→日建グループへ





 PDF版はこちらです→ pdf

も、考えて、よければそれを認めますよというところにとどまっているわけです。たくさんのトラがいるアジアの中で、ウサギ状態が日本の動きのような気が僕はするわけです。
 今、東日本が被災したわけです。これに対して、アジアの動きを念頭に置きながらどういうふうに日本は国として判断するのかということが僕は問われるべきだろうと思います。

 

4.東日本の可能性/新しい日本のあり方

(図46)
東日本を考えるときに、私は、「グロー・ナ・カル」といういい方をあえてします。「グローカル」といういい方をよくしますね。グローバルとローカル。「グロー・ナ・カル」の「ナ」というのはナショナルです。冒頭申し上げましたように、東海・東南海・南海というのは日本が次に考えなければいけない大きな問題が起こるところです。そうしたときに、そこを国としてどういうふうに支援するのかというのはナショナルな問題なわけです。支援するのかというのは、復興の支援をするということもそうですけれども、経済的に物すごいダメージを受けるわけです。それを補完するための機能をどこに持つのか。代替できるようなことを前提にしながら、どういうふうにこれから配分するのか。そのインフラをどういうふうにつくるのかということが非常に大事なわけです。
四全総までやってきたことと同じことをやっていくべきだとは思いませんが、今、国土をどういうふうに考えて、東海・東南海・南海の被災をどういうふうに支援するのかということと同時に、そういうことが起きたときに、国がアジアの中でちゃんと振る舞っていけるための、国民を支える経済ができるようなシナリオをどう描くのかが大事だと思います。これは国の責任です。あるいは我々がそういうことを求めなければいけないというのもあろうかと思います。
(図47)
世界のGDPの規模と日本の中の幾つかの圏域の比較を少し頭に入れておいていただければと思います。
例えば国として成立しているカナダ、これが次の中心リージョンになる可能性が高いと先ほど申し上げましたが、GDPは関東とほとんど同じぐらい。ですから、関東が世界の中心に打って出るということをいおうとする意味はよくわかります。
もう1つ、韓国、これも今お話ししたように、結構動くわけです。近畿が頑張れば韓国に太刀打ちできる。そういう意味で近畿が何らかのことをやりたいということもわかる。
もう1つ、私は、今日資料を十分持ってこなかったんですが、スイスと東北はほぼ同じなわけです。スウェーデンもそうです。スイスでは、自分たちの国の特徴をサステナブル・スイスといういい方をする人たちがたくさんいます。つまり、家から始まって公共施設、国、経済、全部含めてサステナビリティーということを技術的な裏づけもしながらスイス・バージョンでつくり上げる。その。それをヨーロッパに売る、世界に売るということで、スイスは今の力を維持している。サステナビリティーというのは、農業のサステナビリティーもありますし、食品としてのサステナビリティーもある。そういうのを含めて、スイスがそれで成功しているわけです。 
(図48)
ほぼ同じ力、GDPを持っている東北の可能性はどう考えればいいのか。今、東北のことを考えるときに、足元を見ながら被災した地域、被災した人たちのことを考えるというのは当然大事なことです。今同時に考えなければならないのは、アジアのダイナミズムとつき合いながら、どういうふうに連携したり競争するかということだろうと思うんです。
ドイツ人は、日本人にこういういい方をします。ドイツは同じ戦争で負けた国です。日本と同じように、経済的にも頑張って伸びてきているわけです。だけど、ドイツ人が我々に「ドイツは世界にたくさん友達がいる。EUの中にも友達がいる。だけど、日本はアジアの中に友達がいるのか」と、かなり辛辣ないい方をするわけです。
どういうふうにアジアと競争したり連携したり競合したりするかということを考えなくてはいけない。そのときに、今たくさん空港が日本の中にあります。その空港を生かしながら、国土軸といういい方が正しいかどうかわかりませんけれども、利用し活用しながら、地域の目標を立てて、カウンターパートをどこにするかということを旗幟鮮明にする必要があるだろうと思います。
(図49)
先ほど東アジアの話をしましたが、ヨーロッパから見て、アジアというのは東アジアだけではなくて、オーストラリアも含めて全部をアジアと考えているわけです。この中でどう振る舞うかということはヨーロッパはある意味期待するわけです。
今その中に中南米が入ってきて、アメリカが乗り込んできて、TPPみたいなことをやろうとしている。それに対して日本はどうするのかということも同時に考えなければいけない。これは我々だけでは議論できないところです。
(図50)
人口だけ考えても2050年には世界の人口のうちの3分の1は中国人とインド人になります。それを冷静にどういうふうに考えるかということを我々は考えなければいけないんのではないかと思います。
(図51)
今は、青森、茨城、千葉を除いて、被災した3県のことを集中的に考え議論しているわけです。復興予算の25兆円というのはここのことなんです。ところが、アジアのダイナミズムを考えていこうとするときに、鉄道あるいは道路が破壊されたときに実際に裏から物資の供給がたくさんあったわけです。後門のトラといいますか、トラがたくさんいる状態の中で、こちらの日本海側のことを同時に考えながら東北の復興を考えないのかというのは、僕は問われるべきだろうと思います。また我々はそういうことを発言しなければいけないと思います。
(図52)



先ほどの表を図にしました。北から行くと、北海道はデンマークと大体同じぐらいのGDPの規模です。東北がほぼスイスと同じぐらい。関東がカナダとかイギリス、フランスと同じぐらいです。そうしたときに、この力を国が支えつつ、あるいは利用しつつ、この力をもとにして民間の投資を呼び込みながら戦略的なプランを考えるということが必要だろうと思います。

 

     7   10 11
copyright 2011 NIKKEN SEKKEI LTD All Rights Reserved