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岸井 私自身は、そういう上位計画があったということを承知していません。もちろん前から、外側の環状線の中はなるべく車を入れないようにという大きなプランがありましたが、アーバンコアを取り上げた上位計画を私は見ていない。アーバンコアもとりあえずまだ1本なんですが、イメージとしてはこういうところにそれぞれの小さな広場がつながっていたりして、そこに行くと、ラージ渋谷ぐらいまでの情報が手に入るぐらいの仕掛けが本当は要るのではないかなと。今、ヒカリエの円柱は、中に入ると、はっきり言うとつまらない。あれは半公共空間なので、広告やさまざまなものを今のところ規制しているわけですよね。それならエリマネを組織してちゃんと管理して、みんなが必要な情報をもっとあそこに出していくようにしないといけない。それと同時に、あれから横へ出ていくつながりをもっとつくっていくことが多分これから必要なんだろうと思っています。
大松 そういった公共空間の使われ方などについて岸井先生が話しながら合図をされていましたが、会場にきていただいた渋谷区の須藤さん、突然のご指名で申しわけありませんが、渋谷区さんのほうから、今後の考え方とか、もしあればお願いします。
須藤(渋谷区都市整備部) 今のピンポイントのお答えではないんですが、今までのお2方の先生のお話を伺って、行政としてこれから何をやっていくかということで申し上げれば、まさに、こんなによくなるんだよと。内藤先生に、これが全部うまくいけば勝てるとおっしゃっていただいた情報を発信すると言い続けているんですが、これをいかに正確に、よくなるんだよということを、区民、都民、世界に向かって発信する方法、内容を早く詰めて発信していきたいと思っているところです。それには先ほど申しました屋外広告物の話、それも情報発信の1つとして、エリアマネジメント協議会が立ち上がったということもありますが、行政がどうしても手をつけなくてはいけない部分もありますから、東京都さんや区民とも協議しながら早く進めていきたいと思っています。決意表明みたいになりましたが。
大松 また、デザイン会議のシステムの話に戻りたいと思います。今回、ああいう形で非常にオープンにデザインアドバイザーを入れてデザイン会議の場で、かなり多くの非常に難解なデザインをオープンにして議論をしてきていただいたわけです。1つ残念だったかなという気がしていますのは、他の街区のデザインアドバイザーが意見を言う場が余りなかった。駅街区のデザインに対して、手塚さんや小嶋さんが意見を言う場など、それぞれ同じ時期に同じようにでき上がってくるデザインをやるに当たって、事業者間の都合もあって実現できなかったところがありますが、そのあたりの先生方の印象としては、本来そういう場があったほうがいいのか、そこまでやるとかえって混乱するのか、その辺いかがでしょうか。
内藤 多分、日建がいないところで。(笑)建築家というのは狭いコミュニティですし、パーティーで会ったり、いろんなことがありますので、隣でやっていることはみんな知っていると思います。
都市計画、まちづくりというのは表わざと裏わざがあるんですよ。表わざは委員会。でも、それは半分で、実はヒューマンコンタクトとコミュニケーション。水面下の見えないところで大事なことは決まってくる。僕は、建築家の連中はそれぞれ隣で何をやっているのか、よくよく知った上でやってきたと思っています。
大松 建築のほうは大分片がついてきて、いよいよ公共空間のデザインがこれからかなり注目を浴びてくると思います。今日は、公共空間のデザインそのものについてのお話は余りなくて、いわゆるアーバンコアや、建築物の中の公共的な部分のお話が多かったわけです。今後公共空間のデザイン調整みたいなものについてのお考えなどあれば、できれば岸井先生のほうからお話を伺えますでしょうか。
岸井 先ほど、広場のデザインの詳細はこれからですと言ったので、公共空間のデザインはこれからと思われたかもしれないですが、僕はそれは違うと思います。公共空間のデザインはどういうふうに配置するかというレイアウトから始まるわけで、ここまでの過程こそ、ある意味では公共空間のデザインで非常に重要だったところです。その上でさらにもっと詰めなければいけないところがたくさんあるのは事実で、今回の場合は、それを建築物ができてくると同時にやらなければいけない。
建築家が2人いてなかなか話が合わないかもわからない、あるいは遠慮して言わないかもわからない。遠慮しなくて俺がやると言ってもいいんです。ただし、今は建築物もつないで全体のまちにしようとしている。つなぐところをどちらかの建築家にやらせると、正直言ってなかなかうまくいかないんですよ。そういう懸念を大変強く持っている。そういうところはやはり内藤先生にやっていただくしかない。
大松 先ほどの橋のような。
岸井 そういうつなぎのところは、内藤先生のような両方のことがちゃんとわかって、何でつなぐか、全体のバランスを見ながらできる人でないといけない。建築の人はみんな、どうしても自分の中の一部にしたがるんです。それは違うと僕は思うんです。だから、そんな人には絶対やらせない。公共空間、これからの広場の話などは、趣味、嗜好だけで決まってはいけないと思うんです。いろいろな人の意見も聞かなければいけないし、そのプロセス自身をまちの活性化につなげなければいけないので、デザインという意味の次のフェーズとしては、色、形を決めるという以上にプロセスを決めることが大事だと思っています。
