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もう1つは、国際化の時代ですから、グローカルな視点が大事だと思っています。徹底的に墨田の江戸以来の文化にこだわった見せ方をすると、世界的にも通用するのではないかということです。そこで、観光振興プランでは、8つの観光拠点エリアとタワービューの軸を設定しました。回遊性の高い街にしていくためには、タワーに来ていただいたお客様に区内さまざまなところを回っていただこうということです。
それがこの図で、両国のエリア、錦糸町のエリア、吾妻橋、押上、京島、八広、鐘ヶ淵、向島です。エリアを8つに分けて、観光拠点としてそれぞれの拠点の特徴を生かした展開をしよう。それから移動軸を設定して、移動できるような回遊策を持っていこう。さらには、タワーが634メートルで区内いろいろなところから見えますので、タワービューという軸を活用しましょうというのがこの全体の考え方です。そういった考え方にのっとってさまざまな施策、先ほどの道路整備なども、タワービュー通りという錦糸町からきれいにタワーが見える通りを整備中です。言問橋から見るタワーがきれいで、ここも整備をしていますし、桜橋通りも今やっているところです。これらのタワービューを活用しようというのが観光展開の考え方にあります。
墨田区が観光を意識して取り組み始めたのはタワーの誘致が決まってからです。今までも、隅田川花火はやっていました。国技館5000人の第九もやっていました。そういった全国に有名なイベントはやっていますが、観光という意識ではなかった。それがタワーを皮切りに始めたのですが、関東大震災、東京大空襲で燃えてしまって、いろいろなものが残ってない。だから、これをどうしようかということが今課題です。
イベントも浅草とは全然違います。四季折々の季節感のあるイベント展開が課題です。これらを担う、担い手が少ないのが課題です。この辺は浅草をお手本にして考えております。もちろん浅草になろうとは思っていません。墨田の良さは、これからの都市文化の象徴たる新しいスカイツリー、そして、その周りには昭和のレトロな街並みや江戸文化が残る街があります。つまり、コンラストが魅力です。そういうのをセットで見せていくのが墨田の観光だと思っています。
浅草の場合はご覧になってわかるように、正月から暮れまでイベントだらけです。それも浅草観光連盟がありますし、浅草の商店街連合会がありますし、おかみさん会もありますし、いろんな団体がそれぞれやるわけです。見ていると1年じゅうお祭りをやっているような街です。そこにお客さんが集まってお店にお金を使うからお祭りをやるにしても、お店からお金が集まりやすい。そういう街なので、我々は非常に勉強になります。
浅草には浅草寺を中心に歴史があります。商人の街です。墨田区の場合にはものづくりの職人の街です。親会社から仕事が来るのを待って、それを受けて仕事をする受け身の仕事をしていた。商人の場合にはお客様をつかまえて売るというのをやっていた。攻めのご商売をやっている。やはり、これが歴史の蓄積によって違ってきます。行政と街との関係もどうかというと、台東区の場合は、今申し上げた浅草観光連盟、おかみさん会、商店街連合会、いろいろな団体がスポンサーを連れてきてイベントを仕掛けてしまうわけです。1年間のスケジュールがほとんど決まっています。それを行政に持っていって、「俺たちがこれをやるから、公園を使わせてほしい」とか、「予算がこれだけ足りないから補助金を」ということです。墨田区の場合には、どちらかというと行政主導型ですので、行政が何かを仕掛けて、予算立てをやって、街の人と始めていかないとなかなか動かないというのが現状です。この辺は、今申し上げた成り立ちの違いではないかなと思っています。ただ、それも、だんだんと担い手ができてくるのではないかと思っています。
四季折々のイベント展開ということについても、浅草に学ぶのは、1年間のスケジュールはルーティンで回っています。それをやりながら、2年後、3年後を見据えて新しいものを考えている。今、浅草に平成中村座という歌舞伎の小屋が建っています。歌舞伎座を今改築中ですので、5年ぐらい前に改築の話が出てきたころからあそこは動いています。私が耳にしたのは3年以上前です。平成中村座をやる。そして中村座の前に船着き場をつくると言っていて、本当につくりました。行政の尻をたたいてやっているんです。船渡御というのを3月にやりました。あれも浅草の町会の若手たちが寺子屋という勉強会を長いことやっていました。その勉強会の中で、古い絵のなかに、浅草寺のお祭りの時に船でお神輿を隅田川を渡らせて、水神に奉納に行く絵が載っていた。その絵から勉強して船渡御を復活させました。それも3年前から始めていました。つまり、ルーティンで季節性豊かなイベントをどんどんやりながら、3年後にこれがあるぞ、タワーができるぞという先をにらみながら新しいものを仕掛けるというのが浅草のすごいところです。この点を学ばないといけないなと私は思っております。
(図26)
これからは具体的な事業展開の話をします。まず、1点目は担い手育成の話になります。けん引役として、3年前に観光協会を一般社団法人化しました。その時に、行政がこういった団体にかかわるのは天下り先をつくるのではないか、自分たちの思いどおりにやる別組織をつくるのではないかと思われがちなので、私がこれに観光課長でかかわっていましたが、民間人で動かせるような組織にしようと思いました。実際には、事務局長、事務局次長は区のOBで、我々とのパイプ役になっていますが、それ以外はほとんど民間人です。そして事業を進める4つの柱をつくりました。実質的に動く柱になる人を引っ張ってきてつくらないと動かないと思いました。役人が中心になってやると動かない。
最初に、街歩き事業と観光PRについてはJTBのOBの方が法人化の前からいましたので、じっくりやってもらっています。今日お配りした「まる得ブック」は、よくできていますので後ほどご覧ください。R社現役社員の出向と書いてあります。リクナビというサイトを持っているR社です。まだ30代の出向の社員がこれをつくりました。お店のデータは、バーコードがついていますが、バーコードで見ていただくとわかるように、リクナビと連携してデータをつくっています。そういったつくり方から全然違います。まず最初の柱をこの2人で固めています。



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