→日建グループへ





 PDF版はこちらです→ pdf


(図77) 
もう1つは、水力発電です。都留市の「元気くん」と言っている30キロワットのドイツの発電機です。こういうことを今まで私たちも考えてきましたが、これはおもちゃみたいなものです。2000キロワットから5000キロワットぐらいが常につくられるような発電機が欲しいと私は思って、日本のメーカーで探しました。ところが、日本のメーカーはどこもつくっていません。日本は2万キロワット以上の発電機しかつくらなくなってしまっているんです。これは日本全体が原子力ムラになってしまっていることを示しています。そういうものではなく、もっと中ぐらいの発電機を利用して分散型のシステムを創る必要があります。
(図78)
上の写真はアメリカのハドソン川で1897年にできて、120年も使っている水力発電所です。これはたかだか4メートルの低落差のところで発電しています。それを10台並べてつくっています。これが現在でも現役で動いています。
(図79)
今ここに農業用水のダムがたくさんあります。ここはもともと報徳仕法という二宮尊徳のため池型農業生産を伝統的にやっていたところです。そのダムがどのくらいの落差があって、どのくらいの水量があり、どのくらい発電能力があるのか、専門家と計算しました。エネルギーとしてはすごく使えるものなので、これをいろんなところで提案をしているわけです。特に真ん中にあります浪江の請戸川にある大柿ダムは一番大きな発電が可能で、2000キロワットぐらいの発電できます。風力も、山の上には風況が非常に適している賦存量の高いところが多い。あとは海洋エネルギーです。広い大陸棚では大きな風力発電の可能性があります。これらを使って洋上発電と風力発電をやることを提案しています。
(図80)
それから、太陽光の発電です。これは私が4月2日に描いた絵です。海があって、松林があって、ちょっとした集落があって、畑があって、国道があって、JRがあるという構造に浜通りはなっています。ここに畑が1キロ四方ぐらいありますので、この100ヘクタールがどのくらいのエネルギーとして使えるのか。しかも、この畑は今は放射線で汚染されていて使えないかもしれないけれども、20年、30年たってもう一回畑に戻せる状態にするということを考えて、この発電も、ハイポール型といって、少し高い3メートル以上のところで発電しようということを計画しています。さらに現在、もっと高いところで発電する方法も提案をしている最中です。
(図81)
洋上発電については、東大のK先生やI先生と協力して、今ここでどのくらいの可能性があるか。ここでは洋上風力を50キロの地域につくることと、そこまでの間で、右のような波力発電をつくるということが計画されています。その手前のところで小さな波力発電ができないのかということで、後でちょっとお見せしますが、鎮魂の古墳という提案をしています。
オーストリアのNPOが寄附をしてくれるということで、国際再生可能エネルギーセンターを南相馬につくろうという動きも出てきております。
(図82)

 

 

 

 

 

 

 



 これが鎮魂の古墳群です。最終的にどういう風景を私たち建築家は被災地に提案するべきかが課題ですね。私は鎮魂の古墳をつくることがこの地域には一番ふさわしいと思いました。この地域はもともと3世紀頃の古墳がたくさんあるところで、住む場所に適していたところです。横穴古墳もあり、山になった古墳も鹿島あたりにたくさんあります。そういう古墳のある地域に、現代の古墳をつくる。
ごみのがれきを埋めて、あわよくば放射性物質も埋めて、その上に古墳をつくり、その古墳の上に神社をつくり、上まで行って、海に流されてまだ浮いている人たちの霊を慰めるということを考えています。
今、長野県の戸隠村の人たちとオオヤマザクラを浜通りに植えようという運動もしていますので、こういう山の頂上に植えることもしたいなと思っています。
手前の離岸堤の外側には、もう1つの小さな波力発電として、船の櫂(かい)を利用して、波が来るたびに発電がされるようなものも提案しようとしています。
こういうふうにして新しい自然エネルギー、風力や太陽光を含めた再生可能エネルギーをふんだんに持って、しかも、山があって、その山が最終的には津波も防ぐことができる。といっても、高い山が連続しているだけではないので、人々はその山を迂回しながら海まで出ることができる。そういう古墳を今提案しようとしています。
(図83)
最後におさらいですが、一番最初に8つの基本理念というのがありました。山から海までの水系を軸としてLCCO2の小さなコンパクト都市をつくり、循環型社会を構築していこうということ。新築の建築、ストック社会の改修を通じてゼロカーボン建築に変えていこうということ。近代化社会の価値観から低炭素社会の価値観へ早く我々人間の意識が変わらなくてはいけないということ。地域性、歴史性、人間性というものを重要視して、スローライフで農のある豊かなエコライフスタイルをつくること。
身近にある垂直のエネルギーや都市の再生可能エネルギーでつくるスマートグリッドを構築すること。ミックスゾーニングといいますが、宅地と農地との境をなくそうとか、市街化調整区域、都市計画区域といった区域のゾーニングをやめていくこと。それから、多世帯のコミュニティで分かち合いの社会をつくり上げること。この8つの理念を非常に重要なこととして、今、建築学会でも、私たちは地球環境委員会で昨日もその議論をしていました。またアクションプラン委員会というのを東北大の吉野博先生たちとつくっていますが、そこでこの8つの理念を頭に置いて、今レポートを書いているといます。そこでもこの基本理念が全体の基本的な考え方となってきました。 私の今日の話はここで終わりにしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

 中村先生、どうもありがとうございました。
今日は、いろいろな事例を見せていただいて、建物も町も本当に美しいと思いました。浪江の町、南相馬の町も、いつか、今日見せていただいた事例のような町に生まれ変わることを祈りながら拝聴いたしました。どうもありがとうございました。
それでは、先生にもう一度拍手をお送りください。(拍手)
以上をもちまして本日のフォーラムを終了させていただきます。きょうはどうもありがとうございました。(了)

 


        10 11 12 13 14 15
copyright 2012 NIKKEN SEKKEI LTD All Rights Reserved