内藤 公共空間の質に関しては、岸井先生が言うように、もっとみんな真剣に議論しないと味気ないものになってしまうような気がします。私の経験では、計画的に余りやり過ぎると、街区の設計もそうですが、計画全体が「乾いてくる」感じがあるんです。乾き物になってくる。そうすると、何となく人が感情移入しにくいようなものになる。皆さんご存じのように、ニュータウンの広場のようになる。戦後の都市計画は、建築も含めてそういうふうに捉えてこなかったけれど、計画には「湿り気」が必要なんですね。今のハチ公前広場というのは十分湿っていると思うんです。あの湿り気が何となくいい。スパッと鮮やかに解決して、メディアに乗って1年もたったらみんな忘れるという話ではなくて、あそこはどういう場所だったらいいのかということをみんなで議論して、まさしく広場こそが渋谷の文化を受けとめる場所であってほしいと思います。これはなかなか難しいですね。時間がありますので、これから10年、15年で結論をゆっくり出していく場所かもしれないと思っています。
大松 最後に時間のお話が出てきました。確かに、これから渋谷が完成するまで15年、20年、時間がかかる。今は各開発が一斉に都市計画を出そうという時期ですので、かなり密度の高い時間を協議、調整に費やして、そこにエネルギーを投入できているわけですが、これから10年、15年、20年というのは、そういう意味で、乾いたと先生がおっしゃいましたが、少し密度感の薄い時間が過ぎていく。街区についても随分と意欲的なデザインになってきています。ああいうものが本当に15年後に実現していくのかどうかというのは、何らかの形で、そこをマネジメントしていくようなプロセスが要るという気もしています。そのあたり何かアイデアなりお考えがあれば教えていただければと思いますが、いかがでしょうか。
岸井 既にエリアマネジメントの組織というのが駅街区に関してはでき上がったんです。これも実はかなり強引に、とにかくエリアマネジメント組織をつくれと、それぐらいの書きっぷりでペーパーを事業者の方に配った。それがないと、先に絶対に行かせないというぐらいの言いっぷりでつくっていただいた。
相直が完成した。人々がワッーと変化し出した。使い勝手悪い、どこに行ったらいいかわからない、それ見たことか。社長も怒るわ。急にみんなでやらないといけないとなってきました。エリアマネジメントにとって今はそういう状態なんです。まだ本当によちよち歩き。その次はもっと周りとの関係をつながなければいけないと思うんです。駅がひとり勝ちする世界は、渋谷としてもあまりうまくない。周りと今のこのエネルギーとをいかにつなぐのかということをこの10年間真剣にやらないといけない。渋谷ができ上がるころにリニアは来てしまいますよ。先ほど品川は目をつぶっていたと言いましたが、つぶっていたわけではなくて、向こうは向こうで動こうとしています。国内でもそういう競争の中でやっているということを、我々も含めて関係者が意識して、今までかけてきたエネルギーがとまらないようにしなければいけないと思います。また、外からの刺激を常にいただくような仕掛けにしないといけないのではないか。渋谷はこれで計画が決まったから後はやればいいんですよ、という話ではない。それだと渋谷はまただめになってしまう、こう思っています。
内藤 エリアマネジメント分科会というのを作るように進言したのは私です。そこから上の委員会に話を上げてくれと基盤部会で何回も言っていたんですが、なかなか上がってこない。それで、実は「潰せ」と言ったんです。何をやっていたかというと、それぞれの事業者が権利調整をやっているだけ。それも分科会の機能の一部かもしれないですが、そんなものはエリアマネジメントの本質ではない。そんなことをやるために部会をぶら下げているのだったら潰してくれと渋谷区にもお願いをした。委員会でも言いました。ようやく慌てて、これからマネジメントするのにどうしたらいいかということを議論してもらっているはずです。ここのところ余り聞こえてこないので、また同じようなことをやっているかもしれない。ただ、先ほど景観審の計画部会の話をしましたが、あそこで承認して、都市計画決定に移っていくわけですが、あそこで承認した内容の中に、先ほどお見せしましたが、渋谷は動的な開発計画でいきましょうとあります。その中にマネジメントも含まれているんです。だから、一応言ってありますが、もしそこのところをほっておくのだったら、もう一度行政手続を初めに戻してくださいという話はおどし文句で言っています。実は東京都の幹部にも、そういう話をしてもいいよねと言ったら、大いにしてくださいと言っていましたので、計画部会に出したものがただの紙だったら、行政手続のプロセスをもう一回戻ってもらうと考えてもらってもいいぐらいのことだと思っています。エリアマネジメントを本当に真剣にやってもらいたい。難しい問題が山積みです。
広場のエリアマネジメントは、まだきっちりこの国でなされたことがないんです。行政上、広場というのは定義されていないので、やられている前例はないと思うんです。これから東京駅前の100メートル角の広場ができますが、あれは一応大丸有協議会でやって、JRが中心になって管理することになっています。そういう管理主体と協議会という体制を渋谷方式で編み出さなければいけないですね。恐らく大丸有のようにはいかないと思うんです。発明しなければいけない。そのためのエリアマネジメント協議会であってほしいと思っています。
大松 我々日建設計も引き続き、そういうことをきちんと実現できるように力を尽くしていきたいと思っています。また、先生方に引き続きお力添え、ご支援をいただきたいと思います。
時間もちょうど5時になりましたので、きょうのNSRIフォーラムを終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
木村 以上をもちまして本日のフォーラムは終了とさせていただきます。

 

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