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石原 どうもありがとうございました。今年から、シンプルな講演会をやめまして、少し趣向を変えてやってくれという話になっていますので、間に、私と小林先生の会話を挟んで後半に移りたいと思います。
小林先生が現在取り組まれていることを紹介する上でも次の質問をしたいと思います。前半でご紹介のあった第1のモデルについてですが、日本は標準化することが苦手な中で、第1のモデルにどう取り組んでいくかという課題があるわけです。小林先生は、今ISO55000、アセットマネジメント国際規格の年内発効に向けて中心的な役割を担って、取り組みを進めておられます。小林先生がそうした取り組みにかかわるようになったきっかけ、そして、それが標準化になかなかうまく対応できていない日本において受け入れられるのか、あるいは都市のマネジメント、都市インフラのマネジメントにそれが適用されていくのかどうか、そのあたりについて、お話を伺いたいと思います。
小林 アセットマネジメント、この分野は、日本は世界に完全に水をあけられています。勝負はついていて負けてしまっています。世界中でデファクトの標準が凌駕しています。舗装マネジメントで150カ国以上がHDM-4を省令もしくは政令で規定して使っています。日本の舗装マネジメントが出ていける国は1つもない。
この標準化はまだ計算ソフトウエアの標準化ですが、その次の標準はマネジメントの標準化です。英国は2年前の12月にISO55000でマネジメントの標準化をするということを表明しました。ところが、この国は全然できていない。日本がここでどれだけ頑張れるか。どう勝ち抜いていけるかというのが大きな問題点です。それは後半の第2のモデルでやるしかないと私は思っています。
ただ、この国はISOというのを余り好きではないんですね。ISO14000にしてもすこぶる評判が悪い。これはこの国の認証のあり方、ISOのあり方自体にも問題があることは事実です。もう1つ、そういうISOがなくても現場のマネジメントが動いていっている。欧米でなぜISOを言うのかというと、役に立つからです。あれがないとなかなか動かない。そこの違いがある。日本はそういうものがなくても動く。それはやはり現場力なんですね。マニュアルにしなくても現場が動くという強みがある。その現場力というものを生かして、海外に持っていくといいビジネスができると思うんですが、一旦日本の外に出ると、日本のようには動かない。やはり何か書いたものにしていかないといけない。

日本の現場力を海外との協力のもとでやって、その地域に役に立つような標準化、ローカル化ということが可能だと私は思っています。それがこの国のインフラ輸出の1つの戦略になるだろうと思います。これはまた第2のモデルの中でご説明したいと思います。
石原 もう1つ質問をさせていただきたいと思います。今、発展途上国と言われる国がどんどん中流国化していくというご説明がありました。そうした中で、問題になってくるのが貧富の差、貧困問題だろうかと思います。日本の中を見てみましても、高齢化の問題が課題と言われていますが、私自身は貧困問題のほうが実を言うと大きな問題ではないかと考えているわけです。このあたりが第1のビジネスで対応できない中で、第2のビジネス、いわゆるハイコンテクスト型のビジネスで対応することになっていこうかと思います。そのようなことでよろしいでしょうか。
小林先生 これもなかなか難しい問題です。貧困の問題というのは20世紀では国際問題だった。南北問題で国際協力の対象として貧困が俎上に乗っていたということですが、全部中流国になってくると、貧困問題は国内問題になってきます。国内問題として解決していかざるを得ない。その中で、当事国の政府が果たす役割は非常に大きい。それと同時に、マーケットで貧困の問題を解決していかざるを得ないところが出てくる。そこにある意味でのビジネスのチャンスがあると思います。
「か・き・く・け・こ ビジネス」、観光(レジャー、レクリエーション)、教育、暮らし、健康、コミュニケーション。この分野のビジネスの展開、この5つを支えるための装置が要る。インフラが要る。装置がなくてそれだけのサービスを売るわけにはいかない。そういうビジネスを支える装置、そういうシステムとしてどれだけこのマーケットをつくれるかどうか。それがひいては相手国の貧困問題、人々の暮らしに貢献していく。そういう青写真をどの程度描けるかにかかってくると思うんです。これは面白いけれども、なかなか難しい課題で、しかし、やらないといけない重要な課題だと思います。
石原 大都市部の貧困の問題、それに対応する都市インフラの整備、また地方都市における問題、そうしたものに対応する第2のビジネスという内容で後半はご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

 

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