→日建グループへ





 PDF版はこちらです→ pdf


(図22)
建築の省エネルギーのことに関して言いますと、今までの環境建築は、環境工学の人たちの力によってできてきました。そして経産省の指導のもとに、さまざまな企業、メーカーが高効率の機材をつくることによってエネルギーを少なくする、省エネを図るというのがほとんどでした。しかし、私たち建築家はなかなか環境まで考えられませんでした。環境建築なんてやっても、そんなのはデザインに余り関係ないよというのが普通の考えでしたが、私たちはそうでなく、計画論的なCO2を削減する方法あるいは空間のデザインによってCO2を削減する方法を考えるべきだということを主張しています。幾つかの空間を外部と内部と両方に使い分ける。これは和光小学校でやっていますが、そういう考え方もあります。あるいはみなと保健所のように、ソーラーチムニーによって、自然のドラフト力を利用してつくるなど、幾つかの方法を考え始めています。
(図23)
これらを『101のヒント』という本にしようと、現在書き始めているところです。
(図24)
だんだん建築の話を多くしていきますが、「ゼロカーボン建築はどこまで可能か」という論点です。次の図は国交省が出した戦後からの住宅生産のグラフです。戦後、地方から東京に人々が集中してきましたが、その人たちはほとんど賃貸住宅でどこかに間借りするという形でした。この人たちにマイホームを提供するということを大きな目標として、1950年に住宅金融公庫、51年に公営住宅法、55年に日本住宅公団をつくって、年間約40万戸ぐらいの住宅をつくり続けました。そして1973年頃に、数では住宅総数が世帯総数を上回るという状態にまで回復しました。ただ、ここは皆さんもご存じのように、ウサギ小屋と揶揄された状態なのです。その後、50平米以下の住宅では小さ過ぎるということで、居住水準を上げることになっていきました。
それからは、見ていただくとわかるように、100万戸以上の住宅が40年もつくり続けられています。40年もこんなに多くの住宅がつくり続けられる国は世界中どこにもありません。まだそれが続いていくというところに問題があるのですが、これが景気を下支えしていることも確かですが、むなしいですね。実は必要だから作るのではなく、より良いものに買い替えてもらおうという需要だというのです。空き家が多くなるのも当然ですね。いずれにしろ、建築にしても住宅にしてもつくり続けるという問題を今我々は考えなくてはならないわけです。
2005年にJIA環境行動ラボでは、環境建築、エコハウスがどのくらいつくられたのかを調べてみました。1970年以降、2005年ぐらいまでの間の最初の頃はほとんどつくられておりません。それを実験の時代と言っていますが、私たちは、むしろ暗黒時代と言ったほうがいいと思っています。1960年代まではたくさんの環境建築ができていました。建築原論として、建築家が自然の力を利用した建築をつくるのは当たり前のことでした。
(図25)
日建設計の林昌二さんのつくられたパレスサイドビルが1966年にできています。同じ時期に日本設計の池田武邦さんが霞ヶ関ビルを学会とつくらましたが、これらは窓がほとんどあかないビルです。これを私たちは暗黒時代の始まりと言っています。そういう状態のところで、建築的なデザインは非常に美しくなりましたが、実はすべてが人工的なエネルギーでコントロールされる時代になってしまって、環境建築とはほど遠くなっていきました。
右下の吉村順三先生のNCRビルは二重の窓によって、空気の出入りを別の熱と交換するということまで含めてコントロールしている。こういうことがその当時も行われていたということであります。
(図26)
それを第1世代としまして、第2世代に、バブルの少し前です。プレアが始まった頃、新しいパッシブ型の環境建築が少しでき始めました。
第3世代の頃、1992年~99年、間には京都議定書も含まれますが、UIAのワーキンググループとして、JIAが事務局となって未来の建築(AOF、Architecture of the Future)WGを立ち上げました。そしてこれからの時代の建築はどうあるべきかという議論を世界の建築家たちと盛んに行い、1999年のUIA北京大会でGlocal Architetureの宣言をしました。この世代はUIAではサステナビリティーという理念がしっかりと定着した時期であります。
第4世代が2000年~2005年まで。ここで急激にエコハウスが増えています。これは太陽光に関する補助金が非常に多くついた時期です。これはトッピング型といっている要素技術を屋根の上に載せる時代だったわけです。
2006年以降は、第5世代として総合化の時代です。建築をエネルギーフローで設計しよう、総合評価をしよう。町へ出ていく面の戦略や量の戦略をたてる、そして改修の時代です。また、ラベリングをしっかりとすることによって、みんなにわかりやすくする。環境教育を関係者や子どもたちにしっかり普及させるなど、総合化の5項目を考える時代です。
(図27)

 

 

 

 

 

 



次の図はゼロカーボンの建築のつくり方を示しています。下の方から見ますと、再生可能エネルギーを導入しよう、高効率機器を入れましょう。このくらいは普通のエコハウスと言っているものですが、その前にパッシブ型の環境基本性能が9項目あり、これが大切なのです。私たちJIA環境行動ラボでは、2000年代に入ってからずっと研究したことです。この9項目をそれぞれしっかりつくり上げることによって、まず基本的なエネルギーの少ない建築をつくることができるのです。


   5     10 11 12 13 14 15
copyright 2012 NIKKEN SEKKEI LTD All Rights Reserved