらい効果があるのか。こういった基本的な情報が、自治体の方、地域住民の方、いろんな方々の間で共有されていないということも1つの原因ではないかと考えております。
(図80)
どのくらいの割合の人が避難できなくなるか、あるいは避難時間、避難距離の視点から木密地域の危険度を評価して、それを共有してみようというアイデアです。または,木密地域の整備事業というものがありますが、事業の前後を比較することで、事業を評価する。つまり、「木密事業というのはこのくらい役に立つ」ということを定量的に評価してみようということです。
(図81)
こちらで使うモデルの概要です。物的被害は建物倒壊、市街地延焼、道路閉塞といったものです。こちらが人間行動です。施設の中で待機する、あるいは先ほど見ていただいた帰宅行動、避難行動など、これらを一緒にして、連動させて動かすというモデルになっております。
(図82)
具体的なイメージをごらんいただきましょう。不燃化10年プロジェクトの対象地域でもあります。この地域は鉄道を挟んで北側をA地区、B地区と呼ぶことにします。
(図83)
これはシミュレーションの1つの事例ですが、黒色で示されているのが倒壊すると予測された建物で、このシミュレーションの結果では2カ所で出火しております。これらの建物で必ず出火、倒壊するというわけではなくて、建物の性状に応じて計算される確率に応じて、乱数をもとに推定しています。
(図84)
建物が倒壊しますと、瓦れきが飛散します。
(図85)
飛散瓦れきによって道路が閉塞されます。閉塞道路は茶色で塗ってあるところです。

 

 

(図86)
 出火点から時間とともに延焼して、左上にあります広域避難場所に向けて住民が避難します。

 

 

 

 

 

 

(図87)
こういう一連の避難行動をモデル化してムービー化したものがこちらです。青色が避難中の人です。ところどころで発生してくるオレンジ色の点が避難路を絶たれてしまって避難困難になった人です。延焼していく中を広域避難場所に向けて逃げている様子がわかります。
こういったシミュレーションを何回も何回も繰り返して行って、その結果をもとに評価しようというわけです。
(図88)
シミュレーションの結果の前に、市街地の物的な性状を確認しておきたいと思います。平成3年の市街地の状況と18年の耐震化、不燃化率を比べてあります。
(図89)
平成7年に阪神・淡路大震災が発生しまして、この地域ではそれを契機に非常にハイペースで木密事業が推進されました。青い色で示す耐火構造あるいは準耐火構造の建物が大きく増えました。構成割合を見ても、両地区について大きく改善しているように見て取れます。
(図90)
不燃化率あるいは不燃領域率が大きく上昇して,非常によくなったなというのが一目でわかるわけです。
(図91)
倒壊確率の高い建物が減ってきていることがわかります。
(図92)
焼失率、延焼の確率も減ってきています。
(図93)
集計量を見ても同じことがいえます。
(図94)
避難に直接関係する道路の閉塞率です。平成3年時には広域避難場所のすぐ近くで非常に高い閉塞率が推定されておりました。一般的には広域避難場所に近いと安全だと考えられがちですが、実はそうでもないということが後でごらんいただけるかと思います。
(図95)
この事業によってA地区で特に閉塞確率が減って、閉塞箇所も減っていることがわかります。
(図96)
これからが、先ほどのシミュレーションで見ていただいた結果です。何回も繰り返してシミュレーションを実行し、その平均値をごらんいただきます。平成3年当時の結果です。赤が濃いほど困難率が高いということを示していますが、先ほど見ていただいたように、避難場所に近いにもかかわらず、非常に高い困難率があります。こうした状況が15年間の事業を経て随分よくなったことが見てとれます。

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