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1.東京都心の低炭素化

2.床面積増加に伴うCO2排出量の推計

3.低炭素化目標の設定

4.低炭素化の進展イメージ

5.多様な面的対応による低炭素化

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市街地全体とすると、5%ぐらいアーバンインフラ効果があると考えたほうがいい。供給側と需要側とアーバンインフラの削減効果を掛け合わせると、0.43になるんです。43%は削減できる。ですから、先ほど40%ととりあえず決めましたが、それはこの勘定でいくと43%だからです。それよりも少し甘くして40%床面積当たりとだったら、安全側にいくのではないかということで目標を40%にしたんです。
環境省の事務次官をやっていた小林さんというとてもいい人がいますが、その人が書いた本やパンフレットには、「CO2削減は掛け算で考えよう」と書いてある。掛け算で考えるというのはこういうことなんです。30%削減と言ったって、何も自分の自宅で太陽光発電や太陽熱発電をしたり、LEDの電球にかえて、自分でやって30%なんて下げる必要はない。東京電力がちゃんと削減してくれるんだから、掛け合わせて30%ぐらいというのはそんなに肩ひじ張らなくてもいいよということを小林さんは書いています。それは当たり前の話です。こういう掛け算で40%を狙おうと思います。
(図18)
ここからが僕たちのさわりなんです。これは威張って言えますが、日本の野村総研も三菱総研も、エネルギーの専門研究タンクのJESも絶対にやらなかった作業です。先ほど説明しましたが町丁目ごとの建物の規模を全部おおよそ類推しました。町丁目ごとの建物を住宅、非住宅に分けて、サンプリング調査をしましたが、それを拡大しました。
建築の着工統計を使って、過去5年間にどれぐらい東京の都心3区の建物が新築されたか、あるいはストックはどれぐらい残っているかを、整理しました。そして、何がわかったか。2005年から2009年の5年間の着工統計をベースに置きながら、町丁目別、建物の規模別の構成をある程度推計しながら調べました。そうすると、2005年から2030年になった時に床面積の半分は建てかわっている。しかし、半分は残っている。2005年に床面積が100万平米の街区があった。2030年になると、それは130万平米ぐらいになります。130万平米のうちの半分はフローで新築、65万平米は残ってしまう。ということは出だし100万平米が130万平米になって、130万平米の半分が新築で半分はストックということは、ストックはずっと残っていますから、2005年の100万平米のうちの65万平米は残っているんです。35万平米が建てかわって、それで130万平米になる。わかりますか。
残るというのは大変なことなんです。このストックを一体どうするのかということが、この作業をやると出てくるんです。ストックについても、町丁目別の300平米以下、300平米から2千平米まで、2千平米から5千平米まで、5千平米以上と、ずっと建物規模別に分類して、比率をとりました。ストックよりもフローのほうが新しい建物ですから、もちろん、大規模なオフィスビルが増えます。ストックの中の35%は大規模な古いビルが残っている。ストックの中でも一番小さい総延べ床面積の2割は300平米以下で残っている。それをこれから25年の間に建てかえると、大規模建築物は65%になる。
小さいビルは5%だけど、まだある。新しい建物をつくっても、こういう鉛筆ビルが残るということがわかってきました。それを横にして、300平米以下はストックのほうが多いですから整理しますと、新築着工では大規模が相対的に大きくなる。しかし、300平米以下は新築のほうの5%しかやっていませんし、ストックは20%もありますから、300平米以下ではフローは12.4~12.5%になります。
ストックとフローの規模別の分岐点をつくりました。
(図19)
ここからが面倒くさいんです。CO2削減についての努力目標を4段階に分けました。一番沢山削減するトップランナーの新設フローは、延べ床面積当たり40%削減する。先ほど言った清水の研究所は50%削減しています。ほかでも35%ぐらいになる。一番新鋭の三井不動産や三菱地所、野村不動産がオフィスビルをつくる時は、トップランナーをつくるでしょう。既設ストックで改修する場合のトップランナーは、いろいろ努力するけれども、新設に比べると削減量は少ない。25%ぐらいしかCO2は削減できない。新設フローでトップランナーほどではないけれども、積極的な対応を一生懸命やるのが25%と見たらいい。既設ストックでは、新設ではないんだから、やはり質は少しは落ちて、一生懸命努力しても15%ぐらいしかCO2削減率にはならない。
一番下の消極的対応は、新設であろうと既設であろうとやる気がない連中ですから、やる気がない連中は5%ぐらいなら何とかなるだろう。例えばLED電球を一部分取りかえたというのも結構効くんです。あるいは空調機をかえるとか。これが5%。
そういう4段階の努力目標を、2030年の床面積にあてはめていきます。フローもストックも入れた全体の総延べ床面積の中でトップランナーで40%削減するのは全体の12.5%しかない。2030年の全部の床で12.5%しかやらないし、それはフローしかやらない。それから、積極的な対応をするというのは、フローでは、全部合わせると20%です。まあとにかくやるかという人を全部足すと15%。何もやらないという連中は2.5%しかない。これを足すと全体の50%になるはずです。
ストックのほうは、何もやらないのが大規模でもいる。中規模で相当いる。5%しかやらないのは全部でどれぐらいいるかというと、22.5%。ストックで少しやるのが15%。かなり積極的にやるのが15%。積極的対応、2.5%。これも足すと50%になって足して100%。こういうことをやりました。
(図20)
町丁目別にやっていく大変な作業なんです。こういう状況で都心3区の先程の目標40%削減できるかとやりましたら、とんでもないことになったんです。先ほど言ったトップランナー清水建設は、CO2排出が50%減。これは今つくっています。東急渋谷新文化街区プロジェクト、これも40%。もう1つ、35%というのがあります。
(図21)調布の市庁舎30%、名古屋の三井ビル35%。これらを見ていると、トップランナー40%削減というのもそんなに非常識ではないということです。
(図22)
片方で、第3番目の課題がある。何かというと、それは2030年の都心3区で、事務所ビルも商業建築もオフィスビルも滅茶苦茶に集まって集積するところはどこか。滅茶苦茶に集まるところを超集積エリアと言います。どこかと言うと、大・丸・有。銀座は実は超集積ではなくて高集積ぐらいなんですが、ここも入れました。それから八重洲です。日本銀行から三井、三越のあたり。これが大・丸・有です。それから汐留がある。環状2号のマッカーサー道路、ここも高層化する。森ビルが国際的な業務と文化の町をつくろうというので必死になって土地買いして滅茶苦茶にここを変えようとしています。実際にいろいろ建てています。ここのところは超集積。


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