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(図1) 
1つは、イロハのイ、ご存じのとおりだと思いますが、今の温暖化の状況がどうなっているかを復習いたします。その中で、家もいじり、そこをヒントにして、都市もいじりたい。都市をいじりますと、結果として新しい社会、経済というものができてくるのではないか。震災の後のレジリアントな国土あるいは社会をつくっていかなければいけないということは、みんなが共有するアイデアであります。またとないオポチュニティになっているといえるかと思います。ぜひそういう形で日本の再生が行われるといいなと思います。
ただ、そのためには政策も必要だろうということで最後に政策の話をさせていただく。必ずしも環境省とは関係ないお話が多いかと思います。少しでもご参考になることがあればありがたいと思っております。
(図2)

 

 

 

 

 

 

 

 温暖化です。懐疑論もありますが、世界の平均気温を見ると19世紀から20世紀初頭のころの色が紫色で、だんだん赤に濃くなっていく。120ぐらい測定値が並ぶわけでありますが、古い時代ほど低い温度で、最近、例えば2000年になってからの11年のデータのうち、2008年以外はすべて観測史上10位のうちに入っている。2008年以外は間違いなく実感として暑くなってきている。温暖化してない、CO2が温暖化の原因ではないという人は、このペースが最近落ちているのではないか。CO2は単調増加しているのに気温は頭打ちではないかということですが、実際気温はいろいろな理由で上がったり下がったりします。別にCO2だけが温度を決めているわけでは当然ないわけです。CO2が増えているのに頭打ちではないかといわれても、正直いって説得力がない。
例えば、五十何年も水俣病を引きずってきた理由は初動対応が悪かったということです。初動対応が悪かった理由に、例えば水俣病の原因はチッソが出す排水ではなく、これは旧軍隊が水俣に捨てた爆弾が原因だ、ということを立派な科学者の方がおっしゃって、かなり政府の足を引っ張った。その結果、規制が遅れてしまったというのは歴史的な事実です。大丈夫だということは大丈夫だという証明をしてから言っていただかないと困るわけです。温暖化していないとは、私はなかなかそう簡単に言い切れる問題ではないと思います。

(図3) 
今日申し上げたいことは、問題はむしろ今後です。今まで0.7度上がっていますが、この先どうなるかということです。いろいろなグラフが出ていますが、同じ色の線に幅がついているのは、気候モデルそのものが組織によって違うモデルを使っていて、例えば同じCO2の排出量を入れても違う結果がもちろん出ます。では、何故、色が違うかというと、今後の人間の活動のせいで出ていくCO2の将来へのシナリオといいますか、排出経路が違うので、それぞれを色分けしています。赤はAシナリオといっています。Aシナリオは、対策を今ぐらいはやるけれど、特別な対策しないというシナリオです。このシナリオでいきますと、2100年には2000年に比べて4度ぐらい上がってしまうというケースも考えられるということです。
仮にたった今CO2の増加をとめたとする、または、排出量が直ちに今の半分ぐらいになると、環境が吸ってくれている量とほぼ同じになりますので、CO2の濃度はそれから増えなくなる。そうなると、温暖化は、じわじわ進むにしろ、そんなに進まない、止めるということはできます。
今程度の対策だとどんどん気温が上昇してしまうけれど、CO2の排出量をたった今世界中が半分にすれば上昇しない。現実はその間にきっと行くんだと思います。世界は2度ぐらいのところで止められないかといっております。そのシナリオでは、2050年ぐらいに世界の排出量を半減させるとシナリオになっています。
実は、私が担当の課長をやっていましたが、京都議定書は、先進国全体で100年で50%カット程度のスピードを前提にしていました。つまり、10年間、例えば、2012年までの範囲でいえば5%ぐらい削る。ところが、今のコンセンサスは、それよりももっと早くて2050年で世界の排出量を半減しないといけないということになってきている。だから、京都議定書が考えていた世界あるいは前提としたサイエンスよりも今のほうが厳しいということです。
京都議定書では、3度上昇ぐらいはいいのかなと思っていた節がありますが、今や3度では恐らくもたない。人間社会のほうがついていけないのではないかという感じになりつつあり、2度の上昇で止めたいというのが先進国、途上国共通のところになりつつあるということがいえようかと思います。
しかし、2度ってすごいですよね。だって、今まで0.7度で、日本の雨の降り方は変わってしまったわけです。こちらには、建築をやっている方、まちづくりをやっている方がたくさんいらっしゃると思いますが、防災などは今以上に対策をしなければいけないことになると思います。
(図4) 
温暖化にはいろいろな影響が考えられます。気候が変わる、温度が変わるというだけでなく、雨の降り方が変わる、熱膨張して海の水が上がってきてしまう。それがいろんな自然環境を壊し、最終的に人間社会にも影響を及ぼす。災害や農林水産業の問題のほかに、特に物が売れなくなる、難民が来るという意味で経済的なインパクトも大きいと思います。2度とは、こういう影響が避けられないということです。ただ、いろいろな対策をとれば何とかそれに適応できるのではないか。やや敗北主義的です。温暖化防止というけど、政策よろしきを得ても、実は防止はできないというのが現実の姿だということであります。
今日午前中に、慶應の三田で、つくばにある気象研究所からいただいたデータの解釈をするための会議をやっていました。震災で東北地方に関心が集まっていますが、東北地方の2070年や2090年のときの気温がどうなるのか。実は日本の気象研究所はとてもいい気候モデルを持っています。スーパーコンピュータで膨大なデータを扱いますが、4キロメッシュで予測をしています。4キロメッシュでさらにいろいろコンターを付加したりしているので、結構リアルな感じが出ます。たまたま東北の宮城の北あたりの町についてシミュレーションを出してみました。そこだと、今までが涼しいということもありますが、Aシナリオのもとでは、上昇は、4度ではなくて6度ぐらいです。それを見た町役場の人はびっくりした。何故びっくりするかというと、1度、2度違うとお米の品種の選び方が全部違うわけです。また、そのぐらい違ってくると、恐らく冬の間の水の貯金が雪でできなくなって、流れていっているかもしれない。これだとかなり違う世界になってしまう。対策よろしきを得て、京都議定書の後、アメリカが悪い、中国が悪いといって争っていますが、うまくいってもこれですから、なかなか大変だと思います。

 

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