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1.東京都心の低炭素化

2.床面積増加に伴うCO2排出量の推計

3.低炭素化目標の設定

4.低炭素化の進展イメージ

5.多様な面的対応による低炭素化

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4.街区単位でのCO2排出コントロール手法の検討

(図93)
最後に行きます。何もしないところをただただほっぽっておいていいのか、という話です。これが何か1つのヒントになるのではないかと思う提案があります。東京電力の小早川グループが僕たちの勉強会で、何か考えを出せよ出せよと言いましたら、苦し紛れに出してきた1つの提案です。
(図94)
これは何かと言いますと、今言ったような市街地の中で、新設の大型建物があります。これは建てる時に総合設計や昔の再開発地区計画で容積率を割り増ししますから、開発者利益が出てくるんです。既設の中小建物は、容積上乗せですけれども、実際に使っている容積に比べて、上にまだ開発されてない容積を残している。それから、中小建物には設備改修資金がない。そうすると、ここで面白いことを考えたんです。ここに矢印があるでしょう。これは容積移転を考えろというんです。開発されない容積、例えば岩本町なんかで開発されない容積が100%ぐらいあったとします。その開発されない容積を新設大型建物に持っていって、容積率を増やします。不動産屋さんは床を高い値段で売って儲けます。開発者利益が必ず出るはずです。その一部分を設備改修資金として、中小規模の建物に充てて、それを直していこうということなんです。
ここに書いてある。街区内の新設大型建物の増床面積ですが、街区内でつくられる、例えば大手町の国の持っている印刷局の土地を、仮に郵政株式会社に売ると、必ずここは1500~1600%ぐらいの床を増やします。それと、既設の中小規模建物の開発されない容積の関係を結びつける。そして、その結びつけた結果として、省CO2対策設備改修資金が欲しいという中小規模建物のところに開発者利益を移すという関係を結びつけて相互補完する。そういうことを考えてみたらどうか。そういう提案なんです。それを称して、小早川グループは「街区連担型CO2削減特別地区制度」と名づけましたが、何だかわからない。「街区連担型」なんて要らないんです。「CO2削減特別地区」でいいんです。これを提案しようということです。
(図95)
これが僕が先ほどから延々と言っていたことです。従来制度のイメージでは、事業者単位でいろいろ規制を受けるわけです。都市開発諸制度に従った大規模なものは、いろいろ開発諸制度の割り増しが出てくる。しかし、小さい既存の建物で、開発意向がないところはそのままなんです。ほっておくままなんです。これが今までのイメージです。それに対して、開発意向のない建物に対しても、何らかの恩恵を移しかえるということを考えてみたらどうか。先ほどのCO2削減特区の制度を導入した後は、開発諸制度による容積割り増しがある。その儲けの一部分を中小規模建物へ移せば、大型建物もCO2削減するけど、中小規模建物も何がしかのCO2削減ができる。先程の5%ではなくて、10%ぐらいそれで削減率が高まるかもしれない。つまり、街区全体のCO2総排出量管理をやろうということです。その時に必ず自治体が絡む。従来制度は自治体はなく、東京都から直接です。この自治体、区役所です。これをどうするのという話です。
(図96)
これが非常に荒っぽいイメージなんですけれども、面白い。「特例諸制度活用開発」、再開発地区計画を活用して開発をすると、まず既存の建物の容積があります。例えば、1000%。そこに地区計画をやると丸の内では1300%になります。三菱地所はそれで十分満足です。
これからが面白い。千代田区が「おまえのところに100%容積を割り増ししてやるよ」と言います。別に東京都でもいいんですけど、千代田区のほうが身近でいいでしょう。それに対して、100%増しで、総延べ床が結果として1万平米増えるとしますと、区役所が三菱地所に「おれが売ったんだから、1平米当たり50万円よこせ」と言います。容積、1坪170万円の計算です。170万円でもお客さんはたくさん来る。大・丸・有でなくても、赤坂でも、そういうところだったら、最後のベースの建物の坪当たりの売却価格は、400万円、500万円は当たり前です400万円、500万円で売れるところの100%の中の170万円ぐらい出したらいいではないか。そうすると、例えば野村不動産は、それで100%増えれば、さらに30~40億円の儲けが出るので、「はい、ありがたいことです」となって、そのお金を区役所に払います。払ったお金を千代田区役所は、開発意向のない建物に対して補助金でリノベーション資金を提供する。そうすると、既設で眠っていた何もしないはずだった建物も、千代田区がそういうことを言うなら協力してもいいなということになって、CO2削減の性能が少し高くなる建物が増えるかもしれない。
「開発者はCO2を抑制しつつ、容積増加を享受する」「既存建物は通常の民間資金で行われる範囲を超える省CO2化が図られる」。通常の民間資金で行える範囲を超えるというのは、自治体からの金が来るから、それで省CO2化をやろう、ということです。そして、「街区全体での省CO2化が進展」する。こういうやり方を考えたらどうかという提案が東京電力から出てきた。これが出る前、僕は次のこと言っていた。2008年の時に僕はわめいたことです。怠け者で眠った連中がCO2削減に協力するということは、こういうことをやったらいいのではないかと非常に乱暴にいった記憶があります。CO2削減に協力しない建物がどの建物かは、例えば東京電力は電気料金を徴収していますから、わかるわけですよ。ガス屋さんもわかります。再開発すれば使用する電気料金やガス料金は大きく変動する。増えるかもしれないし、下がるかもしれない。しかし、眠っている既設の草の根型は、例えば5階建ての鉛筆ビルを貸すとすると毎月電気料金が7~8万円かかる。

延々と7~8万円ずつ払ってきます。建物が変わらないかぎり延々とです。少し古くなると、今度は性能が悪くなって逆に高くなるかもしれない。それを電気屋が見ている。区役所が、例えば東神田1丁目のあの草の根ビルについては、何もしないからそれなりの措置をやれと電気屋に言ったとする。電気屋はある日、そこに電気料金請求と一緒に紙を入れます。「あなたのところは電気料金から見ると、全然何もしてないように思いますので、CO2削減の改修をぜひしていただけませんか」と。
それは白い紙で、半年経って何もしなかったから黄色い紙を入れる。1年たったら赤紙が入る。1年ぐらいの余裕を見るわけです。何かしますと、必ず電気使用量は変化するはずです。窓をちょっと直しただけでも電気料金は下のほうに少し変化する。あるいはLEDを入れたというだけでもガタンと下がります。空調機をかえたということでも下がるはずです。何もしないでずっと来たらどうするか。黄色紙が来て空調機を替たとか、LEDを少しつけ替えたというと、電気料金は少し下がる。そうすると、電気屋は、少し下がったから猶予期間を置きます。何もしないところは赤紙。

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