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被災された方が、心の中、頭の中に抱えているこのようなことを踏まえて、国、県が復興構想、復興計画を立てているか疑問に思うことがたくさんあります。

(図16)

阪神・淡路も何だかんだと復興まで10年かかりました。東北の場合、何年かかるか実はわからないんですが、一応最低10年はかかるだろう。解決しなければいけない復旧のレベル、復興のレベルが、いろいろあり、被災者個人の話から、東北全体の話、国土の話までを行ったり来たりしながら考えなければいけないわけです。これは誰が考えるのか。どういう順番で10年間、中身を詰めていったり、確実なものにしていったり、計画を事業化していくのか。このスキームが半年たってもまだ見えない。これは非常に大きな問題だろうと僕は思っています。地域の方とお話をしても、自分たちの子どものため、次の代のために何かしたいと思うんですが、大きな道筋が示されていないので何をやったらいいかわからないというのが彼らの一番困惑しているところです。
(図16)
構想会議は6月にまとめました。
(図17)
これを受けて政府は方針を出しました。それからかなり日にちが経っていますが、現場はなかなか動いていない。国によって復興の手法調査が71億円をかけて行われています。行われていますが、復興手法調査は、被災した地域の方が、これだけのことを考えなければいけないと思っていることについては全部含んでいないわけです。被災を復旧するためにどういう物理的なことができるか、あるいはどういう事業ができるかというところでとまっているわけです。
(図18)
ここで幾つかの議論が今されています。その1つは、原型復旧という考え方、もう一つは創造復興という考え方です。今国が25兆円と言っていますが、復興のお金をはじき出しています。はじき出しているというか、財務省が言ってしまったというほうが正しいと思います。これまでの国の法律の中にある復旧という概念は、国が責任を持たなければいけない公共インフラをもとの姿に戻すということでした。その復旧をやって、それに民の力を加えながら復興していく、その2段階の構成で考えているわけです。
復興の話をすると、将来こういうふうに東北があるべきだというと、夢物語を最初に語る必要はない、創造復興とは議論としてはあり得ないとおっしゃる方が結構いるんです。
ところが、先ほども話しましたように、行政機能がストップしてしまった。産業がなくなってしまった。自分たちが大事にしていた地域の仲間たち、共同体が崩壊してしまった。そうしたときに地域はどうすればいいのかという姿をみんなで考え出しながら、それに向かって歩んでいく、つまり、個人の思いを重ねて新しく地域社会の歴史をつくっていかなければいけない。そういうことをベースにしながら創造復興といういい方を僕はすべきだと思うわけです。
ただ、現実にこういうことがあります。この間、東北に行ってテレビを見ました。コマーシャルに冬のストーブの宣伝が出ている。もう彼らは冬の支度をしなければいけない。明日にも、どうにかしなければいけない。特に仮設住宅に入っている方は、次の日の食事のお金をどうするかという算段をしなければいけない、という事実もあるわけです。復旧と復興を同時にしなければいけない。復旧があって、それが終わってから復興というのでは、彼らは飯を食えなくなる、あるいは生きる目的がなくなるというのが実態だと思います。
それと、皆さんもう頭の中に入っていると思いますが、東北は人口が減るわけです。今基礎自治体や県が考えているのは、通常の町をつくっていくやり方です。将来人口がこのくらいになるから、このくらいの面積が必要ですよというこれまでの理屈を使おうとするわけです。ところが、例えば福島なんか典型的な例ですけれども、時間が経てば経つほど、科学的予測よりも福島を離れていきたいという人の割合がどんどん加速しているわけです。それは原子力の問題もあり、姿が見えないということで自分の生きる場所、生きざまを感じられる場所に移りたい。そんなふうにして社会的な人口の動きが極めて予測できない状態になっています。ただ、人口は、黙っていくと減るでしょう。しかし、あなたの町はこれだけ減りますからこういうふうにしましょうとはなかなか言えない。ですから、減るということを暗黙の了解にしながら、できることからやっていって、生活を支えていく。
もう1つ、将来自分たちの町、東北はこういうふうになるんだろうという創造的な夢を同時に待ちながら、それの第一歩目、第二歩目に何をするかだと思います。これをやらなければ東北の人たちの心は動かないと感じています。
(図19)
先ほど申し上げました社会が壊滅的になったということに関して、一番最初に動いたのは関西圏です。兵庫県が中心になって、阪神・淡路のノウハウをたくさん持っている県があります。関西広域連合会が、そこが東北に入っていって、兵庫県は宮城を支援します。この町はあそこの町を担当しますというように、対口支援といいますが、そういうことをやり始めています。URなんかも、つい1カ月ぐらい前からべったり張りついてやっています。ですから、自治体同士が職員を派遣しながら相互に助け合うというのが動き出しました。これは国と全く関係ない動きです。

 

 

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