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(図43)
この縦格子の扉は雨戸で、この内側の部分は基本的には外部であるという考えです。外部であるが内部的な空間、これを内(うち)的な外(そと)空間といっていますが、これをたくさんつくろうという考えです。そこではもちろんエネルギーは使いません。エネルギーを使わなくても、実際には使いやすい快適な空間として設計できるということを証明したかったところです。
(図44)
この町は丸太の産地でしたので、杉丸太を200本ぐらい使って、子どもたちのデンや室内の空間を丸太でつくりました。この木造の学校のコストは大変少なくて、平米あたり21万円となりました。木造の学校のコストについては、文科省と1998年ぐらいから検討を始め、2000年頃にタウンミーティングの要望から、学校を木造でつくった場合にすべて補助金を出してほしいうというお願いをして、それが実現しました。統計をとってみますと、最大35万円ぐらいまでありましたが、全体として平均25万円ぐらいでできていることもわかってきました。
(図45)
同じ町で、もう1つのコンペがありまして、町営住宅を木造でつくるということでした。この場合には3階建ての町営住宅が準耐火構造で実現しました。真ん中にあります大黒柱は1階から3階まで貫いております。
(図46)
21世紀になって、2000年の初め頃に、秋田で中仙町というところのまちづくりをすることができました。ここは仙北平野という扇状地で、奥羽山脈からの水が伏流水となって表面は枯れています。そこで玉川用水が江戸時代から開発されたところです。そういう水の歴史と同時に、皆様ご存じの前九年の役など、さまざまな平安時代からの歴史があるところです。今でもこの地域の人々は、酒を飲めば平安時代のことを議論するような不思議なところです。
そういうところで小さな考古館をつくろうという話がありました。私は、考古館をつくっても、一回行ったら10年行かないというものはつくらないほうがいいのではないかという議論をして、町を歩く博物館をつくろうということになり、町ぐるり博物館ということを行いました。これはその時の案内のサインです。この町の羽後長野という駅に行って、駅から電話をすると、案内人が駆けつけてくれて、その人が町の中をこれに従って一回り案内をしてくれることになっています。案内人養成講座を行い、私が校長となって、二十数人の町の人たちに、「この場所はこういう魅力があるんだ」ということを説明しました。素晴らしい風景と、水がすごく身近な町です。この写真は昔の前九年の役があった城跡です。
この町では江戸時代からの扇状地の用水開発に伴って、今は廃墟になった用水跡や、藤原の鏡が出土しています。これが平泉の奥州藤原へ中央の文物が日本海側を通ったのか、太平洋側を通ったのかという謎解きの議論になりましたが、その調査の中で基本的には日本海側から雄物川や最上川を通って、奥羽山脈を越えて、奥州平泉まで行ったということが立証されてきております。
(図47)
この町で「町ぐるりマップ」をつくり、小さな水の公園を設計させていただきました。この用水にはトゲウオも生息するようになりました。水の中をのぞく小屋をつくりましたが、これはラックジョイントという、その当時開発していた新しい木造ラーメン工法でつくったものです。町並みも黒塀の町並みを復活して、これも条例化して、1メートル2万5000円の補助金がつくような制度をつくりました。

(図48

 

 

 

 

 

 



次の事例は現代のものになります。大東文化大学の板橋キャンパスの設計を行いました。右側の講義棟が約8000平米、中央の図書館棟がやはり8000平米、奥の体育館が5000平米です。ここでは、計画論的な手法と、エネルギーフローによる環境建築を提案しました。例えば講義棟のところは太陽光の発電パネルが全面を覆っていて、環境建築らしく見えますが、ここのみそは8000平米の延べ床面積の約半分を半外部とした計画論的な手法です。半外部の空間というのはエネルギーを使わなくてもよい空間です。ここでも学生たちが自分で勉強できる、あるいはいろんな議論をして交流する場をつくることができます。そうしたことで、全体で2000キロワットぐらいのエネルギーが必要だったものを、最終的には450キロワットまで縮小しました。それに約250キロワットの自然エネルギーや地中熱などを導入することによって大変少ないエネルギーで運営ができるという建築を創ったのです。
(図49)
大きな庇の中に半外部の空間をたくさんつくりました。この建物は中央棟で、図書館ですから内部活動が主です。右の講義棟は、南側にある、屋根までシースルーの太陽光発電で囲まれたスパイン空間という半外部の空間が特徴です。ここも外部の空気で、空調は全くしていません。真冬でも気持ちのいい空間になっています。こういうラウンジなり自由研究スペースなどで学生たちが勉強しています。ここはすべて半外部空間でエネルギーを使わない空間になっています。こういうところをスパイン(背骨の空間)と位置づけて構造化を図ったところが特徴です。

 

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