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1.東日本大震災の特質

(図1)
まず、皆さん何度も頭の中にたたき込まれていると思いますけれども、3月11日の状況をもう一度リマインドしてみたいと思います。
(図2) 
左側のほうは、比較的感度の低い地震計で全国の動きを見たものです。実はもっと感度の高い地震計のネットワークというのもございます。それを見るともっと衝撃的です。あるところで地震計が振り切れて機能しなくなります。500秒ぐらい今の状態が続いたわけです。非常に衝撃的な事態が東北で起きていますが、先ほどのように、北海道から九州までほぼ皆さん同時にすごさを体験したわけです。日本の方は東北で動いていることに対して、ある意味でのシンパシーを持ち続けているというのはこういう理由だと思います。
(図3)
これは仙台の閖上というところです。震災の前と後で一遍にこうなってしまった。
(図4)
これは南三陸の港のところです。両方とも町がなくなったという実感を改めてごらんになっていただければと思います。
(図5)
(図6) 
地震の特質を整理してみます。太平洋を取り巻く世界の地震源を示しています。つまり、ここのエリアでは、どこでも東北のようなことが起きるわけです。日本の沿岸でも起こる可能性がありますよと日本人としては思うんですが、これから人口が増えて、いろんな動きをするであろうことが考えられるエリアもこれからの大きな危険性をはらんでいるわけです。
(図7)
今回の地震は、非常に大きなエリアで起こり、かつ甚大である。地形、文化、産業がそれぞれ全部違うところで起きています。阪神・淡路のときのような1つの論理でこの震災の復旧・復興を語ることができないということが一番大きなこ特質です。これは皆さん十分にご理解いただいていると思います。
(図8)
1つの市街地、都市に行っても、部分的に滅失したところ、あるいは壊滅的に滅失したところが入り組んでいます。物理的に入り組んでいるということは、人の気持ちが、復興あるいは復旧の要求に対して違うということです。
(図9)
そういう意味で復興の構想、計画にどういうふうにつなげていって、住民の方の合意を得るかということは極めて難しい局面にあると思います。
(図10)
都市計画的にもかなり細かい配慮をしなければいけないという実態がございます。
(図11)
それから、農村部、漁村部の復興なくして東北の復興はあり得ないといっていいと思います。ここには漁村のことしか書いてありませんが、青森から福島まで小さな漁村が約400あります。集落は600ほどあります。非常に小さな集落もありますが、それがほとんど壊滅的な状態になった。これは地元の産業ではありますが、日本の我々の生活を支えている小さな漁村群でもあるわけです。
左の写真は、この間行ってきたときの福島の写真です。黒いのは牛です。放牧状態になっている。そういう農村部がたくさんあるわけです。
ですから、都市の問題と漁村、農村の問題を同時的に考えなければいけないという極めて複雑な状態になっているわけです。
(図12)
それを整理します。まず、東北地域の行政は、壊滅的な状態になったといっていいと思います。3つの県は動いていますが、その下の基礎自治体の行政機能は、特に海岸側の町は壊滅的な状態になっている。お盆の前後に宮城と岩手の小さな自治体を幾つか回りましたが、旧のお盆でやっと1週間ぐらい休みがとれる。それ以外は全く休みがない、職員の方たちはそういう状態です。
それから、先ほどの繰り返しになりますが、東北の中央部、中通り側に集積していたIT関係あるいは電子部品等々の産業、浜通り側の産業、農村部、これらの場所で支えてきた地域基幹産業は、国際的な基幹産業でもあろうかと思います。それが被災した。
それから、地域のシステム、地域のコミュニティが崩壊しています。最初は何とかなるだろうと思って仮設住宅に入って皆さん努力したんですが、6カ月たってコミュニティが崩壊しつつあります。
それから、繰り返しになりますが、非常に広域で、国、県、基礎自治体の財政が非常に思わしくない状態の中での復興を考えなくてはいけない。
こんなことが今回の特徴だと思います。阪神・淡路のときに展開されていった復旧・復興の状態とかなり違うということを改めて考えさせられます。

 

2.しなやかに立ち向かう姿と力

(図13)
(図14)
6月29日に国の復興の構想会議が答えを出しました。それ以前には自治体で復興計画はつくっていませんが、地域の方たちが、自分たちの社会、自分たちの町、自分たちの地域、生活を何とかしなければいけないというので動き始めております。
「しなやかに」といういい方は少しやわらかいんですが、地域が持っているレジリエンス(強靱さ)、そういうものが東北であらわれてきていると思います。ですから、その地域が潜めている強靱な力をどのように生かしていくのかがこれから重要だろうと思います。
(図15)
地域の方と話をして、プランナーとも議論しました。教科書を見ないで、これからの町のあり方について、皆さんと意見交換するわけです。そうすると、これだけのことを考えなければ、あるいはこれに自分たちが何らかの形でかかわっていかなければ地域は動かないと皆さんがおっしゃる。これは都市計画、地域の計画、建築のこと、産業のことを学んでいない普通の方がおっしゃるわけです。

 

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