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(図32)
「安全・安心なまち」という意味では、当然、老朽施設の更新が必要です。また、雨に関しても対策を施したい。西口のほうには下水管の太いのが入っていますので安心ですが、東口のほうはない。そこで、駅前広場の地下に雨水貯留槽をつくることにしました。最初の頃に工事をしていたのは、全部雨水貯留槽の工事であります。
そのほか、246は拡幅されますし、バスも従来よりははるかに乗りやすくなる。渋谷の地下街もいずれ更新をしなければいけないと思っています。これは今後の課題の1つで、まだできてないということであります。
「渋谷らしさの強化」という意味においては、ハチ公前広場をもっと魅力あるものにしたい。いろいろなところに小さな広場ができます。これをそれぞれの管理者が自分のために使っていては何をやっているかわからない。そこで、全ての公共貢献の空間は、エリアマネジメント組織で一括管理をしてほしいということをお願いしました。つまり、JR駅の上の広場であってもそれはJRさんのものではない。みんなのための広場として公共貢献に出している以上、エリアマネジメントとして全体で管理をしましょう、そういう発想でお願いをしています。それによって渋谷全体の渋谷らしい演出がもっと可能になるのではないかと考えたわけであります。
周辺地域の整備はまだこれからというところです。
エリアマネジメントの組織もでき、SHIBUYA1000というイベントが数年続きました。これも、内藤先生が組織された若い人たちが渋谷のまちで少し元気を出そうというので、あちこちのあいている空間を利用させていただきながら、イベントをやっています。こんなことをやりながら、ここまでに至っているということです。その中で、これからご紹介があります駅周辺の建物のデザインの議論が本格化してくるということです。
(図33)
その中で、1つだけあらかじめ紹介しますのは、結節の立体化に対する対応です。副都心線に相直する東横線はかなり下に潜りました。銀座線は相変わらず上にいます。7階ぐらいの差があるものをどうやって結ぶのかということが大変大きな課題です。そこで、縦方向に人々が安全に移動できるシャフトが要るだろう。このシャフトはただ交通機能だけではないのではないか。我々は、それをアーバンコアと名づけて、人々の動きが見える、そこへ行けば渋谷が感じられる、そういうものにしたい。それが開発の中で幾つかでき上がることが、ほかにはない渋谷らしさを演出することになるのではないかということを考えました。
109の円柱形がガラスになっているようなものだと思ってもらってもいいんです。人々が動いているのが見える。人々の動きが見えて、そこに行けば渋谷が把握できる。安全に、下から上まで移動もできる。
(図34)
そんなものを開発とともに幾つかつくっていけないだろうかということで、ヒカリエに関しましても、円柱形のところについてはその第1号として、ちょっと無理していれていただきました。
これからのさまざまな開発においても、このとおりやるというわけではないですが、そういう考え方をそれぞれの開発の中で生かしていただくということをずっとお願いしています。
(図35)
これから動いてくる駅街区あるいは西側の道玄坂のプラザ街区、南側の東横線の跡地、さらには、その西側の再開発(桜丘地区と呼んでいます)部分も含めて、今のようなことを守っていただいて、何となく渋谷らしい空間をつくっていけないか。それも、規模が結構大きいので、設計がすべて日建設計というのもつまらないのではないか。素直にみんなそう思ったわけです。それを何とかしなければいけないので、いろいろ工夫をしました。
(図36)
開発プロセスは何ステップかあるだろうなと思っておりましたし、今もそう思っています。副都心線が相互直通運転を開始しました。ヒカリエもオープンしました。そこが第1期かもしれません。銀座線の駅を今移しつつありますが、あわせて東口に超高層タワーが出来てきます。2020年にオリンピックが来ることが決まりましたので、当然それに向かって議論が進むであろうと思います。
さらには、同時ぐらいに道玄坂街区と南街区が進みますが、その後に多分桜丘も出てくる。そうすると、今は余りつながっていない246の南側も東西につながることができて、より渋谷らしい空間が広がっていくのではないかということを期待しています。

(図37)
ただ、課題がまだ残っています。真ん中辺では、渋谷の地下街の更新。東横デパートがなくなるので、地下街にとって大変大きな問題を抱えます。あの部分は地表からかなり浅いところにありますので、そういう意味も含めて地下街の更新を考えるべき時ではないかと思っています。
さらには、南口に改札口ができると、その関連で、鉄道施設の動きが出てきます。そうすると、今日考えているさまざまな基盤施設のあり方も、もう一度考え直す機会が生まれるかもしれません。
それから、せっかく広がるハチ公前広場のようなところについて、具体的にどのようにしようかという詳細デザインはこれからです。風の道は十分ではないかもしれませんが、環境性能の高い広場をつくっていくことは課題であろうと思っています。何よりも、2020年、世界に渋谷を発信するためには、渋谷の開発の過程(プロセス)自身を見ていただくということは絶対に必要だろうと思っていますので、エリアマネジメント組織の中で、インフォボックスを早くつくろうということをお願いしているところです。
駅街区の外の、宮益坂や道玄坂といったところで、歩道をもっと広くできないか。今は駐車帯があるけれど、特定の車がとまっているケースも多いので、そんなことだったら、いっそ歩道を広くしたらいいのではないかということも考えています。沿道を開発しなければ、まちとして魅力はなくなるだろう。東急本店エリアもいろいろやってきましたが、そこと駅前街区とのつながりはどうするのか。一応、駅街区を中心にしたエリアマネジメント組織はできましたが、その外側の地域とはまだつながっていません。外側の地域とつながって、外側にもはっきりした魅力的な歩行者の空間をつくるためには、まちの中にパラパラとある駐車場の再整理をする必要があるということも考えなければいけません。
さらに、外側を見ると、NHKの建て替え問題などが一時期騒がれました。区役所も建て替えするとかしないとか言っています。2020年の代々木体育館をどうするんだ。青山には余裕の土地がある。国連大学も移ってしまうらしい。まだまだ周りは動き出す。そういうところと重ねて、渋谷の文化創造発信の仕組みをつくっていく必要がある。この地域は居住をしていただくにはとてもいい地域だと思っていますので、国際的な人々が安心して住めるように、病院、学校などもっと強化する必要があるのではないかと思っています。
私のほうは専ら基盤のことをお手伝いしてまいりました。大きなデザインのガイドラインと渋谷のガイドラインというのは同じ戦略です。公共空間あるいは交通施設を軸に考えてきた全体像の中で、開発の絵が具体的に動いてきました。その絵をさらに質の高いものにするためにさまざまな仕組みがありますが、その1つが内藤先生が主導されていたデザイン会議であると思っています。その中身につきましては、内藤先生のほうからご紹介いただきたいと思います。

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