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1.東京都心の低炭素化

2.床面積増加に伴うCO2排出量の推計

3.低炭素化目標の設定

4.低炭素化の進展イメージ

5.多様な面的対応による低炭素化

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例えば新丸ビルと丸ビルという建物があります。新丸ビルや丸ビルの床面積当たり、1平米どれぐらいの炭酸ガスを出すか。これが2005年に比べて、2030年のCO2排出原単位は、大体似ておりますけれども、少し減っています。例えば、真っ赤っかの平米当たり90キロとか100キロのところが、一部、80キロから90キロと下がっています。これは2つ理由があります。1つは、先ほど言ったように、マンションだと1平米30キロ、事務所は90キロですから、マンションの比率が高くなると、床面積が増えていても、全体のCO2排出量は下がってきます。それが1つ。それから、供給側のCO2排出が2005年は38キロでしたが、東京電力の原子力発電所がどんどん増えてきますと、2030年はそれが30キロになる。東京電力側の1キロワットに必要な燃やすエネルギーが、原子力比率が増えた分だけCO2が減るわけです。同じ床面積でも、38キロだとだいぶは真っ赤っかになるんですけれども、38キロが30キロぐらいに減る。供給側の原単位が下がってくる、マンションが増えるということで、こういうところが少し排出量が減ってきます。
 BAUというのはBusiness As Usualです。純粋にオフィス建築やマンションがどんどん増えて、床面積が増えていく時にどうなるだろうか。ただし、現状で確かなことは、東京電力の供給側のCO2排出量が1キロワットあたり0.38キロから0.304キロぐらいになる。そういうことがここにかかわっていると思います。
(図13)
 これまではどうということない話ですが、ここからが重要です。東京都のやっている民生部門の住宅やオフィスの建物に対する規制は、大規模な限られたものに対して物すごく厳しい。大規模な建物が新築されたり、改築される時には、これぐらいCO2の排出を減らすようにしなければいけないというように、どんどん厳しくしているんです。しかし、都心3区だって、例えば千代田区の東神田に行けば、間口3間の奥行き7間の5階建て、総床で100坪、300平米の、鉛筆ビルが建っています。総延べ床が300平米や500平米の建物がたくさんあるんです。神保町もそうです。そういうところに対しては、率直にいって、新築でも規制が緩くて、要するにほっぽり出しになっているんです。
 低炭素化で、鳩山さんが言った1990年対比2020年で25%総量削減、そんなこと本当にできるのかなということが、ここでの問題意識なんです。一方で、中小規模の建物では、CO2規制というのは進んでいない、そういうことですね。
環境確保条例とか都市開発諸制度を活用したり、都市再生特区で、例えば5000平米以上とか1万平米以上の規模の大きいところは厳しくすることをやっています。
(図14)
都の環境確保条例を見てみます。2千平米以上については厳しくしています。さらに、例えば5千平米以上になると、毎年毎年自分のビルでどれぐらいCO2削減をしたかという実績をちゃんと報告するだけではなくて、来年はこういうふうによくするということも東京都に報告しなければいけません。ところが、2千平米と5千平米の間は、これぐらい省エネに努力していますという届け出だけでいい、ということです。届け出を定めない場合と定めた場合で随分違うかもしれません。届け出になると、一応それなりに、小さい雑居ビルやペンシルビルの大家さんも、窓ガラスを替えるとか、それぐらいやろうかなと考えるんです。だから、少し効果があるかもしれませんが、性能をよくするという努力をしなければいけないというふうにはなってないんです。
厳しくお役所が管理するのは、5千平米から上なんです。5千平米以上にはクリアすべき条件がきちっと書いてあります。
今度は、大街区です。PALとありますが、建物の外壁の性能の話です。外壁の性能を上げろということです。建物系ですね。ERRというのは設備系です。設備系の炭素をどれぐらい減らせるか。PALは建物外壁で、いい加減な二重窓にすればいいのではなくて、熱損失は15%以上に減らさなければいけない。そういう数値で厳しく定めるということも大規模なものはやっています。
問題は、2千平米以下の建物は一体どうするのか。これは東京都心ですから、5万平米や1万平米があります。東京でも、池袋や渋谷、新宿の歌舞伎町のようなところはほとんどが2000平米以下です。そういうところの市街地に対して、低炭素化を役所は一体どうするんだということについては答えが今ないんです。
(図15)
これは先ほどの話をくどく言っています。既設大規模事業所は第1期削減として、2010年から2014年、あと4年で8%削減しろ。これはオフィスの場合です。これは環境のほうですから、床面積ではなくて、原油換算1500キロリットル以上のエネルギー消費のある事業所を大規模といっています。この大規模というのはどのくらいか、床面積1万平米以上かどうかというのに興味があります。実は、この環境確保条例は環境のところで行っていますので、原油換算での大規模ということは別です。これは注釈です。第2期の2015年から2019年まで17%削減して、足して25%です。
ところが、既設の中小規模単独事業者は違います。小さいペンシルビルと思ってください。削減義務の対象外。ただ、おもしろいのは、大規模オフィスビルを直す時には、小さいビルが出している低炭素の量がわかってくれば、それを買い取ることができます。例えば大手町で日本ビルを、仮に1500%ぐらいにするといった時に、排出量がべらぼうに多くなります。その多くなった部分の一部分は、こういう中小規模単独事業者から買う。大手町で1500%の日本ビルをつくるときに、CO2をうんと出すことになってしまった。その時に東神田の岩本町の辺にある小さい鉛筆ビルの排出権の一部分をもらうということは可能だ、ということになっています。
しかし、買い手が来なければ売り手は何もできないんです。どこに売るかといったら、ずばり、大手ディベロッパーぐらいしかやらないんです。
さらに、省エネのトップランナーのことが書いてあります。皆さんご存じだと思いますが、大型家電量販店に行くと、空調機トップランナーと書いてあります。建物にもトップランナーがあるんです。これは後で事例が出てきます。省エネトップランナーを達成した建物に、将来にわたってもっとCO2削減しろと言っています。つまり、乾いたぞうきんをもっと絞れということなんですが、CO2排出原単位の低い中小既設ビル、これは例えば、丸ビルに比べれば、東神田の雑居ビルの排出原単位は低いでしょう。丸ビルが例えば100キログラムCO2/平米だとすると、雑居ビルは20キログラムCO2/平米になります。そういうところはCO2削減義務が非常に緩い。だから、こういうところでは経済的にペイしない。設備改修をしようと誰も考えない。 金をかけて設備をよくして、CO2が削減されたからといって、家賃を上げられるかといったら上げられないです。雑居ビルの家賃を求める人は、低炭素であるかどうかは関係ない。むしろ地震で壊れるか壊れないかで、家賃を幾らにするかという気持ちは大きいでしょう。


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