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皆さんも直観で考えていただくといいと思います。大体1件当たり1000円や2000~3000円使用料がかかります。結構払っているような気もするから、足りるとは思えないけれども、半分ぐらいは受益者負担で賄っているかなと思うのが普通です。でも、これは習志野市に限りません。全国平均どこも同じですが、費用は利用件数1件当たり1万円かかります。収入は大体500円です。そんなに差がありません。私は1万円が高いとはこの数字を見たときに思いませんでした。民間の会議室を借りてもそのくらいかかるかもしれません。それだったら、それは民間の会議室を借りてもらえばいい。特に重要なことであれば、その賃料に対して補助金を出してあげればいいと思います。
実際に公民館を使っているのは大半がサークル活動です。要するに個人の趣味です。個人の趣味のためにどれだけ公共投資をして税金を使うのか。この数字が出ると目の色が変わります。今まで公民館を使っている人は必要だといい、でも、公民館を使ってない人は沈黙するだけでした。使ってないけど税金を払っている人たちがここで発言を始めます。収入の500円というのも驚きです。払っている人は1000円ぐらい払っているんですけど、実は無料という特例扱いになっている人が非常に多いんですね。自治体によっては3分の2ぐらいが特例で0ということになると、完全なコストセンターになってしまいます。それでも公民館が必要ですかということです。そういうことを問うていく。私は必要ないといっているわけではなくて、それは皆さんで決めてください、考えてください。公民館を建てかえるのが優先なのか、古い市庁舎を建てかえるのが優先なのか、そういうことをみんなで考えてみてくださいといっています。そうすると、皆さん、間違いなく、10人中9.9人は考え方を変えます。ですから、公共施設というのはいかに無駄が多かったかというのが数字でわかるようになる。これがやはり今までは欠けていた情報でした。
(図19)
宮代町の場合には、施設の仕分けの提案もしています。中学校を1校に統合して真ん中に持っていく。小学校も統合する。その統合した学校に公民館や図書館あるいは社会福祉施設を組み込んでいくということです。これは後ろに出てくる多機能化という話にもつながりますが、1つの施設で1つの機能を担わせなければならないというのは別に誰が決めたわけでもない。
(図20)
それでは1つの施設で複数の機能を担えるようにするほうがいいのではないかということで、スケルトン・インフィルを提案しています。秦野市では実際に図面を引いてみました。公民館がどうしても必要だ、そういう人もいるでしょう。それなら、公民館は残します、ただし、今ある公民館は、公民館として使えるスペースのほかに玄関があったり、事務室があったり、トイレがあったり、階段があったり、駐車場があったりするわけです。実は小さくなればそういう共用施設のウエートが大きくなる。それらは別に要らないですね。であれば、学校の空き教室に公民館を入れていく、そうすると共用部分は共有できるわけです。使う時間帯が違うからトイレの数を増やす必要もない。高さは少し高くしないといけないとかあるかもしれません。そうすると、これだけで20%削減することができます。公共施設の20%がこの共用化、多機能化によって削減することができます。
設計・建設関係の方、是非アイデアを出してください。今自治体は、こういう形でないと切り抜けられないということがよくわかってきています。技術的な裏づけを必要としています。もちろん法制度のお手伝いもしないといけないんですが、技術的にこうやればできるよということが明らかになれば動くと思います。

共用化、多機能化のいいところは、廃校にしなくてもいいんです。子どもがいなくなって空き教室が増える。今は空き教室がたくさんあると、何か名前をつけて使っていることにしている。空き教室が多いと宣言すると廃校になってしまう。そうすると、何とか教室という名前の空き教室を抱えた巨大な不稼働資産のほかに、また別に新しいものをつくらされてしまう。これはすごくもったいない。空き教室にどんどん他の施設を入れる。そうすると、教室数が少なくても学校は確実に残ります。将来、近くにニュータウンができました、子どもが増えましたとなったら、公民館に使っていたところをまた教室に戻せばいいんです。このように機能をどんどん変えていくことが技術的に可能であれば世の中は変わると思います。これによって20%の投資コストが削減できるという試算をしています。
