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(図7)
それには何が決め手になったのか。検討委員会の最終報告のポイントの抜き書きをしております。この地区はこれだけ東京が変わっている中で唯一残された江戸伝統文化の継承地である。日本の歴史遺産を国内外にお示しできる地域ということです。このタワーがきっかけになって、新しい江戸文化、日本文化が再発見できるような観光拠点になっていくことが、これからの東京には非常に意味があるという評価をしております。こういうことを言われて、これからのまちづくりの方向性も見えてくるわけです。
最終決定の選定理由として幾つかあります。タワーを中心としたまちづくりが進められる好機にある。新しい情報発信の都市文化の創成拠点となる可能性がある。歴史・伝統を有する数々の資産がある。隅田川や周辺の観光資源に恵まれている。こういったものを有機的につなぐ拠点となる可能性がある。つまり、隅田川を挟んでさまざまな観光資産があるので、そういったものを有機的につないでここが拠点になる、そういう可能性があるという評価をいただいて選定をされたわけです。
特に、先生方からは、東京の都心に近いこの地に隅田川はあるし、内河川もきれいに残っている、水辺が残っているということに対する評価が高く、これを何とか活用しなさいという助言をいただいております。
(図8)
平成20年7月に建設の工事が着工しました。その前に東京スカイツリーという名称が決まっております。この頃はメディアに出ても余り話題になりませんでした。話題になり始めたのは、平成22年2月の300メートルを超えたあたりです。333メートルを超えたのが3月28日、年度末でした。押上・業平橋地区は浅草から歩いて14~15分のところです。土曜、日曜は人も来ない静かな街でした。この頃から土曜、日曜には、タワーの建設地の周りは見物客でいっぱいになりました。これは未だに続いております。それが平成22年3月の終わりで、1年後の平成23年3月には634メートルに達します。
ただし、この3月18日の1週間前に東日本大震災がありました。634メートルにもう少しというところで、東京に震度5強の揺れが襲いました。地震の時には、ゲイン塔と呼んでいるアンテナの先端にある制振装置が働いて、揺れを抑える機能があります。もちろん、構造そのものが心柱という五重の塔の日本の伝統的な建築技術を活用しております。ところが、この時には、634メートルを完成していないので、その制振装置は働いていませんでした。ユーチューブなどで大きく揺れる映像が出ておりますが、結果的には、本体には何の影響もなかった。この時の様子はNHKはドキュメンタリー番組で流れました。そういう意味では、日建設計の設計も含めて技術の粋が集められた塔だと思います。
ただし、昨年の12月が竣工予定でしたが、2月末に2カ月ずれ込みました。開業が5月22日。これは1カ月ちょっと遅れた程度だと聞いております。2カ月の遅れの分、1カ月ちょっとに切り詰めて開業にたどり着くという状況です。
最近テレビでスカイツリーからのお天気カメラをご覧になることがあると思います。375メートルにカメラが設置されておりますが、1社だけはそれより低いところに設置されております。先ほどのDVDの映像でご覧になったと思いますが、花火が映っていましたね。あの花火は斜め下に映っていました。花火は200メートルまでも飛ばないので、350メートルからだと下を見おろすことになります。そこでテレビ東京は隅田川花火用に375メートルのところより下に置いているという話も聞いております。
(図9)
5月22日のオープンを前に、一昨日450メートルの展望台がマスコミ公開されました。発表されている資料をもとに主な施設を紹介します。
第1展望台の350メートルは「天望デッキ」、第2展望台のここは「天望回廊」、間を行くエレベーターが「天望シャトル」という名前になっています。そういうネーミングと合せて、いろんなところに趣向が凝らされております。例えば第1展望台の天望デッキは3層になっていて、一番下の層の床はガラス張りになっている場所があって下が見えるようになっています。天望シャトル、4基のエレベーターのエレベーターごとに、桜、隅田川、祭り、都鳥の空という4つのテーマでアートパネルが、中に飾ってあります。これは墨田区の若手デザイナー、高橋正実さんという方のデザインです。この方には我々も、3月から走り出した区内循環バスのデザインをお願いしました。こういうところに区内の若手の産業人の知恵が生かされているのは、我々もとてもうれしいことです。
(図10)
展示演出を幾つかご紹介します。開業に向けてライティングの試験が行われています。LEDが、全部で1995台あります。今夜、フル装備で試験を行いますのでご覧になってください。今まで、クリスマスやお正月にライトアップをやりましたが、白いライトで300台ぐらいしか使っていません。だから、今日の点灯はとても見ごたえがあるのではないかなと思います。
 展望台の周りに、白い光がクルリクルリと回ります。1周を1秒で回るので、我々は時計光と呼んでいます。雨の日や曇で覆われた時の対応としては、雲のじゅうたんに向かってライトアップをするときいています。アメリカのエンパイアステートビルディングでもそういう仕掛けがあるらしいですが、下から見える景色を楽しんだり、展望台の上から見る景色を楽しんだりという趣向が凝らしてあるそうです。さまざまな知恵と工夫を凝らしながら進めているところです。


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