日本の都市計画にも大変興味を持っていただきまして、いろいろと意見交換させていただきました。先ほど申し上げましたように、特別講演もやっていただきました。やはりソウルから東京を見て、東京の都市計画はどうなっているんだろうというのは当然興味があるとのことで、東京で誰かと話をしたいなという投げかけをいただきました。それはいいと思いました。当局者のトップ同士が都市政策についてのお話を闘わせていただくのはいいことだと思って、私もいろいろ考えました。
これは比較的最近、シンガポールでも同じことが起きまして、シンガポールの都市再開発局のＣＥＯの方と話をしていて非常に強く感じたことです。行政の当局者の方が一人称で専門家としてお話しになる。日本では、無責任だとか能力がないとかいうつもりは全くないんですが、リーダーとなる当局の方がその方の名前で顔を出して国際的に情報をやりとりするという場面になかなか出ていかない。今回のシンガポールのことで強く思っていました。
李博士と対面してどなたがお話しするんだろうというのは、そのときは本当を言うとちょっと苦労いたしました。結局当時の東京都の只腰技監に会っていただいて、それで非常に有意義な人間関係ができたと思います。日本以外の国ではそういう行政の場面でリーダーシップを持ってやっていらっしゃる専門家が目立つなと私の目からは思います。どっちがいいのかわかりませんが、これから都市が個性化の時代ということであるならば、そういう専門家のキャラクターで引っ張っていくことがあってもいいのかなと、生意気にも思っている次第で、行政の方がこちらにいらっしゃったら、勘弁してください。
２０３０年戦略ということで今日はすばらしいビジョナリーなプロジェクトのご紹介をいただきました。よく考えてみると、東京も東京以外の日本の大都市も持っている課題の共通性が非常に高いと思います。韓国ほど民間に比べて行政の力が卓越していない。少し事情が違うという面があると思いますが、２０３０年に向けてソウルがお考えになっていることは、大変参考になるのではないかなと聞いておりました。
一方、これからの政治情勢などいろいろなことで、日本はひょっとしたら進んでいるといいますか、政治的な混迷度がより深くなっているということも言えるかもしれません。日本のほうが経験をしているという面もあるかもしれませんので、そういう意味でも、博士のようなお立場で、これから行政に戻られるおつもりがあるかどうかまだお聞きしておりませんが、韓国と日本の都市政策の意見交換をもっと深めながら進めていく上で大変貴重なお人だと思っております。今後ともどうぞよろしくご指導のほどをお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
谷　それでは、引き続き、先生にご質問のある方がいらっしゃれば。
新井（日本大学理工学部客員教授）　もともと行政におりまして、個人名で話をするのはけしからんという話はそのとおりだと思いました。今日はいい話を久しぶりに聞かせていただきました。ソウルの持っているエネルギーというんでしょうか、強さ、その方向を教えてもらいまして、本当にありがとうございました。
質問は、ソウルは風水に基づいて立地したということを、そうなのかと思ってお聞きしました。そして２０３０年を目指して新しい計画の説明を伺いました。これも一番初めにおっしゃった風水とつながっているのか、だとしたら風水というのはどういうことなのか、もう少し教えていただければなと思います。
李　質問、ありがとうございます。朝鮮の開国の時代につくられた風水を今も守ることは無理があると思います。しかし、今、都市計画という名前でソウルを変えていくには風水は外すことはできないと思っています。風水という名前では呼べないかもしれませんが、自然とうまくつき合えるような都市をつくるということが、今の時代の風水ではないか。開発時代には短い時間にたくさんのインフラをつくらなければいけないということで、破壊してもしようがないという認識もあったと思います。今は開発のスピードを遅くして、周辺を見れるような余裕ができて、そのようなことを考える時期になった。開発時代にたくさんやってきた開発は、風水の面では逆に困難な時代だったのではないかなと思うんです。それに比べますと、１つのルールをつくって自然とつき合うという形をつくったのは今の時代の新しい風水のとり方だと認識しています。
谷　ほかにどなたかいらっしゃいますか。しばらく先生がいてくださると思いますので、それでは、これで講演会は終了させていただきます。先生に盛大な拍手をお送りください。（拍手）　以上をもちまして本日のフォーラムを終了させていただきます。（了）