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今日は日建設計1階ギャラリーをフォーラム会場にするということもありまして、三沢さんは彫刻家ですので、クマと、エントランスの風よけの上にネコ、この下にもネコ、上にウサギさんが一緒に参加させていただいております。このクマ2人は一昨日の夜からここに泊まっています。本日皆様とお会いするのを楽しみに待っていた感じです。

いつも2人ぼっちでいるのに、今日は皆様が一緒にいますので、少し元気が出てきたように見えるかと思います。 それでは、簡単に2人のご紹介をさせていただきたいと思います。
俳優の寺田農さんです。皆様、テレビや映画でおなじみかと思います。1961年に文学座付属研究所に入団されました。1968年、映画「肉弾」で主演を務められ、「第23回毎日映画コンクール」で主演男優賞を受賞されました。その後、映画、テレビ、舞台、ナレーター、声優、コマーシャルフィルム、ラジオ、講演会など、本当に幅の広い活躍をされていらっしゃいます。2007年、板橋区立美術館運営協議会長にも就任されております。その後、2008年に東海大学文芸創作学科の教授にも就任。お父様は洋画家の寺田政明さんということもありまして、芸術に触れた環境で教育を受けられた幅の広い視野をお持ちの俳優さんです。
彫刻家の三沢厚彦さんです。名前でおわかりかと思いますが、私のパートナーです。1987年、東京芸術大学美術学部彫刻科を卒業しまして、同大学大学院修士課程を修了しております。2000年からANIMALSシリーズを発表し、2001年に第20回平櫛田中賞を受賞いたしました。それ以降、15回タカシマヤ美術賞、34回長野市野外彫刻賞を受賞しております。2007年から2008年にかけて、平塚市美術館を皮切りに全国5館を巡回した「三沢厚彦ANIMALS+展」、その後、いろいろな美術館の展覧会で発表しています。
寺田さんと三沢が初めてお会いしたのはそんなに古い時期ではなくて、巡回展の一番初めの平塚の美術館の学芸員さんが寺田さんと古くからのおつき合いがありまして、その方のご紹介で、この美術館で対談をしたのが出会いです。偶然ですが、この平塚市美術館の設計は日建設計です。ここで今日対談いただくのも、何かご縁があるのかなと思っております。
 それでは、役者と彫刻家という異なる職業のお2人に、表現者という共通の視点から、それぞれの立ち位置での空間の見方や考え方などについて、お2人のお仕事のスライドなどを絡めて、見て、聞いて、エッセンスを吸収して、今日は帰っていただればと思います。それでは、寺田さん、三沢さん、よろしくお願いいたします。

寺田 皆さん、こんばんは。寺田農です。
三沢 こんばんは。三沢厚彦です。
寺田 よろしくお願いします。今日は、「役者と彫刻家 そのデッサンと空間」という非常に難しい話になりましたが、こういう話をするのは何年ぶりになりますかね。
三沢 一番最後に対談したのが福山美術館ですね。
寺田 2008年。
三沢 その後の、そごう美術館は2009年ですね。
寺田 それ以来ですね。今日のフォーラムを通常のフォーラムと思っていただくと、かなり戸惑われると思います。何しろ私と三沢さんですから、話は行ったり来たりするし、あちこち飛ぶし、とても学術的なところはありません。メモなんかとっているととんでもないことになりますので、皆さん気楽にお聞きいただければと思います。
今、三沢さんの奥様のほうからありましたような出会いがありまして、その出会いのことを、そごう美術館のときの図録に、私が「三沢さんのこと」という文章を書いております。平塚美術館の学芸主管の土方明司さんという僕たちの共通の友達がいて、その人と一緒に鎌倉で深夜飲んでいましたら、急に「そうだ。あいつを農さんに紹介しよう」と言って、電話で呼び出されたのが三沢さんでした。
三沢 鎌倉から、「来い」「今から?」「会わせたい人がいるから」「それじゃ、行くわ」と。
寺田 来てくれたそのときのことをちょっと読みます。
「あごと鼻の下にひげをたくわえ、チェ・ゲバラのような帽子を、それもかなり深目にかぶって深夜の酒場に登場した。クリッとした柔和な眼とふっくらとした丸顔で、どちらかというと童顔であり、ひげがなければ若者のように見えるだろう。この眼と童顔のような顔に隠された本当の三沢さんの強い意思と鋭い感性を感じるのは、もっと後の話のことになる」と書いてあります。まさしく深夜にあらわれたときはそんな感じがしました。あなたがお酒を飲めないというのは、そういうときにすごくいいね。
三沢 そうですね。いつも言われるんです。
寺田 夜中に呼び出されてもすぐ車で駆けつけられる。昔から飲まないの? 飲めないの?
三沢 飲めないんです。
寺田 家系的にはどうですか。
三沢 両親はちょっとは飲むし、兄も飲むんです。僕はだめなんです。
寺田 京都で生まれて、おいしい料理はあるし、日本酒なんか最高においしいのがあるのに残念ですね。
三沢 作品をつくっているとストレスもたまりますので、酒を飲める人は飲んでストレスを発散する。前後不覚になるのはうらやましいなと思いますよ。
寺田 そういうときはどうするの? いきなり核心に触れるような話でけれども。
三沢 別に何をするというわけではないんですが、もんもんとしながら作品をつくるということです。
寺田 もんもんとしながらまんじゅうを食うと。
三沢 あんまり甘いものはだめ。
寺田 甘いものもだめ。
三沢 でも、食べものは好きで、結構食べますね。酒を飲んでストレスを発散するという感じが今までないので、ストレスがたまっても、その状態はその状態というか、それは仕方ないと思っています。
寺田 ここで三沢さんの作品を初めてごらんになる方もいらっしゃるだろうし、三沢さんのファンの方もいらっしゃるだろうと思いますが、実際にこれだけ大きな彫刻をどうやってつくっているのか、制作現場からまずは見たいですね。

 

 

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