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根本 借金をして返せる主体でないといけないので、通常は株式会社か投資事業組合、信託などのようにそういうお金を責任を持ってまとめる機能があればいいです。NPO法人や任意団体だったら恐らくお金を出してくれないので、それにかわるもの、通常は会社のようなイメージですね。プロジェクトは大きくても小さくてもいいんですが、例えば、風力発電のための数億円を、市民の本当に小口のお金で集めて調達している事例があります。そのくらいのロットです。例えば漁港の再整備とか、やるかどうかわからないですが、津波が来ても大丈夫な高層の住宅など、特定の固有名詞に場所をつけて、このプロジェクトのために1000万円や1億円を集めるというイメージですね。そういうものをさらに束ねる。そういうプロジェクトが100あったら、100全部がだめになることはない。リスクを分散するために、100を束ねるようなファンドができれば、そのファンドはお金を集めることができるかもしれません。
似たようなものとしては、今、住民参加型地方債というのがあります。例えば、以前の例だと、松山の坊ちゃん電車というのがありますね。ああいうのをつくる目的で市民からお金を集める事例は今でもあるんです。今までの制度だと、松山市の坊ちゃん電車でお金を集めても、その債券の券面には坂の上の雲何とかと書いてあります。ただし、それは松山市の一般財源から返済されるんです。坊ちゃん電車が失敗しても、松山市の市民がみんなで返してくれるし、逆に松山市がへたってしまったら、坊ちゃん電車が幾ら頑張っていてもお金は返ってこないということになります。
それだと規律がない。今やろうとしているのは、坊ちゃん電車が成功しないとお金が返らない仕組みを先程の規律の仕組みの中で導入する。そうすると、何となくフワフワと坊ちゃん電車を支援するかのではなくて、本当にそれが投資として的確なのかどうかを考えるようになる。そうして集まったお金であればみんなが協力してくれるのではないか。それが海外で行われているTIFやレベニュー債の仕組みで、日本でできないはずはないと思っています。
生田目 時間要素を考えるとどうなんでしょうか。坊ちゃん電車なんていうと、緊急性のない、多少のどかな、あるいはゆったりした感じがするんですが。

根本 目的は何でもいいんです。とっさに思いつかなかったので、坊ちゃん電車を実例としてあげましたが、漁業や農業で緊急に、例えば30日後に必要というものがあれば、それはそれで別にいいと思います。それは国が決めるのではなく、いつ、幾ら、何年の債務でやるかというのは債券の発行者もしくはファンドマネジャーが考えるべきことです。それを市民が納得しなかったらお金が集められないだけの話です。そこはある意味、市場メカニズムを入れていくということなので、国も地方も、もちろん税金の優遇措置は必要ですが、それ以外のところはなるべく口を出さないで、民間の知恵に委ねるという発想です。

赤松(市民情報+α編集委員会) 再度質問させていただきます。質疑の中で、少し前の方の質問に対して、総合計画と公共施設の再配置の計画の2本柱で動かすことの意味のお答えがありました。総合計画自体は、自治法上は基本構想のみ議決が条文化されているわけで、例えば公共施設の再配置の計画を議会の承認を得るという前提にした場合、今までですと、全員協議会での説明やその程度かと思いますが、公共施設についてきちんと位置づけをネットワークとしてとるということを考えた場合には、従来の単独の公共施設の設置条例ではなくて、公共施設の設置条例の一本化とか、あるいは最近取り組まれている自治基本条例について、理念条例だけではなくて、手続条例の役割も持たせて、そこで担保して議決をとる。どのような方向が可能性として一番有効とお考えでしょうか。

根本 条例の議論は今していますが、そこまで行っている例はありません。社会資本整備条例のようなものをつくらないと意味がないという話はしていて、その中に何を盛り込むのかというのを、財産の設置条例みたいな要素まで入れるのか、もうちょっと基本的なものにするかは、今のところは決まっていないです。
ただ、条例がないといけないとか、計画を議決しなければいけないということでもなくて、ミクロ的にやるのは、例えば公共下水道の計画を見直すとか、そういうところから1つ1つ積み上げていく話なので、そっちがちゃんとしているのであれば、そっちをちゃんとするために上位の包括的なことをどのくらいしておく必要があるかという話です。ミクロのほうがちゃんとできるのであれば、マクロのほうはそんなにギリギリやらなくてもいいのかなという今のところの感じです。

 先生、どうもありがとうございました。
それでは、皆様、きょうのすばらしいご講演に対しまして、いま一度大きな拍手をちょうだいしたいと思います。(拍手)
以上をもちまして本日のフォーラムを終了させていただきます。きょうはありがとうございました。(拍手)
(了)


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