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(図66)
稲山正弘さんと考えて、開き直って3寸5分のもので12メートルの空間をつくることにしました。まんじ固めという手法のひとつで、2まんじという方法を使って、木と木が合わさって、力を伝え合っていって、全体としてトラスのように4本が3本になり2本になり、グルグル回転して12メートルを支えるというやり方をしています。こういうやり方で新しい木造を考えることを私は第5世代と呼んでいます。製材のままを利用して、しかも金物を使わないで木と木がめり込んで力を伝え合うという方法です。これにはまだ開発されていないデザイン的な手法がたくさんあります。私は、ものつくり大学で学生たちとそういう研究をしましたが、今、工学院に移っても、まだ毎年新しい手法を学生たちと考えています。
(図67)
最後に、東日本大震災で私が今までやってきたことを少しお話しして終わりにしたいと思います。
今まで話してきました低炭素社会をどうつくるのかという問題。それから、人のコミュニティをどうやって存続させるのかということが今回の大震災の後、課題となりました。先ほど紹介していただいたように、私は1990年代から相双地域の、特に双葉町、原町、鹿島といった、地域の町の人たちと随分議論して、町の人たちの参加型でまちづくりをやってきました。
この方法が、今変な方向に行っているので気がかりですが、そういうことをやってきたことで、こういう事故が起こってから、私はすぐに彼らと連絡をとろうとしました。しかし、全然連絡がとれず、4月の初めになってやっと連絡がとれました。最初にお話ししたように、私はこの人たちに何ができるのかと考えた時、これまでエネルギーについて私たちが考えていなかったことに愕然としたわけです。それをもう一度きちっと、エネルギーの問題まで考えて、ここの人たちの土地にそれだけのエネルギーの可能性があることを証明して、それによってこの人たちが住んでいなくても土地に価値があること、そして、社会的には自然・再生可能エネルギーが原発に替わる可能性が十分にあることをしっかりと伝えたいと思っています。
まだ現在でも被害は進行形です。そして実際にFITによりエネルギーを創ろうと多くのファンドが入りますと、さまざまな問題が発生する危険があるのです。コミュニティの間でも水俣で起こったような悲劇が起こる危険性もまだこれからあるということで、それもお話をしているところです。
近代文明から低炭素社会型への価値観へという話は最初にいたしました。地域の価値。災害の記憶、コミュニティの力。所有権から利用権へという問題。循環型社会をどうつくるのか。環境基本性能を持ったゼロカーボン環境建築を被災したところでも、仮設住宅でもつくるべきだという話。エコライフスタイルをここで初めてつくれるかもしれない。原子力をしのぐ再生可能エネルギーの社会をつくり上げたい。復興住宅団地、復興工業団地。これは二地域居住ということで、特に浪江町で提案をしているものです。
(図68) 
私は南相馬市と浪江町の復興会議の有識者委員になっております。最後の議論を来週やる予定になっています。これは南相馬市に、先ほど言いました環境モデル都市の後の環境未来都市に応募してほしいとお願いして、環境未来都市に立候補したときの資料です。最終的にめでたく未来都市になりましたので、それをもとにしてさまざまな事業を進めていきたいと思っています。
これは、SPEEDIの記録です。浪江は2つの地区があり、その間に請戸川の谷があって、大柿ダムがあります。そのあたりが大変線量の多いところになっています。この浪江の人たちは国から見捨てられたと感じているのはもっともなことで、彼らが逃げるときに、20キロのところから外に逃げろと言われただけで、SPEEDIのことが知らされてなかったために一番線量の高いところに逃げたわけです。しかも、浪江の町から津島というところに行くまでに、普通だと30分ぐらいで行けるんですが、7時間もかかって、渋滞のままノロノロ進みながら車で1晩かかって行っています。さらにそこから3カ所ぐらい移って、今は二本松まで行っています。その間にどれだけの線量を浴びたかということを考えますと、大変な人災だと彼ら自身も憤っています。私も本当にそう思います。その間に一切情報は与えられてなかったために、彼らは20キロから外に逃げれば安全だということだけを信じて逃げたんです。ところが、今わかっているのは、浪江に国道と鉄道の駅がありますが、海岸のところは今でも0.5マイクロシーベルト以下の地域で、そこに残っていれば彼らは助かっていたということもわかっているわけです。
これから子どもたちの甲状腺がんとかいうことが出てきますが、そういうことに対して、もっと深刻な形で国あるいは東電へ賠償請求するという事態が町村を挙げて出てくることが予測されています。
(図69)

 

 

 

 

 

 

 


そういう中で私がつくりましたのは、浜通りの復興計画として、このぐらいのエネルギーがつくれるということを提案しています。これだけで約1600万キロワットの自然・再生可能エネルギーのポテンシャルがあります。赤い四角が1キロ四方で5万キロワットの太陽光発電ができます。


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