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1.東京都心の低炭素化

2.床面積増加に伴うCO2排出量の推計

3.低炭素化目標の設定

4.低炭素化の進展イメージ

5.多様な面的対応による低炭素化

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だから、これはインセンティブが動かない。
結局、どういうことが起きるかというと、都心3区でも、大・丸・有や、森ビルがやっているような六本木から赤坂の大規模開発、住友不動産のやる大きい1000戸あたりの集合住宅は、なるほどCO2排出削減は減るかもしれませんが、町全体として考えると、例えば月島のもんじゃ横町なんていうのは、全然何もやっていない。だから、その削減の進展は困難だという問題意識です。
(図16)
これは床面積が増えればCO2排出量が増加するのは当然です。都心の高容積の場所では排出はどんどん増えています。それに対して、排出量を減らすことは3段階でやっている。1つは、東京電力が、電気をつくり出す時に炭素排出量を下げる。平米0.38キログラムを0.30にするとどこでも下がります。岩本町でも下がるし、丸の内でも下がるし、神保町でも下がります。これは全都一律です。
そのほかは需要側が一生懸命努力しなければいけない。これは東京都もいますが、三菱村なんて一生懸命努力する。容積の高いところはなるべく下がるように下がるように叱咤激励されますから下げます。これが2番目。これは東神田です。こんなに下がらないかもしれない。
もう1つは、都市計画にかかわるんですが、アーバンインフラの効果による削減。アーバンインフラというのはどういうことかというと、一言でいうと地域冷暖房です。街区を越えた地域冷暖房をつくる。道路の下に熱導管や冷水導管を入れて、エネルギーセンターをつくって、物すごく性能の高い大用量の熱交換の機械を入れれば、また下がる。ですが、そういうことをやれる場所はどこかというと、極めて限られたところです。
考え方としては、3段階でCO2排出削減努力をやる、そういうことでこのグラフは、高いところはうんと下げて、低いところはほとんど下がらないよということをいっているわけです。
(図17)
ここからが、僕たちの作業グループの議論です。鳩山さんは1990年対比2020年25%総量削減と言いました。総量削減というのはどういうことか。丸の内も25%削減、東神田も25%削減、そんなことできるのかということです。
削減努力目標を持っている企業や個人でもいいですが、自分の建物を直す時に、坪当たり幾ら下げればいいかというのははっきりわかります。幾ら下げるために坪当たり何円の金をかけるか。これはお金もわかるし、削減量もはっきりわかりますから、なるべく効率よく、炭素を削減するという気持ちになるでしょう。しかし、何だかわからないけれども、千代田区で25%削減しろ、杉並区でも25%削減しろと言われる。建物をほっぽっている地主にとっては、25%というのは意味がないんです。借りていればそういう意識は持ちません。僕たちはいろいろ議論しましたけど、2005年対比で2030年のCO2排出原単位を40%削減しようという目標を都心3区で立てた時に、できるなら都心3区全体で床面積1ヘクタール当たりのCO2排出量を40%削減するんだ、そういうことができるかどうか考えてみようということです。
40%削減というのはどういう勘定になるかというと、先ほど言ったように、エネルギー削減は3つの要素でやれます。まず、象徴的な三菱地所の大・丸・有グループでは、とにかく1ヘクタール当たり20%から25%ぐらい削減できるのではないか、こういうねらいをつけます。20%から25%ぐらいはそうおかしくない。今までの事例でいうと、清水の本社ビルは、トップランナーの一番背の高いビルです。50%削減した。ですから、20%から25%もできるだろう。供給側も、20%ぐらい削減できる。現在、東京電力は、東京電力総体として原子力も火力も石油も全部入れると、1時間当たり0.38キログラムCO2出しているということです。それを将来は0.28に下げる。先ほど0.30と言いましたけど、去年ぐらいから東京電力は0.28キログラムCO2キロワットアワーにしていいよと言っています。結局それは原子力の稼働率を上げる。原子力を増やすということです。多分東京電力の総供給電力の50%近くを将来は原子力でやろうと考えているんです。そうすると、これは0.28ぐらいになる。
ついでにいうと、0.38キログラムという数字は、西暦2000年、今から10年以上前から5~6年使っていた数字です。つい5~6年前から0.38が0.30になった。0.30でいくかと思ったら、去年ぐらいから東京電力は0.28にしていいよと言い出した。供給側は20%ぐらいですので、僕たちが仮に自由に伸びやかに電気を使っても、東京電力の努力で、今年100だったのが来年80になるかもしれないということです。
一番問題は、0.05と書いてあるアーバンインフラ効果です。都市計画で建設省も東京都も、市街地を面的に整備して、CO2削減をすれば、東京の炭素量は相当減るぞといっています。一体どれくらい減るのか。例えば、先程の導管。仮にここ(NSRIホール)がエネルギーセンターとして、隣にパレスホテルが導管を引いて、温水と冷熱を供給すると、べらぼうにお金がかかります。そして、CO2削減をするということはわかりますけど、そんなことを、神保町の本屋街でもやるのか。皆さんあんまりご覧になってないと思いますけれども、東神田のあのごちゃごちゃしたところに道路をまたいで導管をひくとはべらぼうにお金がかかるんです。そういうことをやれるかということです。ですが、ここではとりあえずやれるところを考えてみようと思います。霞が関なんかは結構いける。霞が関の話は後で出ます。霞が関のお役所街区で、今ある建物のうち3分の1は面的な整備、道路をまたいででも導管を入れて地域冷暖房をやると言いますと、大体3%から4%下がる。霞が関全体に地域冷暖房を張りめぐらしますと、大体10%下がる。でもそんなことできるわけないんです。CO2をうんと減らすけれども、設備費がべらぼうにかかる。ですから、ここは優良な大・丸・有とか新橋の汐留を直す時に、5%ぐらい下げるということでいいのではないか。裏返して言いますと、需要側の20から25%削減は住宅局です。供給側の20%は通産省の資源エネルギー庁。アーバンインフラは都市局です。だから、CO2削減について、本当に物理的に直す時の重要な役所はどこかというと、住宅局の建築指導のところで細かくバリバリやるというのが物すごく効くんですね。
再開発、例えばトリトンスクエアで東京電力の氷蓄熱がありますし、幕張は東京ガスがコージェネをやっています。新聞や雑誌で、その効果でCO2が下がった、下がったといっています。あれは1つの大きい街区です。大きい街区を4つつなげて、道路をまたいで導水管を入れるといったら途端に、そんなこと、時間はかかるし、金はかかるので、うまくいかないんです。

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