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当面の大都市に関係する国土計画的課題では、「土地利用関連特区の拡大」は物すごく大事です。特区はいろいろありますが、あんなにたくさん必要ない。整理すれば、総合特区と都市再生特区と、もう1つ地方特区の3つで済んでしまいます。いろいろな特区をつくっている。役人の持っている一番の欠点は、総合化、省略化できない。これは政治家のセンスでしかできないんです。
国土計画でもう1つ大問題があります。国土計画が地域計画を引っ張って歩いているということです。昔の国土計画局でつくっていた九州のシラス地域の土壌崩壊に対して補助金をやる法律があります。僕も昔、ざんきの思いでつき合ったんですが、半島振興法、離島振興法、山村振興法、過疎対策法、九州のシラス土壌特土法がある。30~40年前その担当課があった。こんなのはバカですよ。役人の宿命としてまとめられない。まとめるのは政治家がやらなければいけない。政治家はそういう見識を持っていない。1つの地域振興法という形になれば、力もつくし、世の中に対するアピール力もあり、グッと生きてくる。それをほっぽり出したままにしている。
もし、ここで国土計画の第三者機関が総理に勧告権を持つならば、今度の国土計画が今の地域の本当にわずかな助成金と、税の減免措置をもって、それぞれ生きている法律を全部スクラップ化して、新しいものにしろという勧告を総理にするだけでも、役所の世界で元気になる役人が随分出てくると思うんです。これも意外な話です。
それから、僕の経験では、国家の官僚は特区に対して理解を示します。しかし、都道府県の官僚は特区に対して理解を示さないんです。きちっと国が定めた指示書に基づいてしか反応しません。国家の官僚は指示書を自分でつくっていますから、つくっているときの経験の中で、これはまずいかな、これはやり過ぎかなとわかりながら、それを切ってある形にしています。そういう経験を持った原案作成者としての判断というのは、「これはできません、できる」と言い切ってしまうのではなくて、「こういうふうに考える裁量の余地がありますね」というような会話が可能なんです。県庁はできません。市町村はもっと割れます。市町村では県庁の使い者になったように、いろいろな国から出てくる、こう考えたらどうですかというものをそのまま受けとめて、頑固にここにはこういう数字でしか解釈できないんだからと、受け付けない。県庁の役人よりももっと石頭の役人もいますし、逆に、「県庁の役人くそ食らえ、あんなやつの言うことを聞くか」と反抗して、新しい解釈をしていく役人もいます。市町村は両方に分かれています。県庁は国の連中より、くそまじめな解釈しかしません。
そういうことで、特区の扱いがうまくいってないんです。ずばり言うと、東京23区でも、港区は、あれだけ大規模なプロジェクトをやって、ミッドタウンもやったが、あそこは都市再生特区をやってないんです。再開発促進区とか、そういうことをやっています。それに比べて神戸市は、昔から有名ですが、都市再生特区で神戸新聞社の容積をケロッと倍にしちゃいました。
言いたいことは、土地利用関連特区については、役人だけでなくて、できたら地方の大学のセンスある先生も入れた少数の3~4人の委員会をつくって、そこがより裁量的で単純な結果をつくる。数が多くなると議論が堂々めぐりですから。3~4人で、そのかわり任期は5年で区切って再任は認めない。アメリカ型です。そうやるだけで、特区で再開発のプロジェクトが生きてくるところが、東京、大阪、名古屋、福岡には、まだまだあるはずです。これは税金を入れなくたって、民間の投資行為が活発になりますから、結構いけるのではないかということです。
(図2)
もう1つ重要なことを皆さんにお話ししたいと思います。今日のお話の1~5の1は、日本投資政策銀行の「地域ハンドブック」という年次報告書から入れています。2番目は、今から4年前にできた「国土形成計画」。もう1つは、川上審議官がやられた「『国土の長期展望』中間とりまとめ」、これがおもしろいんです。4は、これも川上審議官のところでやった防災、3.11の地震の後のとりまとめ。僕の書いたものも少し入れています。「災害に強い国土づくりへの提言」。それと、僕のメモの6つを入れてあります。


4.「国土の長期展望」中間とりまとめ

(図6)
「『国土の長期展望』中間とりまとめ」、これがおもしろい。何を言っているかというと、大問題なんです。一等初めのは、2100年までの人口です。日本人のピークは2004年で1億2800万人。高齢化率20%。2030年、あと18年先、高齢化率が30%になる。2050年は40%になる。10、10、10と上がっていく。人口は3000万人減る。これはよくある話で、皆さん十分ご存じです。1億2800万人から9500万人になる。
(図7)
もっと大変なことは、生産年齢人口(15~16歳)。今は8400万人ですが、2050年には3500万人減って5000万人を切ってしまう。約四十何%減る。40年先です。2030年はどうかというと、1500万人ぐらいは軽く減るんです。8400万人から7000万人です。そんなことで日本の国力を維持できますか。先ほどの税金を上げるなんてことは、この読みからいったら簡単にできるものではない。今42~43兆円の税収で、借金が毎年50兆円ぐらい、トータルで90兆円の政府支出をやっている。このままでいったら、税金だって上がらないし、借金は増えて、完璧に国際信用がなくなってしまうということが目の前まで来ているわけです。これをどうするかということです。
(図21)
気温の上昇については、おもしろい、これはよくぞ川上審議官、書いたものだと思う。中間報告は暗い話ばかりですが、ちょっと救いがある。日本は温暖化になります。温暖化になると、二毛作がこれだけ増えるというんです。米どころの静岡、愛知、三河、濃尾平野、三重県、関東地方も、湘南の辺から千葉県の東京湾のところは二毛作ができるんです。四国の瀬戸内海あたりも多い。九州がすごい。現在二毛作ができる面積は全部の水田の1.5%しかありませんが、将来は20%以上になる。これはすごいです。こういう仕事は年寄りに向いています。今は水田なんて、こんな楽なことないですよ。機械によってガチャガチャやって、昔のようなことはないです。年寄りには非常に大きい夢です。
(図22) 
これもおもしろい。人口が減るから、外国から米や麦を輸入しなくても自前でできるいようになる。皆さん年をとって小食になって、人口が減って年寄りが多くなるんだから、摂取量少なくなるというんです。先程の二毛作が多くなる。そうすると、日本の食料事情がこれから20年後ガラッと変わる。すごい展望を国土政策局、川上審議官は つ
くってくれて、元気になる。


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