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(図10)
これは先ほどいったようなことです。4つのタイプに分類をしています。
(図11)
マクロ的な不足の推計をいたしました。マクロ的な不足といっても、ちゃんと建築物の延べ床面積や上下水道の配管の延長、道路の面積を全部計算しまして、それに更新単価をかけて、日本全体の投資額を算出しています。そうすると、今後毎年8兆円必要になってくる。今でも更新投資を2兆円ぐらいやっています。とすると、将来の公共投資は、今までと同じことを同じようにやって、さらに更新投資もやるとなると、3割増しにしないといけないということです。3割増しの数字をご覧になると、建設業界の方は、3割増しの需要がある、市場が拡大すると思われるかもしれませんが、そういう意味ではありません。潜在的にこれだけ必要だけれども、お金は全然ないわけですね。3割増しにするためには、別のところからとってこなければいけない。こんな景気の悪い中で医療や福祉からとってこられるか。公共投資の予算をとっているのは福祉です。扶助費といわれているものです。そっちに返してくれということが可能であれば、それも1つの選択かもしれません。ただ、政治的にそれはとても可能ではないでしょう。そうすると、26兆円という市場が顕在化するという可能性はありません。しかしながら、26兆円の仕事をしないといけない。それが民間のお仕事です。20兆円の予算で26兆円の仕事をする。生産性を30%上げるということです。これが知恵として出せればこの問題を解決することはできるのではないだろうかと考えています。
私の専門はPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)ですが、PPPの用語としてバリュー・フォー・マネーという言葉があります。費用対効果ということです。従来の公共投資と同じような発想で同じような発注をしていたのではだめです。民間にどんどん任せて、性能は同じだけれども、かけるお金をできるだけ減らしていくことを考えていかないといけません。バリュー・フォー・マネー、30%を日本全国でやるということですから大変です。大変ですが、そのくらいやらないと追いつかないという大変な状態にあります。

 

3.自治体のマネジメントの動き

(図12)
これは1年ほど前に内閣府のPFI推進委員会で発表したものです。結構インパクトがありました。その後の成長戦略にも老朽化の話が書かれるようになりました。次の私の仕事は、これを各地域に落としていくということです。日本全体で何兆円といわれてもちょっとよくわからない。地域ごとに落としていったらどのくらいになるんでしょうかということを計算するのが次の私の仕事でした。どういうことをすればいいかというヒントを与えてくれたのがこのグラフです。

これは藤沢市の公共施設マネジメント白書というものです。いろいろな席でこれを紹介しているので、ご存じの方も多いと思います。公共施設だけです。横軸が取得年、縦軸が延べ床面積です。先ほどマクロで図をかきました。あれは金額でした。延べ床面積という物理的な単位で見ても、つり鐘状になっているということがわかると思います。地方の公共投資も、以前は相当集中的にやりましたが、最近はだんだん減ってきているということがわかります。
藤沢市は人口が増加している自治体です。そこでも減ってきています。ちなみに、色が違うのは施設の種類でございます。緑が学校。学校は大体築40年から50年のところと、20年から40年のところに集中しています。人口増加に伴い学校をどんどんつくってきた。左のところの緑の物件は、これは3年前のグラフですので、既に耐用年数を経過しています。従って、これからどんどん学校を建てかえないといけない。
一番左側にぽつんとピンクの建物があります。これが市役所の本館です。この段階で築56年、今、築60年にならんとしています。今回の震災で全壊は免れましたが、とても職員が安心して勤務できるような状態ではないということで建てかえに着手しています。私もこのプロジェクトを3年ぐらいやっていて、早く建てかえないと危ないですよといっていますが、やはり市役所は一番最後になるんですね。一番最後になるからポツンとまだ残っていた。
議員が反対するとか市民が反対するということでしたが、今回は議会の開催中に震災が発生しましたので、議員もその恐怖を経験しました。ですから、今まで反対していた人も賛成となりました。そうならないと気づかないのかと私は思います。不幸中の幸いで、本当に全壊する前に建てかえに移ってくるということになります。

  これをヒントにして、こういうふうに分布しているということは将来の予測に使えるだろうということです。耐用年数到来時点でリプレースしていくとすれば、将来どのくらいお金が必要になるかわかるはずだ。これは建築物に限りません。道路も橋梁も上下水道も全部同じです。そうすると、何年先ぐらいにどのくらいお金が必要になるかということがわかるはずだと考えました。それで、いろいろなところで共同研究をしています。
(図13)
これは神奈川県の秦野市です。トータルで差し引きの不足額を計算しました。ここは3割不足しています。公共施設、道路、橋梁、下水道が出てて、トータルで3割不足している。日本全体のマクロの数字に非常に近い。秦野市は首都圏の中では最も1人当たりの市民のストックが少ない、かつ新しい、老朽化していない都市です。そこでもお金が足りないんです。
(図14)
幾つかの市を分解して整理したものです。皆さん是非ご自分のところでやってみられるといいと思います。横軸が人口1人当たりの公共施設の延べ床面積、箱が多いかどうかということをあらわしています。縦軸が建築後30年以上経過した建物の延べ床面積の比率。これは古いかどうかを示しています。縦軸のほうは毎年ちゃんと同額投資している。耐用年数50年だとすると、40%になるんですね。平均的な投資をしているところは40%になります。40%を超えていれば老朽化している。下回っていれば老朽化していないということになります。秦野市、左下の点ですが、1人当たりの箱の面積もそんなに多くないし、老朽化もしていません。だから、一番優秀なんです。首都圏の自治体で、今まで調べた中で一番優秀な自治体ですら3割不足しているという数字が出ました。
藤沢市、習志野市は非常に古いです。都市化が早いということです。早く都市化した自治体は学校も病院も市役所も公営住宅も全部老朽化しています。これが一斉に来る。箱はそんなに多くないけれども、老朽化していますので、今すぐ手を打たないといけない。
もう1つのパターン、埼玉県の宮代町というところです。ここは比較的新しい。だけど、箱が多い。人口が少ないということももちろんありますが、人口比で考えても箱が多い。こういうところは外科手術をしないといけない。箱のストックを減らしていく。資産の量を減らしていかないと市民1人当たりの負担が負担し切れなくなってしまいます。緊急度と外科手術が必要かどうかということは簡単に診断ができます。
こういった健康診断をしながら各地を今回っているところであります。

 


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