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 先生、どうもありがとうございました。『インフラ崩壊』というお話でございましたが、本当に震災の後のことでございましたので、実感としてよくわかりましたし、再生や更新につきましては、官と民が連携して直していくというお話も具体的な事例を交えてお話しいただきまして、ありがとうございました。
今日は大勢の方に来ていただいていますが、是非この機会に先生にご質問のある方はどうぞお手をお挙げください。

赤松(市民情報誌+α編集委員会) 事例として出てきた藤沢や宮代、それから、狛江ですが、例えば狛江だと、もともと共産党系の市長さんがおられたり、宮代も近隣の杉戸とかとは随分状況が違う自治体であると思います。首長の政治的立ち位置とマネジメントの取り組みとは、具体的な動きの中で何か差異が生じてくるものなんでしょうかということが1点。
2点目は、先ほど遠野の例などがありましたが、合併政策との関係で、特例債を発行するなどの施策を前提に合併施策をしてきた結果、兵庫の篠山の例などにもあらわれているように、公共施設を特例債をフルに使ってつくろうということになって、必ずしも公共施設の再配置や再編統合に結びつかなかったようにも思えるのですが、この辺の、合併政策をやるとかえって、かつての旧市町村域のバランスを考えて、もしかしたらしばらくはそういうことができなくなってしまうのかどうか。その辺の公共施設の再配置に与える影響といった観点で若干補足をいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

根本 首長の政治的な立ち位置の問題ですが、認識と行動に分けると、認識は政治的な立場はほとんど関係なかった。共産党であろうが何だろうが、事実の数字を示されると皆さん一様に驚き、対応しなければならないと考えます。対応しなくてもいいと考えた首長は今まで1人もいないです。
行動についていうと、基本的には、何とかしようとしたという意味では同じですが、一番違うのは速度でしょうか。何党というよりは、従来型の発想をとるような人と、いわゆる改革派といわれているような人のスピード感に随分差があります。私はスピード感のあるところとしか取り組みたくないので、ここに挙げているところはそれなりのスピード感があります。首長が意識してもそれが職員に浸透するまでに間があると、数年、平気でかかってしまう。そうすると、手遅れになってしまう。そこは自助努力でちゃんとスピ―ディーにやろうというところとしかおつき合いをしたくないので、結果的にはそこには大きな差があるかなと思います。
ただ、それも大分スピードは短縮してきています。最初に行政のほうで計画が出てきたら、大抵とんでもなく時間がかかるので、私なんか10倍のスピードでやってくださいというんですね。2倍というのはすぐできるんですが、10倍です。議会も含めて。2年かかるんだったら3カ月でやれるかどうか、そのくらいのスピード感で考えてみてくださいと。実際にはそれでも半年や1年かかってしまうんですが、そのくらい突き詰められても何とか対応できるかどうかというところに首長の政治的なスタンスは多少あります。
それから合併特例債についてです。合併政策自体、私はあんまり賛成していないんです。民間企業だったら、合併以外に技術提携や販売提携、持ち株会社などいろいろな選択肢があります。いろいろな組み合わせがあり、すべての分野でこの会社と組むのがベストだという場合に初めて合併するんですね。だから、合併の選択肢は100分の1や2ぐらいしかない。何故自治体だったらいきなり合併なんですか。何故そのために特例債というあめを出さないといけないんですかというのが、政策的にすごくおかしいなと思っていて、私は特例債以前に合併自体が反対です。百歩譲って合併はいいとしても、今の特例債の政策はばらまきでしかない。合併をする理由の中に特例債が使えるから、というものもあり、本末転倒もいいかげんにしろと言いたい。それをいう首長も、それを当選させる市民も相当ひどいと思います。
実際問題、特例債を出して、本来なら淘汰されるべき公共投資が行われているし、それはめぐりめぐって国民負担になります。期限が切れたら延長はないと思いますので、自然消滅してもらいたいなと思います。
野津(国土交通省) ひとしきりお話を聞かせていただき、非常におもしろく聞かせていただきました。非常に興味深かったのは、全体のストックの半分が建築で半分がインフラだというお話がありました。建築関係については、いろいろな機能を集約すればいいというご示唆をいただいた中で、インフラの対応が非常に重要になってくるのではないかと考えております。
その中で、「間引き」という非常に象徴的な日本語をお聞かせいただきました。宮代町が比較的若い自治体だということで、まずは学校のことを考えて、次に下水道を考えていく。そうではない自治体、既に古くなっている自治体については、インフラの下水道や道路については危機感を持っている自治体も多いのではないかと思います。実際にいろいろな方々と議論されている中で、そういったインフラについて、特に危機感を抱いていて、間引きといった議論を進めていこうとされている自治体がもしあれば教えていただければと思います。

