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港側に住んでいた人間が、津波が来るから高台に移転して、そこをスマートシティにしましょうというと、いろんな抵抗があるわけです。そうではなくて、知の集積を東北につくる。これはアジアを救うためです。先ほどの水もそうですが、そういうことも含めたインテリジェンスをここで支えるということを、国家プロジェクトあるいはアジアのプロジェクトにすることも可能だと思います。
これは多分世界銀行が乗るようなプロジェクトになると思います。そのくらいのスケールでここを考えていく必要があるだろう。ローカルな話とナショナルな話を結びつけて東日本を考える必要があるだろうと思うわけです。
(図68)
振り返ってみると、四全総のときに、東北を意識しながら国土軸をつくっているわけです。それで新幹線ができた。それを受けて、北海道と東北の知事会議がありました。今はやっていません。そのときに「北東銀河プラン」という名前を付けました。つまり、北海道と東北はしょせん、えぞの世界、縄文の世界だ。こっちは弥生系。縄文と弥生というのは自然環境とかDNA自体が違うから、少し連携しながら日本を支えていくということを考えようというので「北東銀河プラン」という名称にしました。これは頓挫しているわけです。
(図69)
それに近い部分もあるのかなと思いつつ、どう考えるのかということを冷静に考える。そのときの大学を考えると、これから成長しながら環境的に大問題を引き起こしてくるであろうアジア。それに対して有用な技術、それから民主的な社会へ移行して、それを実現していくリベラルな知をアジアの中できちんと定着させていく必要があるだろう。その場として東北の可能性はないだろうか。そうすると、エネルギーの話や農村と都市との循環の話等々、非常に大きなスケールで、フィールドを前提にしながら技術の話、文化の話ができ得るのではないかということを実は考えています。
(図70)
(図71)



今、新しい中世という概念があります。先ほどと似たような話です。世界を3つに分けて考えようというものです。12世紀以前は国という概念がなかったんです。そこで、都市国家や、きちんとしたシステムを持っている王家や貴族が自由に連携をしながら世界をつくっていた状態、それが中世でした。それ以降国家ができて、それを支える資本主義があってというのが近代。今、新しい中世というのが生まれつつある。市場経済が安定して民主主義が定着している国を新しい中世といおうということです。東大の先生がおっしゃっている。そうして世界を見たときに、新しい中世に該当するところは薄いグリーン、混沌圏がミャンマーも含めながら黄色のエリア。近代圏というのがブルーのエリアでこれだけある。先ほど申し上げた新しい知が意味を持ってくるところは、これから多くの問題を抱えている近代圏だろう。その中で、新しい中世圏をどう考えるかという意識も持ちながら展開していくということはどうだろうか。
(図72)
新たな展開をするときに、金がないという話になりました。それをどういうふうに実現するか。マイクロファイナンスという概念があります。これは個人のレベル、企業のレベル、海外の投資家のところまで含めながらいろいろレベルがあると思います。個人資産として今日本人は1400兆円持っているわけです。それの仮に2%を運用しても28兆円になる。28兆円ということは、先ほどの国家予算の25兆円と44兆円プラス10兆で54兆円との間を差額を埋めることができる可能性が十分ある。
(図73)
復興の資金は、先ほど申し上げた日本海側のエリアも含めるともう少し大きなお金になると思います。国の懐にお金がないわけですから、それを民間資本で補うということは十分可能性がある。先ほど投資家の話を申し上げましたが、これをどういうふうに展開させていくのかというメニューがない。大義を持ったメニューがない。これをつくるべきだろう。マイクロファイナンスそのものの効果は大きいと思います。
大事なのは、個人で社会貢献、復興への参加を何らかの形でしたいと今でも思っていらっしゃる方がたくさんいますが、自分のお金が何に使われたのか、何に使うかということをはっきり意思表示することです。これは国際的にも通用する。
(図74)
マイクロファイナンスを前提にして考えると、復興を支えていくまちづくり会社や、あるいは日本海側の発展のためのまちづくり会社、あるいはスマートキャンパスをつくっていく会社かもしれませんが、そこに投資する。レベルが幾つかあって、現在の段階で民間が動いて構わないと思っているお金は、日本の投資家の専門家の人たちと話をしてみると、1つ大体200億円ぐらいまでいくんじゃないか。民間の判断で投資できるお金です。それを、漁業の再編や商店街、中小企業が立ち直るためのお金として考えると1つ1つかなりいける。
少しオーソライズされた復興まちづくり会社みたいなものができ上がったときには、1自治体20億円から、内容がよければ1000億円ぐらいの投資は集められるよと、投資家をマネジメントした人たちはいいます。
これをもう少し復興債と絡めながら、悪しきポイントを除いたREITの変形を展開していくと、1兆円ぐらいのお金はいけるだろう。そうすると、スマートキャンパスシティや首都機能移転に対するインフラ投資も十分できる。3番目は多分国際マーケットになるだろうという話をしました。
こういうダイナミックなお金は、東北の復興ではなくて、日本がこれから直面するであろう西日本の問題を解決するという意味での全体的な視点からも必要だし、きちんと考えていかないといけないかと思います。
(図75)
(図76)
これは専門的な話になります。
(図77)
アジアと乾燥地帯の分布図です。ここに対して今物すごい人と物すごい投資が集まりつつある。そこの中で東北はどう振る舞うか。それを支えるキーワードは「水」。水の惑星であることを体現できる東北の可能性は非常に高い。
そうすれば、復旧も考えつつ、日本を支えていく東日本の復興のシナリオもあり得るのではないかと思います。
真ん中の子どもにあるとき出会ったんですが、こういう祈りながら生きている小さい子どもがたくさんいます。彼らはその地域を出ないで、東北で頑張っていくでしょう。彼らが育って、社会に何らかの貢献をして、それがアジアの中に貢献していくようなシナリオ、アジアの人たちと連携しながら意味ある東日本にしていくというのは我々の責任なのかなと思いつつ、お話をさせていただきました。
ここで終わらせていただこうと思います。(拍手)

 

 

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