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(図36)

 先ほど日建設計シビルのほうでもPRがありましたが、主要駅周辺で安全確保のための計画づくりを進めていただくということで、法律を改正して、都市再生安全確保計画をそれぞれで策定してもらうことにしました。ターミナル周辺等で避難者、帰宅困難者の安全をどう確保するのか、ハード、ソフトを検討して、計画づくりをしていただいて、必要なものについては助成しますということで、ここに書かれているところは既に策定済みのところであります。この下のところは現在作成中です。それぞれでのターミナル周辺での確保計画がとても大事だということであります。
(図37)
もう1つ、これも日建設計シビルのほうで話がありましたが、地下街の対策が取り残されているということなので、このガイドラインの作成業務を委託してお願いしたものです。一応でき上がっていますので、地下街の安全性を確保するためのガイドラインとして近々発出する予定です。このガイドラインに沿って、いろいろと対策をとることに対して、地下街会社での取り組みに26年度から、国費率3分の1で助成制度をつくったので、できればこういうものを使って、地下街の中で安全性に問題のあるところがあれば、ハード、ソフトの対策をとってもらうということであります。
(図38)
これはお手元の資料には載っておりません。都市局で重点的にやっていることとして、木造密集とか宅地の防災、ターミナルの安全計画等々申し上げましたが、対策が十分じゃないなと思っているところがあります。木造密集さえやれば東京は安全なのか、首都は安全なのか。個別のビルの耐震化やインフラの耐震化をすれば本当に大丈夫なのかということで少し問題意識を持って、千代田区、中央区、港区、台東区の4区と東京都と一緒に勉強会を始めています。まだ始めたばかりで、まだまとまっていない検討会資料なので、配付はできませんでした。プロジェクターだけの説明ということでご容赦いただきたいと思います。
問題意識として、東京には昭和56年以前の耐震基準(以下、旧耐震とする。)で建てられた建物がたくさんあります。木造だけではなくて、非木造のものでも旧耐震のものがまだたくさん残っています。それがどの辺にたくさん残っているのかを地図に落としてみると、こういうところにたくさん残っています。
旧耐震のものが揺れるとどれぐらい壊れるのか。私は専門が建築ではないので、詳しいことは申し上げられませんが、揺れ方によっても壊れ方が違います。仙台市で震度6強だったのにほとんど揺れによる建物被害がなかったので、建物の被害に対する意識が余りありません。ただ、思い起こしていただきますと、阪神・淡路大震災のときに、あれだけ建物が壊れました。ひっくり返った建物がたくんありました。三宮駅周辺は大変な状況になっていました。でも、仙台はそうなっていないから、よっぽど建物が丈夫になったのでしょうか。よくよく原因を聞いてみますと、神戸のときにはキラーパルスと呼ばれているそうですが、周期が1秒から2秒ぐらいの揺れが起きました。あれが建物に非常に悪い揺れで、RCの建物も含めて大きな被害がでました。幸い今回の地震はそういう周期での揺れではなかったので、仙台市内等で6強の揺れになっても、余り建物被害がありませんでした。
今回、首都直下地震がどういう揺れになるのかわかりませんが、遠くの場所で起こる海溝型のマグニチュード8とかの地震ではなくて、エネルギーは小さいけれども直下型の浅いところで起こるという想定においては、阪神・淡路大震災に近い地震の想定になっています。今回どういう揺れになるかわかりませんが、これまでの知見からすると、これは南海トラフの地震の想定などにも使っているものですが、実際に旧耐震、新耐震のものが揺れるとどの程度壊れるのかというのがここに書かれています。
旧耐震ですと、非木造のものでも1割を超えるようなものが全壊または半壊するということであります。阪神・淡路大震災のときは揺れたのが早朝の時間だったので、業務街とか飲食街に人がいませんでしたが、東京の業務街なり飲食街等で、人がたくさんいる時間帯に悪い揺れ方をするとかなりの建物被害が出るかもしれません。今は帰宅困難者がどうやって家に帰るかという話になっていますが、むしろ建物で全半壊するものが出てくると、そこで多くのけが人が出たり、建物に救出に行かなければならないということが、旧耐震が集まっているところで起こる可能性があって、問題があるかもしれないということで、そういう建物がたくさんある区の方々と一緒に勉強会を始めたということであります。
ちなみに、例えば千代田区でいいますと、非木造が約8割あって、そのうちの約4割が旧耐震であります。いずれにしても、都心の4区を見ますと、旧耐震のものが4割ぐらい残っていて、すぐに耐震補強なり、新しい建物に建て変わればいいわけですけれども、しばらくは旧耐震のものが残る可能性があるということであります。
都心でそういう被害が出て、全壊なり半壊になると、建物の外に避難する人が出てくることになりますが、では、オープンスペースがどれだけあるのかということを見てみると、これは都心の幾つかの区のオープンスペースを赤く塗ったところですが、神田や虎ノ門周辺エリアなどは、戦災・震災復興の土地区画整理事業をやっているので、細い道路はたくさんありますが、建物がみんな小さいので、建物の中に敷地内の空地(オープンスペース)がない状況です。同じ港区でも、六本木ヒルズとかは、建物の敷地内にたくさんオープンスペースがあるので、いざ災害があったときに建物から外に出ると、逃げ込める場所がありますが、初めのエリアなどは基本的には身近に狭い道路しかなく、こういうところにけが人がたくさん出てきたら、そういう方々のトリアージ(治療や搬送の優先順位をつけて、負傷者を分類し対応していくこと)とか、建物の被害があったときの救出の拠点がないかもしれません。こういうところで例えば六本木ヒルズのような大きな再開発事業が動くときにあわせて、地域地域で防災スペースを設けてもらったらどうかということを検討しているところであります。
(図39)
地域の方々の避難や、救護の仕事は市区町村の仕事になっていて、市区町村の方々はどこに主眼を置いているかというと、基本的には、住まわれている方々がターゲットになっています。避難場所の指定等も、小学校、中学校を指定場所にして、ここに逃げてくださいというのは、そこに住まわれていて、家屋を失った方の避難ということです。千代田区の昼間は80万人の方々がいるわけですが、区行政の避難所指定等は夜間人口がターゲットになっています。建物が全然壊れなかったら、帰宅困難者問題だけですが、こういうところの方々が実際に被災して、負傷して救護が必要ということについては、一体どう対処するのか。こういうところに対策の空白地帯があるかもしれません。例えば六本木ヒルズ等では、約5000人の帰宅困難者等を受け入れることにしています。
(図40)
こういうところで再開発事業等が動くと、今までもオープンスペースを整備していましたが、どういう観点で行っていたかというと、どちらかというと緑化に視点をおいていました。これからは、一定の大きな再開発事業等が動けば、そこで生み出されるオープンスペースは、地域地域で避難、救助の災害対策で使えるスペースとしても整備することを考えています。大街区化すると、街区の中にあった道路を集約化できますので、そういう集約化したものをこういうスペースに使えないだろうかという勉強も始めています。
いずれにしましても、そこに住まわれていない通勤あるいは通学されている方々の避難、あるいは非木造のものが壊れたときにどうするのかということに関して、必ずしも十分に対応できていないという問題意識からこんな検討も始めているところです。これは検討を始めたことのご紹介でございます。
私からのプレゼンは以上でございます。(拍手)