根本 インフラよりは公共施設、箱のほうが先に来ていますね。インフラはこれからです。一番先行している藤沢市や習志野市も今年度ぐらいからちょっとやろうかなというくらいです。インフラについていうとタイミングがちょっとずれる。市庁舎や学校ほど切迫はしていないんです。多少時間をかけてやる余裕があることはあります。
もちろん問題は認識しているので、例えば公共下水道の計画を見直すということも含めて、打つべき手は打っていくと思います。それが、不幸にしてというか、脚光を浴びてしまったのが、今回の液状化ですね。習志野や浦安で話題になっていますが、実際、公共下水道の本管を全部やりかえるには2~3年かかる。従来型のやり方もいいと思うんですが、ちょっと違うやり方をしていかないといけないと思います。これまでは液状化というリスクに対して十分対応できていなかったということなので、それにも対応し、なおかつ間引きもしないでやるというのは無理だと思います。液状化対応をすることを、タイミングとしてどういうルートをつけていくのか。それを考えざるを得ないということです。それも、不幸にしてですが、きっかけがあるという状況になっています。

河合(㈱竹中工務店) すばらしいお話ありがとうございました。1つお伺いしたいのは、いろいろな費用対効果に関する情報等を明確な形で提示すれば、政策検討機関や意思決定者がまじめに考えてくれて、インフラの今後のマネジメントにかかわる負債や投資計画についてまじめに考えてくださるということでしたが、お話の中では、行政、政治の中で、計画期間が1年、長くて3年、本当に長くて10年という単位で決められていて、長期的な展望がないまま進み、事業の枠組みも制度的な枠組みも決まっているかのように受け取りました。国レベルで、大きなインフラの負債などの問題を考えるために、長期的に考えようというシステムや、制度的に使える枠組みのようなものはないんでしょうか。

根本 本の中で少し書いてあります。理想的には、社会資本整備計画のようなものを50年~100年で国がつくって、地方ももちろん自分たちでつくる。それから社会資本整備交付金を別につくる。従来の縦割りの補助金を全部統合した公共投資の交付金をつくっておいて、ちゃんと社会資本整備計画のとおりやらないとその交付金の対象にしないということだと思うんです。それが国全体でできれば、恐らく簡単に世の中は変わると思います。
そのくらいのことができなくてどうするのというのが私の主張です。できなくても地方は地方で自分でやればいいんですね。今、秦野、宮代は、名前は違いますが、施設の再配置計画という名前の計画をつくり、それと総合計画を同時並行でつくっています。総合計画は10年なんですけれども、再配置計画は最長50年です。この2つを基軸にする。両方もちろん矛盾させないでつくる。50年の計画を前提に総合計画もつくるということで、計画の位置づけを上げるようなことをしています。
すべての自治体でもしそれをすれば、少なくとも行政とは計画に基づいてちゃんと実行する組織なので、計画にそういう視点が織り込まれればそのとおりになります。現にそういうふうに進んでいる自治体もありますから、そこは余り悲観していません。それができなかったらどうするかというと、それはできるように頑張るしかないので、成功事例を紹介する。担当としては数字があっても仕事にするのはなかなか難しいなという意識は常に持ちますが、当然市長の耳にちゃんと入れて、市長がヘッドになるような会議で決め、議会の承認も得ておくという位置づけであれば、名称はともかくとして実質的に管理可能な指針ができ上がると思います。

生田目 先ほど規律ある資金調達のお話がありました。プロジェクトの主体や規模が具体的によくイメージできないんですが、どんなふうに考えればよろしいんでしょうか。


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