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1.東京都心の低炭素化

2.床面積増加に伴うCO2排出量の推計

3.低炭素化目標の設定

4.低炭素化の進展イメージ

5.多様な面的対応による低炭素化

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(図98)
2005年の非住宅──非住宅というのはオフィスです──の延べ床が、僕たちの対象としている地域では8381万平米あります。2030年の下限値、非常に悲観的に見ると、2005年のオフィスビル8381万平米が9000万平米になるとしましょう、ほんのわずかしか増えない。その中で、既存の建物は9000万平米のうち7762万平米で、新築が1238万平米建つ。その新築の建物に容積売却価格が、先ほどいったように、1平米50万円掛けますと、4421億円ぐらい手に入れることができるんだそうです。それを使って、先ほどいった1平米2万円の改修をすると、省エネ改修面積が2211万平米になる。怠けている人のところに手を入れることができる。2211万平米の手を入れることができれば、既存建物7762万平米の3分の1ぐらいは省エネ改修が可能になる。ただ、この時は余剰金は出ない、こういう算術をしています。
先ほどいったできっこないという話ですが、容積売却価格は4421億円が最低限ですけれども、2030年上限のオフィス面積が1億1004万平米になると、その条件で容積売却して手にする金は1兆8736億円。これは夢物語みたいです。省エネ改修面積が5758ヘクタールできる。すごいでしょう。既存建物7762平米が上限でなく新築がどんどん増えていきますから、既存建物は減っていくんです。全部できるのではないか。全部新築にしよう。おまけに余剰金が7220億円も出る。7220億円あると、三河島の処理水を大・丸・有まで導管を引いてきて持ってきて、新しいエネルギーを使わないで処理水でこの地域全体の新築建物の40%のCO2削減ができるようにできる。新築の40%削減は全部三河島の処理水でできる。おまけに41億円ぐらい儲かるぞという面白い話をしているんです。
繰り返しますが、これは1つの非常に乱暴な試算です。CO2削減で、ただただ大規模なオフィスビルだけやっていて、草の根で死にそうなおばあちゃんの経営している鉛筆ビルはどうするんだ、それはかわいそうだから無視していいのではないかという理屈は成り立たないんです。やはりビルなりマンションを持っている地主は、それなりの低炭素に対する貢献をしなければいけない。それを容積率で解けるかというと、解けないです。何故かというと、こういう理屈で成り立つ場所はどこかというと極めて限定されたところのオフィスビルだけなのです。そういう極めて限定されたところのオフィスビルしか成り立たないということを電気屋はわからない。都市計画屋しかわからない。そこのギャップが1つあります。
それから、もう1つは、金の問題が出てこないではないか。こういうことをやったって、限定された場所で資金は限られている。やはりどうしても環境税が出てくるんです。国民全体が税負担をしながらこういうことについて立ち向かっていかなければいけない。政治というのは不思議で、そのことは全然言いません。環境省がヒステリックに環境税、環境税といってもどこの省も相手にしない。
それだったら、先程の20%削減を新築の大規模ビルの50%は地域冷暖房でやれと言っても、これもできない。地域冷暖房のウィークポイントが1つあるんです。これは大・丸・有も同じなんです。最近、エネルギー供給で、冷水でも熱水でも非常に効率のいい機械がつくられました。そうしますと、資金力のある不動産屋が大規模なオフィスビルをつくるって、最適に取り替える時に1つのビルの中の高効率の熱交換機をかえてくる。ところが、地域冷暖房になりますと、高効率の熱交換機ができても簡単に替えられないんです。
打ち明けていうと、パレスホテルの改築をしていますね。パレスホテルの改築も、あそこは本来、丸の内の熱供給システムがあって、丸の内の熱供給システム会社としては、パレスホテルに導管を持っていきたかった。熱供給会社の方の熱供給の効率も少しよくなると言ったんですが、パレスホテルも、住友の本店もそうだと思うんですが、それをやらなかった。それぞれ最適に取りかえなければいけない時に素早く替えていく、そういう敏速な対応が、個別の建物に1つずつ熱交換機を入れればできるわけです。ネットワークの大・丸・有になりますと、それができないので皮肉なことに、ネットワークの地域冷暖房供給会社の設備は古いものが多くなる。効率が悪い。ですから、結局、個別単体で熱効率がどんどんよくなる建物を3つ集めて、それでCO2の総排出量がどれぐらいになるかと計算すると、地域冷暖房の古い器具を使って3つのビルに供給する場合と比べて、CO2排出性は高い。総CO2排出量が多くなるという可能性がある。
つい10年ぐらい前までは、地域冷暖房でなければCO2は削減できないと言っていました。しかし、今状況が変わってきている。ただし、まだ地域冷暖房を無視できないんです。それはどういうことかというと、地域冷暖房に清掃工場の排ガスその他を入れれば戦えるんです。何故かと言えば、清掃工場の排ガスを入れれば、地域冷暖房中心のエネルギーを使って冷温水供給をする機械が要らなくなるんです。ちょうど、それは内燃機関の自動車と電気自動車の差と全く同じです。地域冷暖房の熱交換を丸の内のど真ん中にずっと入れればいいわけです。それをそのまま供給すればいいんです。ところが、それがない地域冷暖房会社は、自分のところで電気を使い、ガスを使って効率の悪い熱交換の機械をオペレートするわけですから、それは金がかかるんです。

 

2.霞が関周辺地区低炭素化都市づくり構想

(図34)
僕が3年ぐらい前にやった霞が関の大団地のCO2削減はどれぐらいになるか、ということについて話します。平成22年3月の最終報告です。何をやったかというと、今から4年ぐらい前の福田さんか麻生さんが総理大臣の時に、たまたま財務大臣が額賀福志郎という茨城県選出の早稲田の後輩でした。僕も今は早稲田マンになっちゃったんです。そこに行っていろいろ話をする時に、政府はCO2削減の国づくりをしようと言っているのに霞が関が何もしないというのは恥ずかしいことではないか。まず、霞が関でCO2削減の範を垂れなければいけないよ、勉強会を開いてくださいと言ったら、額賀さんはやろうと言いました。ところがその後の政権交代で額賀さんがやめてしまった。やめてしまったけど、そのいい伝えだけは残ったんです。残ったものをイニシアチブをとってやろうとは国交省の住宅局も都市局もしませんでした。環境省もやらない。東京都なんて全然無関心。そうしたら、千代田区がやるというんです。千代田区に僕をキャップにした委員会を開いて、国交省と環境省と財務省の専門員を委員として据えました。千代田区に霞が関地区の低炭素都市づくりの報告をまとめろといわれて、2年がかりでやった作業です。これは結構面白かった。

 
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