岡田 笠原課長、防災対策の概要を非常にコンパクトにご説明いただき、よくわかりました。最後のほうでプレゼンいただきました密集市街地以外の都心内の旧耐震の街区についてもかなり問題があるということがわかりました。ターミナル駅だけではなくて、住んでいらっしゃるところについても、防災上、オープンスペースの確保についても問題があるという点は、新しい知見かと思います。この後、意見等を求める時間を設けておりますので、その辺も踏まえながら、ご意見を賜りたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、東京工業大学大佛先生のほうからご講演をいただきたいと思います。大佛先生は、ビッグデータ等をお使いになって、数値モデル等を活用されて、都市、地域、人間行動といったものなどをご研究されておられます。本日は、このタイトルにございますように、「首都直下地震を想定したシミュレーション分析とその役割」ということでご講演をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

首都直下地震を想定したシミュレーション分析とその役割

大佛 ご紹介いただきました東京工業大学の大佛と申します。本日は、このようなタイトルでお話しさせていただこうと思います。
(図41)
持ち時間を考えますと、2つのテーマで精いっぱいかなと思いましたが、主催者の方からできるだけ多くの事例をビジュアルに見せてほしいとのことでしたので、ちょっと欲張りまして、「徒歩帰宅者・帰宅困難者対策について」「木造住宅密集地域整備事業について」「道路閉塞による緊急車両到着遅延について」の3つについてお話しさせていただこうと思います。
(図42)
まず、帰宅困難者あるいは徒歩帰宅者について、お話しさせていただこうと思います。
(図43)
 見通しをよくするために時系列的に整理してお話ししようと思います。
 まず,東日本大震災以前に、徒歩帰宅者の行動はどんなふうになるのかな・・・と思って作成したシミュレーションモデルについてお話しします。そして,3.11の実際の状況はどうであったかということを振り返ります。その後、帰宅困難者対策条例はどんなもので、どんなふうに機能しそうか。それから、それ以降の取り組みについて少し評価してみようと思います。

 

 

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