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(図51)
これが駅街区を見たところです。超高層ですが、超高層の下をえぐるような形をしています。これは隈さんの提案でこういうふうになっている。どうするかと思いましたが、さすが日建、何とか胃袋の中におさめてくれたようです。この高層部に関しては、隈さんというよりは、どちらかというと日建の亀井さんがこの形を提案しました。超高層の端っこのところが全部欠けて、抜けているんです。そのところが多分、空調などで使ったり、夜は光ったりと、新しい形の超高層の提案になると思います。
岸井さんと、この下のところ、もうちょっと抜けないか、本当はこれをツインタワーみたいにして、ここのところを抜きたいと随分言ったんですけど、これがなかなか無理でした。最初の頃は、低層部に土台のような板状のものが建っていて、むしろ板状の建物の上に高層部を乗せるという提案が中心でした。真ん中のところを少しでも下げて、2つに見せることが何とかできないかと言ったんですが、なかなか事業者の方がうんと言わない。
ここからが裏わざです。うんと言わないのは誰か。もう退任されましたけど、JRの新井副社長だということがわかりました。新井さんとはちょっと面識がありましたので、新井さんのところに行って、「あなたがうんと言わないと、事業全部が飛んでしまうという局面に来ていますが、どうしますか」と言ったら、「わかった」と一言。それでなんとか少し下げてもらいました。本当にデッドラインで、あのとき新井さんがイエスと言わなければ、多分これは全部飛んでいたのではないかと思っています。
こちらのほうは妹島さんのデザインで、壁面がクネクネ波打つようなデザインになっています。ここの下のところ、僕は渋谷のえり巻きと言っていますが、ウネウネとしているのも妹島さんのデザインででき上がった。妹島さんのデザインは、若い人を惹きつける空間としては優れているのではないかと思います。渋谷の若さとかフェミニンな女性に対する感性ということに関すると、妹島さんに一日の長があると私は考えていて、それはなかなか鮮やかで、このままできるかどうかわかりませんけど、今のところはうまくいっているのではないかと思います。
(図52)
★特区用パース_ハチ公広場昼.jpg これはハチ公前広場から見たところです。これが隈さんで、これが妹島さんで、両方ともお守役としては日建がついています。こちら側に手塚さんの設計したプラザ街区があります。これも結構おもしろい建物になってきています。このJR線の駅ビルのファサードは妹島さんですが、これに関してはもう少し考えてくれという話をしています。かかるのは15年後から20年後ぐらいになると思います。「一体全体あんなクネクネしたやつを何でやるつもりですか」と言ったら「チタンでやりたい」と言うから、駅街区ですが、「それだと、多分カネがないと思うよ」という話をした。ただ、構造技術も日進月歩ですので、10年後ぐらいをにらんだら別にどうっていうことのない技術になる可能性もあるので、これは継続して検討していってもらおうと思います。
(図53)★全景ハチ公から.jpg
これが手塚貴晴さんが担当するプラザ街区です。ごらんになってわかるように、ヒカリエのアーバンコアとは違いますが、ともかく縦動線を表に、都市側に出してくれということで、その要求を全部聞いてもらい、アーバンコアという格好で、特別な場所をつくってもらいました。これは恐らく商業ビルとか、オフィスビルの床のつくり方でいうと邪道なんでしょうね。なかなかきついんだと思います。それでも表に出してほしいということ。これができ上がると、ここを行き交う人が常に表に見えているので、これはこれで1つの役割を果たしていると思います。先ほど岸井先生が言われた下のところはバスターミナルになります。バスターミナルは、丸の内の八重洲のバスターミナルを私も景観審で審議したんですが、出来がもうひとつだったので、丸の内よりいいやつをつくろう、というのを合い言葉にやっています。羽田あるいは成田に着いたらここにバスが来るという場所になると思います。
(図54)
★建物.jpg これが最後の南街区です。小嶋一浩さんがADとしてついてやっています。小嶋さんの提案は、この超高層を割と分節化して、分節化したデザイン構造が低層部までおりてくる。低層部は非常ににぎわいのあるバナキュラーな場所ができる。そういう提案で基本は進んでいるようです。これは小嶋さんと東急設計がチームを組んでやっています。これの向こう方に、今日はまだご説明できませんが、桜丘街区が立ち上がります。桜丘街区と南街区はJRをまたいで自由通路があって、そこに南口ができるという格好になっています。
説明は、アバウトですが、これで終わりたいと思います。それぞれの技量も持ち味は違いますが、なぜADに入ってもらったかというと、渋谷のもともとのよさは、皆さんご存じのように、あの雑居性です。いろいろな価値がゴチャゴチャと寄せ集まっている、それが渋谷のよさだった。だから、それぞれのデザインアーキテクトの個性を発揮してもらうことによって、多様性、違ったものが共存する、それが新しい渋谷の個性になっていくのではないかと思っています。
時には、あいつがやるより俺がやったほうがうまくやれるのになと思うことがないわけではないのですが、そこは、行事役のほうに回ってしまったので、仕方がないですね。そういう言葉は吐かずに今までやってきています。時に厳しいことを言ったりもしますが、このままでき上がると、私は、渋谷は都市間競争にも勝てるのではないか、と思っています。先ほどの首都高速やJRのマストランジットが入ってきている。岸井さんは、超高層が建つけれども、1人で建つのではなくて、隣り合っている街区のことを気にしながらやってほしいと言っています。それぞれの超高層が気にし合いながら連携をとって、それでもそれぞれが個性的、そういうまちはおそらく世界にない。今のところは、上海にも香港にもソウルにも勝てるというつもりでいます。
私の説明はこのくらいにしておきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

 

 

 

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