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(図41) 
これは先ほど岸井先生が説明をされた図です。新宿もありますし、これからリニアの受け口として品川の開発もあります。幾つもあるんですが、一応それらは見ないことにする。大丸有がまちづくり協議会をつくって手がたくやってきて1つの形になってきています。僕は、あれはあれで大したものだと思っています。大丸有がビジネスの発信拠点だとすると、渋谷は生活文化の発信拠点と考えようということで、こういう図になりました。おおむね間違ってはいないと思っています。新宿の目鼻がつくのはもう少し先ですし、新宿はどんどんわかりにくくなってきている。かつて超高層街区をつくりましたが、あそこが本気でビジネスの拠点になってきているかというと、そういう気もしない。渋谷のほうが若者に愛されて、そういう意味では支持者がはっきりしている。
 田舎から高校生ぐらいが出てくると丸の内には行かない。ディズニーランドに行くか、渋谷の交差点に立つかです。渋谷の計画をやっているので、私も時たま渋谷の交差点に立ちます。あるとき、高校2年生か3年生か、学校をサボってこんなところで何しているのかなと思うのですが、2人連れの女の子が、渋谷の交差点の手前に立って、「これが渋谷だよね」と言っている。そういう場所なんです。この活力がなくなるような開発をやったら罰が当たると僕は思うんです。若者からの支持がなくなったら渋谷はおしまいです。もちろん、渋谷の飲み屋街には疲れたおじさんも行く。丸の内だとちょっとそういうわけにいかないですね。あまり弱音を吐けない、醜態をさらせない。渋谷だったら何でもありだという感じがあります。
(図42)
これを東京都の景観審議会というところに、都市計画手続きに入る前に出さなければいけないんです。景観審の座長は岸井さんで、その手前に計画部会というのがあって、私はそこのメンバーです。具体的な計画内容については、この計画部会で審議することになっています。
大丸有と渋谷を比較して出したらどうでしょうかという話をして、その時に事業者の方に出していただいたのがこの下のほうに書いてある図です。大丸有は碁盤目になっているのでキッチリと計画を立ててスタティックにつくっていく。首都の中心の開発としてふさわしい、かたい開発。それに対して渋谷は谷の中心に向かって放射状に地域が形成されていて、都市構造としても対照的です。キチンと整理された計画はやりにくい。何よりも強調したのは、それぞれの街区がかなりプロセスを追ってでき上がってきますので、動的な計画である、プロセス型の計画であるということです。委員の皆さんもそういう認識で、渋谷はデザイン会議や基盤部会でしっかりやって、その動的なプロセスを管理しているという前提で、それぞれの街区を見てくださいということをお願いして、今のところ比較的順調に進んでいます。
(図43)
これは大丸有と渋谷を比べて景観審に出した図です。この中でADを付けてやっていくということもプレゼンテーションしてもらいました。ですから、景観審を通す前提条件としてADが含まれているわけです。模型のこっち方に立っているのが隈研吾さん、こちらに妹島和世さんがいます。彼らは駅街区のADです。そのほかに駅南街区は小嶋一浩さん、桜ヶ丘街区は古屋誠章さん、道玄坂一丁目街区は手塚貴治さん。彼らにも出てきてもらって、いろいろプレゼンテーションを繰り返しながら行政手続の関所を越えてきたという経緯があります。
(図44)
そもそもアーバンコアを何で言い出したかということを申し上げますと、もともとこの渋谷の谷地形を利用して、歩道系の水平ネットワークをつくるべきだというのが森地先生の考え方でした。基本的にはペデストリアンデッキですが、その水平ネットワークを今度は縦につながないといけない。縦につなぐ部分に名前を付けた方がよいと考えました。それで、アーバンコアと銘々しました。まず言葉をつくったわけです。各事業者からは、アーバンコアを定義してくださいと要望されましたが、「これは都市施設ですから、基本的には公共貢献メニューの中に入るので、それを定義してくれないと困ります」ということでしたが、頑として定義しませんでした。それはそれぞれの事業者が考えることで、事業者がベストと思うアーバンコアを提案してください、そう言ってきました。
アーバンコアというのをなぜ無理してやったかというと、先ほど岸井先生が説明してくださいましたヒカリエの手前のところに出てきているものがありますね。あれは設計は日建です。初めて出来上がってくるものですから、みんな見当がつかない。アーバンコアって大体このあたりだよねと、岸井さんと僕で赤鉛筆で描きました。強引だったと思います。
だけど、その心はどこにあるかというと、僕の知る限り、巨大開発あるいは超高層の建物はコアを内側に抱え込むんです。人の流れが余り表に出てこない。プランニング上そういう格好になります。どちらかに寄せるか、真ん中のほうにシフトする。都市側に出てこないわけです。それぞれの街区がそういうつくり方をした場合は、人の流れはほとんど地上から見えない。渋谷というのは人のアクティビティが常に表に出てきている。それが今の渋谷のよさですから、巨大開発とはいえ、できるだけ上下のアクティビティを都市側に出してもらう。これがこのアイデアの肝です。皆さん思い浮かべてください。そういうまちは実はないんですよ。丸の内でもない、新宿でもない、上海でも香港でもソウルでも、ない。アーバンコアというかなり強引なことをお願いしましたが、これがうまくできると、世界中どこにもない都市ができ上がるはずです。

(図45)
sib2.jpg この模型は、何年につくったか、かなり昔だと思いますが、それぞれ何階建てぐらいになるかという容積カウントをしてやってみたら、これはとんでもない景色になる。うちの事務所でアルバイトを頼んで、ともかく積んでみてくれと言って、積んだ時の模型です。以後これを眺めながら、岸井先生とあれこれ相談してやってきました。

 

 

(図46)
こんなふうになるわけです。もちろん実際の形は変わってきていますが。これがヒカリエです。ヒカリエよりも高い東口の街区が立ち上がる。そのときに言われていた板を積むとこんな感じになります。山手線のところから見ている南口のあたりです。
(図47)
上から見たところです。私がまず考えたのは、汐留の轍を踏んではいけないということです。汐留と渋谷の超高層街区の何が違うかと考えた時に、これだけの超高層の隣棟間隔の中に、JRや246、首都高というマストランジットやマクロな交通体系が入り込んでいるというダイナミズムだと僕は思うんです。これが全部でき上がると、首都高速で渋谷のところまで来ると、ワーッと見えてくるわけです。JRからでも渋谷の街区に入っていくと、非常にダイナミックな景観の中に入っていくことになる。ただし、これはみんながそのことをわかってうまくやったという前提です。それぞれが勝手バラバラにやったらそんなふうにはならない。でも、それがうまくできれば、世界中どこにもないダイナミックな都市空間ができるのではないかと考えました。

 

 

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