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(図30)
事業展開の4点目は観光回遊性の向上策です。区内循環バスを3月20日に走らせることになりました。「すみだ百景すみまるくん・すみりんちゃん」という名前です。これもネーミングに苦労したところです。結構利用が増えています。日曜日などは1日3000人ぐらい乗っています。台東区でいいますと「めぐりん」になります。文京区でいうと「B―ぐる」というのがあります。路線バスと違うのはバス停名称の工夫です。スカイツリーに来たお客様を乗せるのだったら、名前を考えようよということで、バス停の名前をいろいろつけています。例えば、春慶寺前、法恩寺入口、弥勒寺前。これを見て物語の世界が思い浮かんだ人は通です。鬼平犯科帳の舞台です。何とか3丁目じゃなくて、そういう名前にしています。
もう1つ、こういうことを始めてみると、地元の方の思いも伝わります。それをうまく引き出さないといけない。元徳稲荷神社入口の名前誕生のエピソードです。この神社は、墨田区の方も余り知らないのですが、南のほうにあります。古くから地元の人がお守りしていて、老舗の和菓子店が元徳餅というお菓子までつくっています。バス停の名前をつけるのに本当は迷っていましたが、地元の町会から「この名前をつけて、まち起こしをやりたい」という話がありました。それは大事にしようということでこの名前になりました。私も事前に見てまいりましたら、バス停の入り口から元徳稲荷まで250メートル以上ある道を、一直線に元徳稲荷というのぼり旗が地元町会の名前で何十本と立っていました。こうやって案内するよという話です。それは大事にして生かしていきたいなと思います。
(図31)
5点目は舟運の話です。タワーの最終候補地に決まった理由の1つに、水辺があります。水辺の再生というのが課題として与えられています。墨田区には隅田川、荒川という1級河川に加えて内河川があります。タワーの前には北十間川、横十間川、堅川、小名木川、これは江東区です。従って、これは江東区との連携なくしては進まない。それと、隅田川の場合には台東区、江東区、中央区と連携しないとなかなか進まないといういい課題があります。
社会実験として実施している2つのモデル的な例をご紹介します。
隅田川舟運・街歩きのモデル例です。「東京新名所・舟で巡る東京スカイツリーと東京ゲートブリッジ~海と陸の巨大構造物めぐり」というテーマです。このあたりから舟で出て、隅田川と江戸の歴史の解説をしながらゲートブリッジまで行って、そこから吾妻橋に戻ります。そして、おりて、スカイツリーの周辺の街歩きをする。舟運というのは、舟だけでもいいのですが、街歩きを絡めるともっとおもしろくなります。
内河川の舟運の場合は、タワーの前から北十間川、横十間川を下ります。そうすると、ここに扇橋閘門というのがあります。内河川と外河川との間を水門で仕切って水位を一定にしております。水位が変わらず波もありません。水門には、樋門といってあかない門と閘門といって、間隔があいた2つ門が上下して船を入れる門があります。この閘門が観光的におもしろいです。扇橋閘門を渡って小名木川を越えて隅田川に出てもらう。
ここは深川と言われる江東区ですけれども、ここでおりて深川街歩きをしながら江戸前握りずしを食べます。ミツカンがレシピを公開しておりまして、おすし屋さんがミツカンの講習を受けると、江戸前握りずしを握れるようになります。両国に1店、深川に2店あります。ここで江戸前の握りずしを食べながら、うんちくを垂れて、江戸の頃のすしはこうだったああだったという話になるわけです。小名木川の高橋の船着場から隅田川に出て両国のほうに抜けます。両国でおりて歩きながら、ちゃんこを食して終わりという1日コースで社会実験をやったことがありました。
今現在は区役所の前に15メートルの船着場がありますが、これを今年度から40メートル級に改修することになっています。それが終わったら、運航が始まるようなタイミングで進めていこうということです。そのために今、社会実験という形でやりながら、民間の事業者に参画してもらって、運航のための準備、トレーニングをしています。
(図32)
6点目になりますが、インバウンドの話は避けられません。街歩き、舟運、インバウンド、この3点セットかなと思っています。インバウンドについては、国全体の動きもありますので、墨田区だけで何かやるというよりは、国と上手に連携し、今年の「訪日外国人旅行者の受入環境整備に係る戦略拠点」に選ばれました。今年度、戦略拠点は成田、押上・業平橋、名古屋、神戸、広島の5拠点です。戦略拠点に選ばれて、今年から2年か3年間続けてインバウンド対策のための事業を観光庁が直轄でやります。そういったことでインバウンドはしっかり取り組んでいかなければいけない課題です。
事業展開の7点目はフィルムコミッション。墨田を取り上げるものがどんどん出てきていますので、あとはいかにイメージをつくるかだと思っています。2年ほど前に「豆腐小僧」という墨田が舞台になった漫画が映画になりました。3・4年前に「のんちゃんのり弁」というのが小西真奈美主演で映画賞も取りました。もう1つ、映像による情報発信として「TOKYO DOWNTOWN COOL」をご覧ください。ユーチューブで「TOKYO DOWNTOWN COOL」と入力していただいて、江戸切子や伝統工芸など、墨田のキーワードをもう1つ入れていただくとたくさん出てきます。墨田の産業にかかわる方、観光にかかわる方、人に着目した映像発信をしています。こうした良質は映像によるイメージ発信も重要な事業です。
あとは、アートを生かした観光ということで、芸大と台東区と連携で、GTSのアート観光プロジェクトなども進めているところです。NPO向島学会の「墨東まち見世」。4年目になりますが、小さなスペースを使って、向島のエリアでアーティストたちが1カ月とか2カ月間、一斉にやります。街全体で20カ所に散らばってそういうプロジェクトが動いているという感じになります。向島にアートが根づいていくような予感がします。そういった取り組みも進められているところです。


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