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(図15)
これは省略いたします。

(図16)
これが先ほど申し上げた宮代町です。箱が多いといいました。その宮代町で計算をしたグラフです。これは将来のヘルスケアプランだと考えていただければいいと思います。横軸が2011年から2060年までの50年間。縦軸は更新投資の必要金額です。棒グラフは各年々の更新投資の金額ですので、高いということはそれだけお金がかかるということになります。色が違うのは資産の種類で、青が公共施設で赤いのが上水道、白っぽいのが下水道、薄いブルーが橋梁、濃い赤が道路、茶っぽいのが設備とか備品、これはメディカルの機械です。民間企業であれば固定資産台帳をちゃんと持っていて、いつそれを更新しないといけないか考えながら経営をするわけですが、地方公共団体の場合はそういうことをしません。国もしません。政府も基本的にそういうことをしません。どんぶり勘定でしか物を考えてない。一度これをやってみましょうよということでこれをつくったんです。
実は、年間どのくらいこの分野に使えるのかというお財布の中身が、4億円ぐらい。この線より上は全部不足です。人口の減少は入れてません。これから人口が減り、高齢化して住民税収が減るということは入れていない。それでも、ここで切られちゃう。ここから上は全部不足になります。10年ごとにおもしろいパターンが出ています。最初の10年間、何とか足ります。先ほど比較的若いといったのは、ここに効いてきます。都市化が遅れているので、さほど老朽化していません。従って最初の10年は更新期を迎えるような資産が余りありません。大体自治体の場合はここで安心するんです。自治体の計画は最長でも10年です。普通は3年、よくて5年、大体翌年度のことしか考えません。そうではないとおっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんけど、それはそうではないんですね。
もしこの図を10年で切っていったら、宮代町は大変健康な自治体ということで誤診してしまいます。おたく何も考えなくていいですよ、健康ですといってお帰しをしたでしょう。でも、我々の人間ドックはそうではないです。50年先まで読みます。次の10年は悲惨な10年になります。学校の建てかえが一斉に到来します。小中学校が7校あります。中学校が3校、人口3万人の町に中学校が3校です。これは異常に多いです。
そこで、今彼らは何をし始めているか。10年たった時点で統廃合といったら大混乱するので、10年先を見越して今のうちに統廃合プランを立てようということでスタートしています。4月からスタートしました。町民は大変驚いて、統廃合けしからぬと、とりあえず思うんですが、10年後に着手したらもう建てかえられなくなってしまいます。古い建物を子どもたちの危険を顧みずに、耐震補強したとしても、耐用年数が伸びるわけでもない。結局、子どもたちの危険を放置したまま、何もしない状態に陥ってしまうんですね。であれば、学校を少し減らしてでも安全を確保したほうがいいのではないかということを10年間の間にみんなで議論して決めましょうということです。非常に真っ当なやり方です。初めて地域経営が始まったと私は思います。
10年間しのげば何とかなるかというとそうでもありません。次の10年は上水道と橋梁の10年になります。次の10年は下水道になります。少しずつずらして整備をしてきているんです。下水道はまだ実は整備がし足りない状態です。でも、この図を見て彼らは何をしたか。公共下水道の施工計画の面積を縮小しました。とてもじゃないけど維持できない。だから、今のうちに人口が増えないようなところは公共下水道の計画をやめてしまうということです。国の政策で公共下水道をどんどんやりましょうというのはいいんですが、更新投資の負担は全部自治体がかぶります。維持できないと思うのなら今のうちからクローズしておこうということになります。下水道がなくなるのは大変不便です。不便は不便ですが、お金がなければ中途半端な状態になってしまう。であれば、人をできるだけ市街地の中心部にコンパクト化して住まわせる。周辺部分は公共下水道ではないコミプラとか集落排水、合併浄化槽など、別の手段でやっていく。これは電力にちょっと似ているようなところがあります。原発で全部賄おうとしないで風力や水力を組み合わせていればよかったんです。公共下水道も、本当に巨大な装置型の産業になります。放射能は出しませんが、下水管を更新できなくなったら、これはこれで大問題だと思います。できるだけ代替の手段をとりながら計画を進めていく必要があると思います。
本来国が率先してやってもらいたいと思いますが、埼玉県の宮代町という小さな自治体が先鞭をつけてやろうとしています。大変素晴らしい動きだと思います。

4.崩壊させない知恵

(図17)
更新問題の対処法ということでいろいろな対処の仕方があります。ここに書いてないことでいわなければならないことは、日本の財政の負担が非常に多いということです。更新投資問題は、資産を増やすという問題です。いずれにしてもバランスシートの問題です。民間企業の方であればわかりますが、人件費をちょっと削るとか、委託費を削るのは、キャッシュフロー改革です。それとバランスシート改革は全然違います。借金を2割減らせといった場合は、人件費を減らしても追いつかない。バランスシートを改善するためにはバランスシート改革をしなければいけない。負債を減らすためには資産を切り売りして、見合いの資産を落としていかないといけないんですね。今までの日本の行政改革は、基本的にはキャッシュフロー改革しかやっていません。事業仕分けというのも、事業がスパッと廃止されればバランスシートに影響するかもしれませんが、基本的にはキャッシュフロー、費用を圧縮するということです。自治体の経営も同じです。私の専門であるPFIも含めて、できるだけ安くする。これはこれで重要で、やらなければいけないのですが、この更新投資問題に関していうと、それだけでは足りないんです。アセット自体を増やさない、これが必要なんです。
結果的に、従来の発想だと、アセットをふやさないためには更新投資をしないという決断しかないんですね。60年たった市庁舎をそのままにしておくという決断しかないんですね。これは決断ではないです。何もしないでサボタージュしているだけです。実際に行われている対策はそれです。更新投資がない、そのための対策として更新投資をしないという知恵しか今のところありません。いずれはやらないといけない。やらないといけないんだけれども、できるだけ減らしていく、それが必要になります。そういう例をここで紹介をしています。
(図18)
1つは、施設仕分けと呼んでいます。要らないものは要らないとしていかないといけない。これでは皆さんのお仕事が増えないかもしれませんが、財政が破綻してしまうよりはいいと思います。これは習志野市で、実際に市民を集めて、今皆さんが使っている施設はどのくらいお金がかかっていますかというアンケートをとったものです。こういうデータを掲載しているのが、先ほど藤沢市で紹介した公共施設マネジメント白書というものです。実際に習志野市のデータをお見せします。数字も全部入れてあります。市民が電卓をたたきながら、最後の2つを計算するんですね。計算すればすぐ出るんですが、計算する前に、聞いています。公民館を皆さんが1回利用すると1件当たりどのくらいお金がかかっているでしょうか。人件費もあるし、施設費もあるし、電気代もかかっている、もろもろの費用と利用件数を割ったら、大体いくらかかっていますか。公民館というのは有料のところが最近多い。お金を払っているんだからいいでしょうと思うんですが、件当たりどのくらいお金を使って、いくら収入がありますかという問題を出すんです。


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