(図21)
それから、インフラのマネジメントもやっています。これは青森県の橋梁のマネジメントが非常に有名です。多機能化というのは箱のほうには有効ですが、インフラには有効ではないんです。上水と下水を兼ねることはできないので、こっちはマネジメントしないといけないなというのが1つ。
いい忘れましたが、日本全体の資産の中で、半分が建築物、半分がインフラ、建築物の中の半分が学校なんです。ですから、学校に手をつけない限り、オーバーアセットの状況は絶対になくならない。残りの半分のインフラの場足、そのうちの2割ぐらいが橋梁だろうと思います。青森県がアセットマネジメントを橋梁についてやっています。主として長寿命化ですが、橋梁の場合は、上下水道や建築物と違って比較的長寿命化はやりやすいと思います。それも計画的にやらないといけないということです。
(図22)
もう1つは間引きです。東京都も含めてですが、上水道や下水道の配管図をご覧になると、その錯綜ぶりに驚かれると思います。縦横無尽にパイプが通っている。A点とB点をつなぐのに、1本だったらそれが破断すると危ないけれど、10本も20本も通っていたりするんです。これは、景気対策でどんどんやれということになって、10年前ここに引いたけど、今回こっちに引こうかみたいなことで、どんどん過重な投資をしていっている。道路は見えますから、さすがに抑制をしますが、地下はわかりません。水道局あるいは下水道局の人でないとわからないし、そこにいても実はよくわからないという状況です。
間引きができないかなと私は思っています。インフラが重要だといって全部更新していたら、お金が足りない。料金を上げないと追いつかない。
(図23)
間引きできないかなと思っている根拠がここにあるんです。これは東京都の上水道の統計です。東京都の方はこういう試算に使われると思ってないと思いますが、これは公表されている資料です。給水人口1人当たりの配管延長距離がどんどん延びてきています。1.9と2.05というのは、原点が0ではないので、2倍も3倍もあるということではないんですが、1990年時点、バブルの絶頂期1.9だったのが、その後人口が別に減ってないにもかかわらず、上水道の投資は続いていて、足元で2.05です。10%ぐらい増えている。1990年の東京において上水道が本当に不足していたでしょうか。あのとき東京都の水道局のサービスに不満を持っていたでしょうか、もっと配管を延ばしてくれよといったでしょうか。いってないんですよ。もう十分にあの時点で満足できていたはずなんです。にもかかわらず追加投資が相次いでいる。少なくとも90年代でも十分満足できるのであれば、これからは2.05ではなく、1.9を目標にして減らしていく、それが間引きなんです。これだけで1割減ります。
こういう発想は、水道や下水道の方には多分全くなくて、まだあまり議論していませんが、当然猛反対すると思います。金がないんだったら、こういうことをせざるを得ないですね。ほかに知恵があるんだったらどんどん出していただきたいんです。一番楽なのは間引きだと思います。いよいよ間引きの時代に突入するということになります。
(図24)
話は変わりますが、不動産の有効活用についてです。インフラから地上に話が戻ります。公有の建物、有形固定資産が大変だというのはわかりますが、土地が片や余っているわけです。その土地を売るというのも1つあります。国は余剰国有地を売ったり貸したりするということを一生懸命やっていますが、それでもまだまだ足りない。自治体はいわんやですね。公的な不動産は、国交省の試算だと450兆円ぐらいあるといわれています。その資産効率を1%でも上げてあげれば年間何兆円という収入が生み出されるんですね。
これが1つの例です。奈良県の養徳学舎というプロジェクトです。これは奈良県の行政財産です。ただし、場所は奈良県ではなく、東京都文京区の奈良県の県民子弟、大学生が通う寄宿舎です。それがそもそも必要かという議論はもちろんありますが、奈良県民としてはそのための公共施設を持つことは賛成する、是非やりたいということを前提にした場合、それでもお金はない。奈良県庁は一切お金を出しません。でも、学舎は新しくしたい。ないものねだりのリクエストを考えるわけです。ただ、1ついえるのは、土地があいています、その土地を使っていただいて結構です、その土地を使って儲けていただいて結構です、その利益の範囲内で建物を建ててください、無償で下さいということです。


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