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(図23)
都市でこそできる。そういった手法を探しましょうということです。どういうことかというと、それぞれ立場を異にする方が、CO2の排出削減の行動を互いに調節し合って、1人1人が単独に行動した以上にCO2の削減を費用効果よく進めるというものがあるのではないのかということです。このことに私としては大変関心があります。
(図24) 
今の都市の中の環境対策、CO2対策を見ますと、まだまだ結論的には発展途上という感じがいたします。伊藤滋先生なども、もっと規制をしろとか、いろいろなことをおっしゃっていますが、そのとおりだと思います。既に幾つかの都市計画手法もあるにはあるんですが、土地区画整理の法律や、経済目的のものに比べますと、環境目的の都市の改造手法、特に法制度はまだまだ慎重、消極的だと思います。
(図25)
だんだん都市行政と国土行政と環境行政は接近してきているんです。接近の接着剤になっているのが、地方公共団体の温暖化対策の実行計画、そして国レベルでは京都議定書の達成計画とありますが、もし地方公共団体が温暖化対策の実行計画をつくるときには、都市計画はそれに配意して定めるということで、地方公共団体がやろうとしていることのフィジカルな反映を都市計画にしてあげるんだという規定が設けられています。公害防止計画があるときは、都市計画はそれに適合していなければいけないという規定を都市計画法に置いていますが、こういうことで合わさって効果がだんだんよくなる。もちろん環境基本計画と国土計画の間の協議は関連部分ということで、実はブリッジがかかっている。さらにもう少し地べたに近いところでのブリッジがかかってきたといえるかと思います。こういう規定はあるので、使っていくということは大事だと思います。
何を言いかけていたかというと、これを入れるときの法改正で、国土交通省の某局長さんのところに私が折衝に行ったんです。まだその方は現役なので、どなたとはいいませんが、「小林さん、小林さん、小林さんは環境を理由に土地利用の規制をしようと思っているんですか」といわれた。「それはそうだな」と思うんだけど、「そうです」といったら、「もう帰れ」といわれそうだったから、「うーん」とかいってごまかして帰ってきました。
やはり環境を理由に規制をすべきです。がしかし、まだなっていないんです。遅れているかなと思います。まだまだ、経済的な制度はいろいろあるのに、環境についての都市計画法、建築基準法、省エネ法との結合が弱いといえると思います。
(図26) 
今後は、安全や衛生、経済利便と並ぶ目標として、きちっと環境負荷を減らすということを、都市計画等々の法目的に位置づけていただくことが1つ必要です。土地区画整理や区分所有法など経済目的のものは法制度があるわけですから、そういう環境公共事業といった都市改善のための事業ツールというものも必要だと思います。
先ほどの某局長さんの「そんなことはまさかないですよね」ということも、まさかにしてしまわないといけないと思っています。
(図27)
そういう目で見ますと、マニュアルはあるんですが、中身はまだまだスカスカだなという感じがします。具体的に都市改造をしたときにCO2がどれだけ減るのか、これもあまり計算されてない。切り分けが難しいですね。だけど、2国間クレジット、CDMをもっと拡張して、ポスト京都では、もっと計画措置といったところで大きくつかまえてそこから生まれる削減量に先進国が投資をするというスキームも考えられていますから、こういう都市改造によるCO2削減というものを方法論としてちゃんとつくっておかないといけないと思っております。
(図28)
先ほどの掛け算をここでも使うわけです。どういうところで都市では、掛け算の協力が成り立つかというパターンをちょっと考えてみました。
1つは、地理的な協力、主に都市の改造でできるもの。それから、中に埋め込まれる仕組みでありますが、時間的にいろいろな人が協力する。具体的にどういうことかというと、例えば供給に合わせて需要を増減するということです。自然エネルギーの供給のほうがタイトですから、それに需要をなるべく合わせてしまう。充電池をかますというのもあるとは思います。それから、いろいろなグリッドに入っている電源の中でも、基本的に低CO2電源を優先的に活用して、効率の悪い電源は休ませるというポリシーでやっていくなど、いろいろなことがあると思います。そういう意味では時間的に需給を調節するという協力もあると思います。
それから、サプライチェーンの協力もあります。サプライチェーンの、原料から部品を組み立て製造して、消費者が使用して捨ててリサイクルするという全部のライフサイクルを考えたときに、その中でどこかが増えますが、逆に損して得とれといいますか、ここでボンと減るというソリューションもあるでしょうということです。例えば、高張力の鋼板。製鉄所では一生懸命それなりの資源をつぎ込んで、薄くて力のある鋼板をつくっています。そうすると、高くは売れるけど、製鉄所はCO2は増えている。ところが、それを自動車に使えば、自動車は軽くなるから燃費がよくなる。差し引きどっちが得かというと、軽い自動車をつくったほうが得なんです。だから、損して得とれであります。例えば、低硫黄軽油というのもそうです。製油所で硫黄を徹底して抜くんです。ガソリンはあまり硫黄が入ってないんですが、トラックの軽油は入っているんです。これがすすをつくったりします。すすの処理をする装置が重くなってしまう。低硫黄軽油にしてしまうとすすとりが楽になるということがあります。そういうやり方で、製油所では少しCO2は増えるけれども、自動車の燃費がよくなってCO2としては得をするということがあります。
ほかにもいろいろあると思いますが、これ全体を減らしていこう。今「スコープ3」という言葉で出てきています。どちらかというと民間ベースですが、そういうサプライチェーン、あるいは消費が入ってまでのチェーン全体のCO2をちゃんと計算してそれぞれの会社がその情報を開示して、CO2を減らすモチベーションをつくろうということが言われています。
私は、ポスト京都議定書のような国際ルールの中でもそれを位置づけたらどうだろうと思っております。そういったものはかなり現実的になってきています。
都市改造。これはいろいろあります。もちろん地産の自然エネルギーを利用するマイクログリッドがあります。現物としては、例えば八戸や飯田など多少はやっています。ポピュラーですが、もっと大々的にやったらいいなというのは廃熱利用です。都市にこそ廃熱はたくさんありますので、それをカスケードで使っていく。
需要と供給がそばにいないと成り立たないという意味で、例えば公共交通機関の周りに宅地をと置く、人口を置くということは典型的な協力です。TOD(transit oriented development)は日本のお家芸みたいなもので、小林一三さんが関西で始めた阪急の開発はこれです。日本で初めてローンを組んで建て売り宅地を売った。そもそも阪急電車の線路の周りは人がいなかった。鉄道として成り立たないわけで、それでは困るというので、お客さん自体を駅の周りにつくってしまう。一番終点の宝塚にはみんなが来る娯楽施設をつくるということで、鉄道がうまく力を発揮できるようにするということを編み出した。それがTODです。そういうものはもっとやってもいいんじゃないかと思います。
それから、熱需要を減らすという意味での自然エネルギーの利用の仕方としては、緑地の冷熱をうまく使うということもあると思います。

 

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