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僕が一生懸命やったのは新全総です。全部つき合いました。三全総も四全総も21世紀の国土のグランドデザインです。それぞれにおもしろい話があります。全国総合開発計画の最後になった21世紀の国土のグランドデザインでは、四全総は信用できないので投資総額を示さないということになりました。投資総額を示さないのは、国土形成計画と同じです。この時は川上さんがまだバリバリの課長時代の作業ですが、投資規模は示さないけれども、土木屋や建築屋や電気屋の工学部系の技術官僚が頭に描く、あそこに先進型の工場団地をつくりたいとか、あの地域とあの地域は最後は高速道路で結びたいというような議論をここではしました。本論の後ろに各論というのがあって、建設省の役人が読む場所、農林省の役人が読む場所、通産省の役人が読む場所、文部省の役人が読む場所があります。そこに控え目に、ここのところはこういうことをしたいという願望が書かれていて、国土計画や経済計画や地域計画をつくる役人が読むと、これはそういう願望か・・・というのがわかる。そういう文章がここには残りました。そういう点では、これは全国総合開発計画の最後と言えます。
繰り返しますが、先ほど言ったように、皆さんが年をとってしまったので、社会福祉のカネが増えるのは当たり前です。そうなってくると、このスタイルの国土計画、投資規模や開発方式、開発方式も拠点開発、大規模プロジェクト、定住構想など、いろいろありますが、どちらかというと、農学部、工学部を中心にした空間イメージで持ってきた総合開発計画というのは違うのではないか。これは書いても意味がないとなる。
だから、国土形成計画というのをつくらざるを得ないということになった。ここにいらっしゃる方は誰も国土形成計画をお読みになっているとは思いません。私は、商売柄ずっと読んできています。これは21世紀の国土のグランドデザインより、もっと抽象化して、おとなしく書いてあります。


3.国土計画のこれから

(図36)
僕は、国土計画は必要かと聞かれたら、必要だと答えます。それは僕の人生で40年以上国土計画関連につき
合ってきましたからです。しかし、国土計画を考える時に、これからの位置づけは今までと違ってくるはずです。
「長期的視点に立った国土空間の最有効経営」。最有効経営ができる空間を実現するためには、3つしか方法はないんです。1番目は、政府固定資産形成を公共セクターから資金を入れてつくるということです。道路、羽田の滑走路、これは効きました。港がそうでしょう。皆さん言うとおり、トンカチ官庁が「カネくれカネくれ」と今でも言っています。これははっきりわかる。ただし、これは機能しなくなった。先ほど言ったとおり、5兆円もない。東日本の災害の会計は特別予算ですから、それは別にします。
「現在の国土空間改善に向けた国民の自発的参加」。これは国土形成計画に書いてあるように、「カネがないんですよ。皆さん国のことを心配しているでしょう。ただ働きでも皆さん総力を挙げて、道普請の直しとか草取りとか
やってください。「お年寄りもお仕事もなくなったら、それをやってくださいよ」ということなんです。それが今度の国土形成計画にしっかり書いてある。「新しい公共」。新しい公共とは、何のことはない、みんなで花を植えたり、道普請をやったり、お巡りさんのかわりをやってください、そういうことなんです。
これはちょっと女々しいと僕は思う。もう少し太いやつがいい。問題は「硬直的な土地利用関連の諸制度の改善」です。どんなものがあるか。当面の国土的課題ですが、日本は都市・農村計画ができてないんです。農振法の農用地計画と全然別です。前から一緒にしようと言っていた。その時の理由は、低炭素化で都市市街地をコンパクトにしなければいけない。コンパクトにするということは、農用地が余るんです。それから耕作放棄地がある。土地があるんだから、農業をもっとしっかりやれよ、ということなんです。都市・農村計画をつくれということです。
(図37)
東京湾ポートオーソリティ。羽田空港の6滑走路化、これは僕の持論なんですが、カネがかかります。東京湾の港は、正確に言うと横須賀、横浜、川崎、東京、千葉の
5つ。その5つの港のうち一番威張っているのは、国の第三港建がやっていて国の直接事業費が入っている横浜です。明治発祥以来、天下の横浜港なんです。東京港というのは、関東大震災の瓦礫を埋め立てたぐらいで、まま子扱いで、国はあまり面倒を見てないというのは有名な話です。川崎なんて、新参者で、ほとんど相手にしてない。
川崎の有名な話で、20年ぐらい前にコンテナに来てもらいたいと公共岸壁をつくった。1隻も来ない。何故か。横浜港に全部とられてしまった。ここで言っているは、横浜と川崎を別々の考えるのでなく、一体運用する。川崎には眠っている公共岸壁があります。あそこは水深も深い。何故なら、あそこは鉱業専用港があって、大きな鉱石船や石炭の船が、昔の日本鋼管の前にも来るし、後ろ側の京浜運河も通る。これは僕の持論なんですが、それなら、県境を越えて、神奈川県の川崎と東京都の東京港が一緒になって、今の7バースある大井埠頭からコンテナ埠頭を全部取っ払って川崎に持っていく。川崎はそれを十分処理できるだけのフロンテージがあるんです。
東京港でのコンテナ機能をやめた途端に、東京港は何になるかというと、非常にすぐれた内国型の生鮮野菜などの消費者物流の港、それから観光港になります。そうなると、世界の港の中で、一番勉強しなければいけない港はシドニーです。シドニーの港と同じくらい観光港としての資源価値が上がります。今の大井埠頭の7バースを
とったところは、首都圏を支える日本の最先端の物流基地になります。そして、川崎は、東京、横浜と肩を並べるようなコンテナ港になる。こういう話はカネに関係ない。オペレーションを一体化するという役所の側の制度の改変があれば、できないことはない。
我々の景気をもっと刺激するのは、「土地の絶対的所有の修正(公的介入と土地価格調停委員会)」と「地籍調査の強化(地主の数は3500万に及ぶ)」です。地籍調査については僕が前からここで何回も言っています。日本の地主さんは、筆数でいきますと、3600万筆ぐらいになっています。毎年100万ずつ像えています。これは国交省の土地局では筆数といってなくて、土地の所有者数といっています。土地の所有者数は3500万ぐらいだといっています。こんな国は世界中にないんです。所有者が山を持っていたり、港を持っていたり、田んぼを持っていたり、世田谷に一軒家を持っていたりする。3500万筆の中にはマンション所有者は入っていません。土地を直接持っている。こういう人たちにも土地の絶対的所有権を主張させているのは、およそバカみたいな話です。持っている連中も、自分の土地が一体どういうふうに なっているかわからない人がたくさんいるんです。これは日本だけがそうです。

 

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