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広域連携は、舟運のところで触れましたが、もう1つは、江東6区、墨田、台東、足立、葛飾、江戸川、江東の6区で「おさんぽ案内帖」というガイドブックをつくりました。それぞれの区の街歩きの案内や、七福神などもそれぞれの区でやっている七福神のルートを2ページにまとめたり、お祭りなど共通のものは共通のもので紹介しながら、各区の街歩きを紹介するガイドブックです。広域連携は取組まなければならない課題です。
以上が現在の事業展開です。最後に、来年に向けた両国の話をしておきます。
(図33)
先ほど浅草が、毎年毎年ルーティンで定着したイベントを回していながら、2年後、3年後を考えているというお話をしましたが、我々もそういうことでなければいけないなということで、タワーの開業1周年をにらんで考えているものがあります。
(図34)
これは江戸名所図絵ですが、両国橋を渡ると真正面に回向院がありました。
(図35)
これは回向院のご開帳の絵です。仏様を見せて、参拝客がお賽銭なり飲食などでお金を落としていく。こんなに人が来たわけですから、両国橋三千両と言われていました。1日三千両のお金が動いていたと言われるぐらいです。そうなると、全国のお寺が仏様をかついである期間ここへ来るわけです。もちろん幕府の許可が要ります。お賽銭を持ち帰って、お寺の屋根を直す、本堂を直す、そういうふうにしていました。これを出開帳と呼んでおります。記録に残っているところでは、回向院で166回行われました。この出開帳を来年やる話があります。
(図36)
長野善光寺は7年ごとに居開帳(ご開帳)をやっています。2009年だったと思いますが、600万人ぐらいの人を呼んでいるということで、来年長野善光寺の出開帳仏を持ってきてやるということです。
来年に向けた回向院の仕掛けをもうひとつお話します。ここは江戸の六大浮世絵師の鳥居清長の菩提寺で、墓碑がありました。今はなくなっているので、来年199回忌を機に墓碑の復活をしようという動きがあります。墓碑の中に鳥居清長の八頭身美人の絵が彫られますが、女の子が生まれたらここへお参りに来て、この碑をさわると美人になるとか、モデルになる女性がデビューの前はお参りに来るとか、そういう都市伝説をつくろうという話が動いています。
(図37)
最後のまとめになります。これからの墨田区を成功させていくには、墨田をいかにブランディングしていくかだと思います。観光もブランディングですが、ものづくりも同じです。「すみだ地域ブランド戦略」というパンフレットの12、13ページをご覧ください。地域ブランドというのは、江戸から明治、現代につながるDNAを継いでいくということ。そして、地域の文化を次の世代につなげていくということ。ものづくりを通して生活に潤い、彩りを与える。そういったテーマの製品に合致するものを認証していっているわけです。認証とは別に、コラボレーターさんたちと区内の企業が結びついて製品づくりをやっております。これも認証商品になるものです。
これを見ていただくと、左上に名児耶秀美さんの商品があります。名児耶さんの商品の右上に「てのひらサラダトング」と書いてあります。これは笠原スプリングさんという区内の小零細事業所で、笠原さんと名児耶さんがコラボレーションした製品です。セレクトショップで売れ始めているという話を聞いています。つまり、物をつくる技術だけではだめで、いかに消費者につながるか、近づいていくかということです。今まで受注生産で、言われてきたものをつくっていた事業者さんが、消費者にどうやって近づいたらいいのというのが課題です。テザイナーやバイヤーがコラボレーターとなって区内の企業とつながって物ができる。それをバイヤーであれば自分の売り場を持っていますので、そこで売ってもらうことにつなげていくという動きをしているのが地域ブランド戦略です。
これは行政が税金を使ってやっていますが、行政とは別に独自の動きが始まっています。右の上の山田遊さんという方は、区内の企業をグループ化して、企業とコラボして商品をつくっています。
そういう動きが始まっているのはなぜだろうと私は思っていますが、1つは、先ほど申し上げた、タワーに注目が集まり、東京の都市軸が東に移ってきて、みんなの見る目が東を無視できなくなってきている。墨田という街に、「ここは結構職人がいるよね」というイメージで企業に声をかけてみたら、「意外といい物ができるじゃないか。やっぱり江戸の雰囲気があるね」という発見があると思います。そういうことから生まれてきているのがコラボレーション商品です。それが新しい動きになってきているというのが1つです。
(図38)
画面をご覧ください。ソニーエリクソンという携帯をつくっている会社が下町の職人さんとコラボレーションをしております。ソニーエリクソン社が「墨田区って、江戸からの職人がいるっていうけど、どうなの、何かつくってみたいね」という話で始まったのが、江戸切子による携帯のホルダーです。
この塩澤政子さんというのは、お神輿とかお寺の扉に金具がついていますが、そういう仏具的なものをやっている方です。その技術が彫金を使った携帯ホルダーになる。
(図39)
(図40)
(図41)
楓岡武之さんもそうです。
(図42)
つまり、これからのものづくりですが、タワー効果や外部からの注目でコラボレーターのような担い手が出てきて、区内の企業と結びついてくる。それで消費者の評価が得られれば、物として売れてくるわけです。消費者にどんどん近づいていく。その商品を見ると、伝統が感じられる、においがするような商品は結構あります。そういうものを再構築していくことがものづくりの上での方向性だと思っています。
それでは、観光はどうかというと、今申し上げたとおり、江戸から明治、昭和の伝統文化を掘り起こしていこうということですので、そういう歴史に根差した観光をつくっていきます。向島学会にしても、在原業平に源を発する観光だと思います。観光の向こう側に江戸下町文化みたいなものが透かし見えてくるというのが1つあります。墨田といえばそういうものなんだ、あんな新しいスカイツリーの周りにそういう街があるんだということが定着して、そういうメッセージが発信できると、これこそブランディングになってくるのではないかと思っています。こうしたイメージを介してものづくりと観光が結びついていくというのが融合の姿ではないかなと思います。
それには人であったり、街の風土であったり、ものづくりのDNAがきちっとそこにあることが大切です。これらの根底にあるものづくりと産業との融合が、これからの姿ではないかというのが今時点での私の結論です。これはまだタワーが開業していないのに、結論めいた話をするのは時期尚早ですが、今日お話をさせていただいた観光、そして今動きつつあるものづくりが、タワーの開業を機に、5年、10年かかると思いますが、墨田の街のイメージを大きく変えていくと思います。そういうことに向けて我々も働いていきますし、街の人とタッグを組んでやっていきたいなというのが今時点での私の想いです。
この後はご質問を受けたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)



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