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(図29)
そういうことをいろいろやると得がある。これは私が勤めているところです。私は「環境省から来たから、節電ぐらいできるでしょう」といわれて、節電本部長にさせられました。家でも「あれやれ、これやれ」といって、「うるさい」といわれていますが、学校に行っても、「電気を消しましょう」とか、お水をまいて、なるべく冷熱をつくってしていましたが、実際には何で節電ができたかというと、ここは20年前の設計ですから、自動制御をしてないんです。東大の槇先生のところのデザインで、設備は基本的に20年前のものです。仕方がないから人間が見て回って、生徒さんのいない部屋は消したり、冷え過ぎているところは冷房の温度を上げたり、止めたりをマンパワーでやった。インテリジェントじゃないんです。
その結果、買電力量は32%削れました。これは15%削れと命令がかかっていた部分です。なぜ削れたかというと、ここぞというときはコジェネを使ったんです。ピークが立ちそうになるとコジェネを動かして、それを冷房のほうにも使うし、電気にも使う。今まであまり使ってなかったのですが、5割増しぐらい使うようにした。何で使ってなかったかというと、こっちの電気のほうが電気として見ると高い。買ってきたほうが安かった。これをやるとCO2量が形としてふえるので、電気のほうがきれいだったということもあります。それを5割増しにした結果、電力の消費量自体は、買い電量が減ったのを減殺する方向で少し増えたんです。けれども、差し引きの消費量で見ると26%の削減になったということです。
これだけ電気を買わないようにしたら、電気代を3割を超えて削ったので貢献割引があってさらにボーナスも来て、電気代の儲けが1170万円ぐらいありました。出費には増えたものがありました。いよいよ本当にだめだったら、罰金を払うのも嫌だから、非常発電機を借りましたが、本当に非常のときに動かなかったら大変ですから、ふだんも少しずつ使いました。それを動かすための軽油代、それからコジェネのガス代が70万円ぐらいありました。リース代も高いですが、それでも差し引くと850万円儲かった。これは2カ月です。3カ月だともっと儲かっています。
知恵を出すとまだまだ需要と供給がうまくマッチする。太陽光発電をやっていないので、コジェネがいわば自然エネルギーのかわりみたいなものです。この自家発量は600キロワットです。300キロワット2台です。非常用発電機はたしか200キロぐらいです。ですから、太陽光で100キロ、200キロ置けないことはないので、そのぐらいのオーダーでも結構役に立つということです。何十万キロワットアワーという消費量の数字を見ると、とても太陽光発電では無理なのではないかと思いますが、追加で使っていた電源の能力自体はそんなに大きくないので、太陽光発電でも手が届かないことはないかなという気もしました。いずれにしてもわかったことは、みんなが協力する。そしてインテリジェントに制御すれば削れるところはある、ということです。
今日たまたま江戸川区役所の人に聞いたら、江戸川区役所はESCOが入っていて、ESCOさんの投資額は1億何千万円だったらしいのですが、3億円も儲かったといっていました。そうやっているあげくに、今年節電だといわれたので、それも頑張って、三十何%削ったということです。乾いた雑巾といわれていますが、結構まだまだ削減して儲ける余地はあるのではないでしょうか。
もっと新しいビルはどうかなと思ったので、2003年竣工のパナソニックの東京本社のビルを見学させてもらいました。そこは、毎年コンスタントに6%ずつ節電しています。だから、竣工時に比べて今電気は、今回の節電の前の状況で、36%減ったというんです。それもハードではないそうです。全部ソフト。制御のチューニングだけ。2003年ぐらいに省エネビルでつくっていますから、センサーをたくさん持っていて、ちゃんとインテリジェントに制御するんですが、そのセンサーの場所を変えてみたり、いろいろなチューニングをすることで36%削ったというんですね。さすがに削りしろがなくなってきたので、今年はちょっと無理したといっていました。ようやく、ご自分の生産のLEDにかえたりというハードもやり出したということであります。これ以上差し引くにはハードもやらなければということになったそうです。2000年やもう少し新しい建物になってくると相対的にはあまり削りしろがないかもしれませんが、結構まだまだ削りしろがあるのではないかということも正直なところであります。
(図30)
さらに、都市の中でもそういうものを見る。慶應SFCの例は何百万キロワットアワーというぐらいですから、街区レベルですね。それをもっと都市に及ぼすにはどんなことができるかということで、私が関心を持って調べさせていただいたのは丸の内のケースとTODの典型例であるLRT、富山のライト・レール・トランジットの話。それから、冷熱利用ということで、ミッドタウンで一生懸命緑を増やしたケースです。
これらはみんなの協力があってできた事例が書いてあります。その結果、追加的にどれだけ削減できたか。ご自分だけでやるよりどんな得があったかということです。それと支出はどうだったか。その協力はうまくいったのか、何で協力できたのか。逆にうまくいかないときに苦労したのは何かということを調べてみました。これはもっと本格的にやらなければいけないなと思っています。単なるサーベイみたいなものです。
(図31)
まず、熱の面的利用について調べました。これも言い古されていてみんな知っていますが、1つは小さい熱源だと経済性が劣るので規模の経済が出る。環境対策もそこだけでやればいいということで、集中的にできる。いろいろな熱を全体として効率的に運用することができる。将来的には需要面もコントロールすればスマートグリッドに発展するというメリットがあると思います。
(図32)
これは丸の内の正面、新丸ビル側の図面です。郵便局も今建てかえが進んでいまして、それぞれ別の熱源で冷暖房していましたが、熱導管をつなげる工事を平成20年にやっています。たった46メートルほどの延伸で、2つの地域冷暖房システムを連結させた。それぞれが低負荷で運転することを避けて、一方を効率よく燃やして、一方を休ませることができる。そうして熱効率を向上させる。これで4%削減できた。費用は初期投資だけで、あとはコントロールだけですから、1億5000万円。今後仮に20年稼働したとすると、その間に削減できるCO21トン当たりの値段は、1万9790円ぐらい、比較的これはお安い事例だと思います。これは金利は入れていません。逆にいえば、エネルギーも徐々に高くなってきつつありますが、エネルギーは要らなくなる。CO2が減ったということはエネルギーも要らなくなっているということですから、将来はその分に伴ってさらに安くなるかもしれません。これは割と良い事例です。成功したのは三菱地所さんの中の話で、それの専門会社であったということで、非常にラッキーな条件です。それから掘った長さも400メートルぐらいですから短い。

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