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では、その50年後はいつか。今ですね。今まさに皆さんのいる現代が、過去に投資したインフラの老朽化が始まる年です。2014年、3年後ですが、東京オリンピック開会50周年です。これは同時に、何もしなければ、日本のインフラが崩壊し始める元年になるわけです。この図はそれがわかる非常にいい図だと思います。これを国交省さんがかくと国交省の利益誘導みたいにとられてしまうんですが、事実を極めて正確に伝えています。
(図5)
実は、日本の橋で、落ちそうになっている橋は幾らでもあります。これも国交省がホームページで実名入り、写真入りで、詳細なカルテを公表しています。これが「道路橋の重大損傷―最近の事例―」平成21年のものです。橋の年齢は橋齢といいますが、建ってから何年ぐらいでどんな事故を起こしているか。重大損傷というのは、落ちることはもちろんですが、車両を通行どめにするということもあります。特に川の橋は、川の流れによって橋脚がどんどんすり減っていくわけです。そうなると、そこを補強しないといけない。こういうものを重大な損傷と呼んでいます。何もしなければ落ちるというケースです。
それが、公表されているものだけでこれだけあります。実は、橋齢50年未満でも重大損傷が起きています。ここが50歳のラインです。40年や30年しか経過していないのに落ちそうになっている橋が非常に多いということです。ですから、日本の橋が落ちないというのは、落ちそうになった時にちゃんと予見して手を打っているということにすぎないわけで、日本の橋が落ちないということではありません。今までは数が少ないから落ちないように管理することができました。これからはそうはいきません。これから膨大な老朽橋が生じてきます。全国で何十万橋とあります。国が管理していればまだいいですが、地方自治体が管理している橋はほとんど無管理状態だと考えたほうがいいと思います。驚くべきことですが、実際に調査をしてみて、そもそもどこに橋があるかもよくわかってないということがありました。
今の話は橋の話ですが、同じようなことは他のインフラにも起きています。本の中に大分詳しく書いてあります。上水道管の破裂や、建築物でもベランダが落ちたり、タイルがはがれたり、天井が落ちたり、ということが起きています。ただ、人身事故になかなかならないので、今までは報道されてきませんでした。橋同様に日本の建築物は大丈夫なんだという迷信が、財政当局や市民、議員にはある。「そんなに日本の建物が壊れるわけないよ。まあまあ耐震補強してないけど、大丈夫だよ」ということを今まではいってきています。
特に、自治体の市役所の庁舎は、一番後手に回っている建物です。さすがに学校は耐震補強しようということで予算がつきますが、市役所を建てかえようとすると反対が出る。「何で市の職員が新しい建物に入るのに税金を使うんだ。壊れないんだから、大丈夫だろう」。それで議会で否決されることが結構あるんですね。私は何年も前から、それは間違いだといっています。市役所というのは災害復旧本部にならなければいけないですから、緊急時に真っ先に壊れるような建物では市長がいられない。実際問題、市民も来るわけなので、学校を優先するのはもちろんいいですが、新しい箱をつくるんだったら、まず市役所を何とかしてくださいという話をしてきましたが、間に合いませんでした。
(図6)
間に合わなかったデータがこれです。今回の大震災で、旧耐震基準の震度6以下の建物は、津波がなかった場所でもこれだけ壊れています。まだまだたくさんあります。皆さんお調べになるとびっくりすると思います。今の基準は震度7でも壊れては困るというものです。旧耐震で建てて耐震補強していなければ震度7で壊れるのは仕方がないと思いますが、震度6でも壊れています。しかも津波の影響は全く受けていません。


鹿行大橋は茨城県の霞ヶ浦の橋です。そこは震度6でした。かけかえ工事中で、隣に新しい橋をかけようとしていたんですが、古い橋はそのまま供用されていて、車が通行している状態で落橋しました。今回津波の関係で5本ぐらい橋が落ちていますが、津波と無関係で落ちたのは唯一この橋です。
これは岩手県の遠野市のデータです。遠野市の当日の震度は震度5強です。6でもなかった。それでも全壊です。ちょっとびっくりします。
福島県庁、郡山市役所、須賀川市役所、水戸市役所、高萩市役所、近くでは千葉市役所、あとは九段会館、ミューザ川崎。ミューザ川崎は公共施設ではありませんが、九段会館は国有財産です。これらは、現在全く使用禁止になっているものが多いし、もう使えないんだけど、だましだまし使っているところもある。
今回の九段会館の事故は皆さんご存じでしょうけれども、仮にあんな事故が起きたら、普通だったら1カ月ぐらい延々とテレビで取り上げます。そのくらい大事故ですが、余りにも津波や原発が激しいものですから、メディアに九段会館は最近全然出てこなくなった。全く無視しているんです。もちろん津波の大変さを報道してくれるはありがたいことですが、こっちの問題もちゃんと見てもらわないと困るんです。そうしないとまた同じことを繰り返すという日本人独特の失敗のパターンが再現してしまうのではないかと思います。
私どものホームページで、震度6以下で、津波の被害がないところで使用不能になったものをリストアップするサイトをつくってあります。是非そこをご覧ください。本当にびっくりするくらいたくさんあります。こんなので大丈夫なのと思ってしまいます。
これらは老朽化のために使用不能になった。震度5でも使用不能になる。それは建築確認を取って建築許可が出ているわけですから、設計ミスでも施工ミスでもない。基本的には全部老朽化したものです。物によっては50年を超えているものもありますが、大体40年から45~46年ぐらい。つまり、耐用年数の手前で、大きなショックが起きれば使えなくなってしまう。ショックが起きなくても時間の問題だろうと思います。

2.更新投資の量的推計

 alt=図7)

  では、それならどんどん建てかえればいいではないですかと思いがちなんですが、これは財源の問題になってきます。「増える社会資本ストック、減る公共投資」ということです。社会資本ストック、これはGDPの統計で、建物だけでなく、インフラも、上下水道も全部含めています。土地は除いています。この棒グラフのストックが年々増え続けているということです。更新投資の量はストックの量に比例しますので、ストックが増えるということは更新投資の圧力がそれだけ加わっているということです。



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