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(図53)


そのときに忘れてはならないことが1つある。余り表に出てこないですが、水です。エネルギーのために大きな戦争が何回もありました。今もエネルギーのことが復興のときに話題になっています。でも、これから大きな議論を呼ぶのは水です。赤が濃いところが水に困窮しているわけです。日本の中では首都圏と近畿圏です。先ほどいいましたこれから伸びる可能性が高いところはほぼわかる。こういう実態を見ながら、簡単に水ビジネスという人が多いわけですが、それ以外のことも含めながらどういうふうに振る舞うのか。特に東北、北海道は恵まれているわけです。それ以外のところも恵まれています。アジアの経済の中で、先ほどの世界中心都市の話につながりますが、それをどう利用するのかという戦略は考え始めなければいけないのではないかなと思います。
(図54)
アジア・アフリカ・ラテンアメリカは急速に人口が伸びています。日本は大都市圏に依存しながら、農村、森林を縮小してここを支えてきたわけです。支え切れずに国外から、あるいは他の地域から物を持ってくるという経済のシステムで成立しています。ところが、東北は、こういう経済の循環と自然の循環等々ができるエリアなわけです。これを前提にしながら復興して、このノウハウと水をキーワードにして、どういうふうに考えるか。エネルギーの問題やITの技術を全部凌駕するとはいいません。ただ、水のことで東北の復興についてはほとんど議論されていないですが、僕は世界戦略的には大事だろうと思います。
(図55)
日本の成長戦略あるいは新成長戦略の中、医療のこと、ITのことなどたくさんのことがありますが、世界中みんなが競争しているわけです。その中で、水について、世界競争に勝てる可能性が高いのは日本だと思います。
(図56)
もう1つ、バーチャルウォーターという話があります。水はただみたいに思っています。こういう話はあるときから消えましたが、世界水法というのをつくろうという話がありました。
(図57)
水を価格に置き直す。そうすると、吉野屋の牛丼が多分900円ぐらいになるだろう。つまり、牛を育てるために豆が要る。清潔にするために牛舎も洗わなければいけない等々やると、今のマーケットに出ている牛肉以外に水の値段が付加されまです。輸入国である日本はそういうことを阻止しつつ、直接ではなくて間接的に744億㎡の水を輸入している。これがアジアの中で起こるわけです。そうしたときに水はどういう意味を持つのかを我々は少し勉強しなければいけないのではないかと思います。
(図58)
もう1つ、地球は大きいと思っていろんなことをやってきました。いろんなことに依存しながらその大きいものを支えるシステムをつくってきました。ところが、大きいと思っていたけれど、限界があるというのがわかった。そうすると、人口が減っていくという意味のシュリンクばかりでなくて、先ほどの食料のことも含めて経済的にも地球環境にもインパクトの少ないものをどういうふうにつくるのか。それをどうするのかというのが、21世紀の水飢饉が直近に生ずるであろうところ、つまり大都市圏ですが、そこで問われるわけです。それに対しての答えはどこが提供するのか。あるいはそれを支えるシステムは誰が提供するのか。これは日本のメーカーも含め、都市をつくっていく技術、パーツをつくるいろいろなメーカー、そういうところの集大成の知恵の出しどころだと思います。
(図59)
話が現実的になりますが、今政府が考えている復興の予算規模は最大25兆円。内閣府が当初、4月の中旬ぐらいか5月くらいに、直接被害は17兆~25兆円と出したわけです。どうやって出したのかはなかかなか問題がありますが、これを前提にしながら財務省は政府予算は25兆円と言ったわけです。ところが、兵庫に震災の後にできた研究機関でひょうご21世紀研究機構というのがありますが、ここが7月に、被害金額を44兆円と出しました。44兆円と25兆円では、差があります。これには実は原発の被害は入っていないんです。先ほど1年間1兆円と言いました。仮に10年間を考えても54兆円です。政府が考えている倍です。その差額をどうするのか。これが問われてくると思います。
(図60)
財政危機の中での復興を考えるときに、国際的な投資と連携した復興をどうガバナンスするのか。これが重要なんだろうと思います。政府はこれを今やる気がない。
(図61)
7月から9月の最初に、日本にブランチを出している世界の投資企業の人たちと話をする機会がありました。日本は必ず復興するだろう。復興するに当たって、彼らの投資会社は非常に興味を持っている。投資をする気持ちはあるし、用意はある。でも、投資をするメニューが私たちに示されないということをいうわけです。そのときに僕が聞いたんですが、以前日本はREITなんかで大失敗しているわけです。そういうことを前提にした投資なのかと聞いたらば、「そこはちょっと勘違いしないでほしい。つまり、我々はこういう被災している状況を見たときに、10%、15%戻ってくる投資をすると思わないでくれ。6割でもいいんだ。4割減でも、わかりやすければそれで構わない。投資する側の人間は1万ドル投資したときに6000ドルはドネーションだと思って投資する。そういうことは我々は十分考えている。REITのときのようなぶざまな状況で日本に私たちは迷惑をかけることはしない。そういう前提でファンドのことを考えてくれ」といっています。
(図62)
先ほどメニューがないという話をしました。被災地、三陸側でどうすべきかというメニュー。今地元の人たちが動いています。小さなマイクロファンドが動き始めました。小さな商店街や小さな氷工場をつくることが動き始めました。民の力をここで見せ始めました。三陸側をモデルにした復興モデルとそれに必要な投資のモデルをどう考えるのか。それから、仙台は仙台都市圏と仙台の後背地の2つに分かれますが、それをどう考えるのか。
もう1つ、先ほど申し上げましたが、日本海側の復興を支援する発展モデルをどう考えるのか。これはアジアの連中にとってみれば非常に興味深いことだろうと思っています。今は新潟しかありませんから。

それから、東北の中通りが、今後発生する可能性の高い東海・東南海・南海の被災を支える補完機能を持てるのか。どういう機能を持つのか。生産の拠点かもしれない。



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