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(図10)

 

 

 

 

 

 

 


第一の論点は、近代化の価値観から低炭素社会型の価値観への転換です。根本的な話ですが、産業革命以来、近代化が進められてきましたが、その時に、新しい社会をつくり上げるための価値観、美徳など、そうでなくてはならないと言われている価値観があります。ところが、それがことごとく、今の公害という問題から地球環境の問題を引き起こしているということは皆さんもご承知のとおりだと思います。
これをどういう形で低炭素社会の価値観につなげていくのかということですが、人間を回復する、人間を信頼する社会をもう一度つくり上げる、自然循環のエネルギーの社会に変える、循環型の社会あるいは都市をつくり上げていく。そして、非常に根本的な話になりますが、縦割り社会の非常に大きなプロジェクトをなし遂げてきた専門性という力に対して、環境問題を考える時は、いろいろな分野を水平に横串を刺したような考え方、水平思考、総合性が必要なんだということが現在言われているわけです。
戦後の持ち家政策が破綻していき、これからはシェアリングの時代になるのではないか。個人というものは、今の民主主義はある意味では構造的な欠陥だと言う人類学者もいますが、そういうものから、これからどうやって分かち合いの社会をつくり上げていくのかという問題が大きくなっています。
(図11)

 

 

 

 

 

 

 


最終的な結論をまず最初にお話ししますが、8つの基本理念を結論的に私たちは考えました。右の図にありますように、できるだけ小さな環境世界の中で「ジリツ」する。「ジリツ」には2つの意味があります。1つの「自律」は、その中でできるだけのことをしながら、さらに足りないものをその他の地域との間でネットワークをつくりながら均衡を保っていこうとする考え方。もう1つの「自立」は、完全に中で自給自足をしていこうという考え方。
横の水平方向が循環型社会をつくるという流れ。山から海までの水系を軸とした生物の多様性を保障し、あるいは人間の営みによって起こる廃棄物その他の循環型利用もあるわけです。また、エネルギーの循環型利用もあります。
それと、縦方向のエネルギー、これは頭の上の太陽から宇宙、宇宙はマイナス270度の世界ですが、それとの間の熱の交換、あるいは地中のマグマや地熱、表面に太陽の熱が蓄熱されている地中熱という熱があります。これらをどう利用するのか。
それから、空気による冷気や風というものがあります。こういうものがエネルギーとして使われていく。それをできるだけ使うことによって、遠くのエネルギー利用を少なくできるのではないかということを私たちは議論しました。先ほどお話ししたように、私たちは原子力のような遠くのエネルギーに替わるエネルギーをどうつくるのかという視点では議論をしてこなかったという自己批判をしています。
それがAの項目ですが、BとCは、それぞれ建築に関する項目です。低炭素化の問題。それにはパッシブ型の環境基本性能というものをしっかりと普及促進するZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)の促進が必要です。現在私はロードマップ委員会委員ですが、皆さんご存じのように、今後環境性能が規制化されていくという方向にあります。
Cのストック型の社会を前提として改修の社会を構築するのは大変難しいことです。しかし、これをやらないと2050年にすべての建築をゼロカーボンにするということはできません。そして、Dは、先ほどお話ししました価値観の転換。Eが、地域性や歴史性、人間性を重要視したスローライフや農のある生活。豊かなエコライフ生活というものを考えようということです。Fは、先ほどの垂直のエネルギーと都市の再生可能エネルギーでつくるスマートグリッドの世界。Gは、今までの私たちの都市計画やゾーニングを今見直すべきだろうと言っていますが、これは宅地と農地、市街化調整区域と市街化区域、あるいは都市計画区域と農村地域というミックスゾーニングの考えです。
最後のHは、コミュニティの問題です。多世帯型のコミュニティ。1つのコミュニティの中にさまざまな人たちが一緒に住み、分かち合い、与え合うという社会構造です。 こういうことを基本理念として考えています。


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