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(図1)
今回、渋谷駅がこのような大規模な再開発を始めることになったのは、2001年5月に地下鉄13号線、現在の副都心線の都市計画決定がされ、渋谷駅にターミナルが来るというルートが決定したということが大きな契機でした。翌年1月には、東急東横線と相互直通運転することを東急電鉄が発表しました。
これは昔の渋谷駅です。ここにあった東横線の渋谷駅が明治通りの下に移ることになります。これまで東横線で来たお客さんは必ず渋谷で乗りかえてくれていたわけですが、直通運転が始まると、このお客さんたちは渋谷に魅力がなければそのまま原宿や新宿に流れてしまうという意味で、渋谷のまちにとって非常に大きな危機感を持つ契機になったわけです。
(図2)
また一方、物理的には東横線の渋谷駅の場所が空くわけですから、ここを利用して大きな再開発の拠点ができるのではないかというアイデアも出てきました。
この機会を最大限に生かそうと、2005年の6月には、都市再生緊急整備地域に指定されています。その間にも色々な検討が行われてきたわけですが、こういった検討の1つの決着点として緊急整備地域に指定され、このエリアで都市再生特別地区の提案ができるようになったわけです。
緊急整備地域の指定方針の中でも、渋谷については、駅施設の機能更新と再編ということが大きなテーマになっています。それを契機に魅力ある商業・業務・文化交流機能などの充実を図っていこうということが記されています。
(図3)
ところが、渋谷駅の周りは、地形が非常に複雑な上、首都高速道路や鉄道などでまちが大きく分断されていて、駅周辺の地区計画は5つの区域に分かれています。それだけ地区が細分化されて、それぞれの地区ごとに魅力が違うと言えばそうなんですが、一体的にまちづくりが検討されることが余りなかったという状況でした。
(図4)
緊急整備地域に指定もされ、まちづくりを一体的に考えていこうということで、「渋谷駅中心地区まちづくりガイドライン」というものの検討が始まり、2007年の9月には一旦取りまとまりました。
今日お話しいただく両先生は、この頃から渋谷駅のまちづくりにご参加され、ご指導をずっといただいてきています。
ここでは、渋谷駅の中心地区のアメーバ状に囲ったエリアにある大きな5つの再開発、これを軸にして、その周りの地区のあり方を考えていこうということで検討されてきています。
(図5)
こういったまちづくりを検討してきたプロセスの成果として、鉄道駅の改良のあり方が鉄道事業者間でおおむね合意形成がなされたのがこの頃です。
左側が従前の渋谷駅の駅構造、右がこれから変わっていく駅構造になっています。ポイントの1つは、東横線が相互直通になること、それに伴って銀座線をヒカリエのほう、明治通りの上空に移動します。JRの上から銀座線が抜けたことを受けて、JRの埼京線が山手線とほぼ並行になるようなレイアウト変更を行っていこうということです。こういった非常に大規模な鉄道改良についての計画的なレベルの合意形成がおおむね2007年ごろできてきました。

(図6)
そうした鉄道事業者間の合意形成がなされたことを受けて2007年10月にはヒカリエの都市再生特別地区の提案がなされました。こちらは銀座線の移設を将来含みにした非常に大規模な再開発になっています。
(図7)
翌年の2008年6月には、鉄道改良を軸にした渋谷駅街区基盤整備の方針というものが取りまとめられています。こちらが従前の渋谷駅、先ほどご説明いたしましたが、鉄道がこのように変わる。それに合わせて駅前広場もいろいろ整備をしていこう。その上空でのネットワークも拡充していこう。まちづくりガイドラインの考え方を実際の基盤の計画に落とし込んだものになっています。
(図8)


 その翌年、2009年に都市基盤施設の都市計画決定がされました。これを受けて、具体的に基盤整備をするための区画整理事業の認可が2010年10月に行われています。左側が従前宅地、現在もこういう宅地形状ですが、それをこういう形に宅地の形状を大きく変えます。これによって駅ビルを建てる場所が大きく変わってくるわけです。逆に言うと、公共空間のあり方、位置というものも大きく変わってきます。現在認可を受けてすでに具体的に基盤整備事業が始まっているという状況です。

(図9)
そうした基盤の整備がなされていくことを受けて、いよいよ本格的に、ヒカリエ以外の再開発が動いていきます。その対応のために2011年1月に、渋谷駅中心地区のデザイン会議というものを渋谷区が設置しました。その2カ月後、2011年3月にほぼ同時期に検討が進んでおりましたが、「まちづくりガイドライン2007」を具体的に深度化した「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」というものが公開されています。
(図10)
この「渋谷駅中心地区デザイン会議」というものは、これからいよいよ本格的に大規模建物の設計が始まり、都市基盤施設についても具体的な整備が始まっていくことを受けて、「渋谷駅中心地区まちづくり指針」の考え方に基づいて、具体的にデザインがきちんと進められていくように協議、調整していく場として設置されています。
(図11)
2012年4月、昨年の春にはヒカリエが無事開業し、その後、東横線も相互直通運転が開始されて現在に至っています。その間、今年の初めに、渋谷駅の駅街区も、都市再生特区の提案がなされ、都市計画決定されています。こういった都市計画各事業が進んでいくことをずっとこれまで岸井先生と内藤先生が調整をされてきましたので、この後の話については、まずは岸井先生から、まちづくり指針を中心とした都市デザインのフレームのお話、その後、内藤先生に建築デザインの調整についてお話をいただきたいと考えています。
それでは、岸井先生、よろしくお願いいたします。

 

 

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