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その後、議論としては成功しませんでしたが、六カ所村、苫東、石油タンクのある鹿児島の喜入、宿毛に大規模な工場かストレージをつくれという議論をやりました。これはカッコよかった。このリーダーシップをとったのは、総合開発局の官僚なんです。先頭に立っていたのが、今90歳になっている下河辺淳という男です。この人は建築を出ている。建築を出ている人は誰にも相手にされないから気楽なことを言っているわけです。土木だと、おまえは河川局か、道路局かということでラベリングされるので気をつけなければいけないのですが、建築系というのは気楽です。だから気楽に扱われるんです。
ここまでは国土計画として一応存在意義を主張できた。僕は国家計画としての国土計画が一番主張できたのは、新全総ではないかと思うんです。
(図2)
新全総は昭和44年、佐藤内閣の時です。情報化、国際化、技術革新の進展と、大規模プロジェクト構想を検討しました。昭和41年から60年の約20年間で、約130兆円から170兆円の「累積政府固定資本形成」をします。130兆円と170兆円の間をとって150兆円にして、150兆円を20年間というと年間7兆円ぐらいです。当時の政府の予算は幾らぐらいかというと多分20兆円か30兆円。30兆円で7兆円というと2割。建設省と通産省の一部と農林省とで国家予算の2割を使うということです。ここまではよかった。
次に、三全総。三全総の投資規模は、昭和51年から65年の15年間で累積政府固定資本形成370兆円です。15年間で370兆円というと1年で22~23兆円。この時の政府の総予算は、どう見ても50兆円ぐらいです。ここまでは、三全総も一応国家計画を政府として認めるというスタイルをつくっています。ところが、四全総では、昭和61年から平成12年の15年間で約1000兆円程度、これは公・民による累積国土基盤投資です。公・民だから、民間が半分としても500兆円。500兆円を15年間だったら年間30兆円です。民間6割、公4割の400兆円だったとしても、それを15年間でしたら年間30兆円です。当時の予算は幾らかというと、せいぜい50~60兆円。この勘定を行ったのが企画庁の官僚なんです。この時国土庁はできていました。この昭和62年は物すごく景気がよかった時です。

2.平成24年度国家予算

(図3)
昭和62年の政府予算は60兆円です。景気が良かったので、この辺はどんどん順調に進み、公債費も建設国債だけで赤字国債はなかった。しかし、景気はよかったけれど、それに乗っかって、毎年15兆円から20兆円の政府の固定資産形成というのはないだろう。ここで、国土計画とは何だという話が、役所の世界の中で出てきた。大蔵省にとってはたまったものではないんです。こんな数字を出されて、15年間国土計画が大蔵省の予算措置の足を引っ張るなんてとんでもないと猛烈な巻き返しがありました。
ついでの話ですが、国土計画は、三全総の時に仮に年間10兆円とします。10兆円の政府固定資本形成をするといった時に、当時役人の世界では暗黙の了解があったんです。どういうことかというと、国土計画というのは、先ほどから言っているように、地方の代議士と地方の役人に対して一定のサービスをする作業なんです。ある程度口三味線でも、例えば山形に対しては、四全総か三全総に、この10年間で鶴岡から本庄までの日本海沿岸に日沿道路という高速道路はつける、と書いておきますから、というサービスをするんです。道路や港湾、漁港もそうです。そういうサービスを国土計画の報告書に書くことを箇所づけといいます。それを全部拾い上げて、役人がくそまじめにコスト計算すると、15兆円という数字になります。だけど、国土計画で積み上げた累積資本形成の総額に大蔵省は0.5掛けします。2分の1。それで勝負します。これは役人の中に暗黙の了解があるからです。四全総で30兆円と出たら、それを2分の1にして15兆円です。それでも多いので、これはヤバイということで、歯どめがかかるんです。
これは平成24年度の国家予算です。これが一般会計歳出です。どういうことか、ずうっと上がり続けて、平成10年ぐらいから一般会計の歳出はグッと上がります。これは一般会計の歳入、税収です。平成2~4年は、60兆円入っています。土地バブルがはげたのは平成元年ぐらいからです。ここまでは土地バブルに乗っかった、日本の浮ついた見せガネがどんどん一般会計税収に入って60兆円にいきました。土地バブルがはがれてから下がっていきます。この差が全部国債、政府の借金です。借金をしてずっと埋め合わせていきます。
一般会計の税収は平成2年から下がり続けです。一瞬上がりますが、また下がり続けます。24年が野田政権、その前の23年は菅、22年が鳩山、21年は麻生、20年が福田、19年が安倍、18年から5年が小泉です。小泉の時に税収が少しずつ上がってきて、18年までに債券発行が下がってきていますが、民主党になった途端にピンと上がっている。一般会計税収は上がりません。今、小沢一郎は何を言っているかというと、「経済成長なくして増税なし」。経済成長をどこまで持っていくかということです。平成24年度の目論見はネットで42~43兆円です。皆さんの直接の税収です。40兆円を60兆円まで持っていくのか、それとも50兆円まで持っていくのか。10兆円上げるんですか、20兆円上げるんですか、そこまで本来、小沢一派は言うべきなんです。これだけ努力していても税収が下がっている。小泉の時に少し上がりましたが、上げてもせいぜい6兆円です。42兆円から6兆円上がって48兆円。このままでいけば、歳出はずっと大きくなっていく一方ですから、税収との差はどんどん広がる一方です。こういう税金の基本的なトレンドの実態について、我々は政府に対して何を要求するのか、消費税アップはどういうことかを考えるべきです。
(図4)
これが24年度の会計です。借金も入れて一般会計は約90兆円です。そのうちの約50兆円は国債、つまり借金です。40兆円が皆さんの税金です。その中で公共事業は一体幾らあるか。4.6兆円しかありません。総歳出の5%ぐらいしかない。それに対して社会保障は29%です。政府の国債費は24%と大きいんですが、これはもう仕方がない。これは国民に返すしかない。国債費を抜いたネットの予算の中では、社会保障費は40%ぐらいいっている。バカにならないのは地方交付税交付金の約18%。青森県や宮崎県に行くおカネです。
公共事業費というのは防衛費と同じ。文科省の科学振興予算より少ない。こういう時代になりました。
(図5)
全総、新全総、三全総は、投資規模をきちっと書いていますから、この国土計画は政府関連の公共事業費です。道路公団や国債によって国土基盤投資をするのも入れている。これをベースにして、国土の将来をどう議論するかという時代はなくなってしまった。


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