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もっとやっていこうという例としては、中央清掃工場の廃熱利用のケースのフィージビリティー調査をしています。まず配管工事が大変です。道路工事なんかと一緒やらないとすごくロスができてしまう。熱供給会社についての事業的な要請が強過ぎるのではないか。CO2を減らそうと思ってやるんだから、短期で黒字化しなくてもいいと思います。中央清掃工場の場合、費用がかかりますが、それでも先ほどのケースの倍ぐらいでおさまりそうということです。しかし、これは地権者もいろいろあるので、これだけ大々的にやろうとなると、相当強力な連携の仕組みがないといけないと思います。
(図33) 

 

 

 

 

 

 

 

交通需給の管理と組み合わせの向上とありますが、TOD、LRTの周りに交通事業も集めるということです。富山の例ですが、コンパクトな市街地をつくると行政費用は削減できます。これが市がねらっている理由です。青森市もはっきりそうですね。スプロールすると大変なんです。特に青森は雪が降るから、雪かきでお金がたまらなくなる。なるべく市街化区域の中に撤退してほしいということで、割と大胆に環状道路、外側に道路をつくって、その辺から先は市街化調整区域にしているということをしています。
富山の場合もそういうことを考えてやっています。富山では富山駅から海までの既存のJR線を路面電車にかえた。取組みの内容は、駅も増やした、ダイヤもどんどん増やした。値段も下げた。さらに駅周辺に住宅整備をして、平成16年比、21年で32%人口増といっています。それから、駅からおりた先も便利にするということで、駅前広場からさらにちょっと遠目のお宅にはフィーダバスで行けるということをした。自動車が減った分も計算しますと、全部で4631トンのCO2が減りました。計算すると、だんだんに集客効果があるという見通しになっているので、それも見込んだ上で1トンのCO2削減費用を計算すると29万円になります。これだけかかかっているので、先ほどの丸の内のケースに比べると1けた上になってしまいました。これは高い。富山では初期投資が58億円かかっていますが、富山でできた理由は国の補助金が48億円もある。これはなかなか容易ではないなと思います。こういうことが成功の理由にあった。
今後これをいろんなところでやっていこうと思うと、巨額の初期投資が要る。例えば、東急線のシームレス化、地下鉄との相互乗り入れにかかったお金は9000億円。すごいですね。これは、CO2的には結構いいんです。シームレス化でお客さんは楽になって、自動車交通量もその分減る。それを計算すると、CO2削減効果は出るんです。ただ、どういうバウンダリーで計算するのかということで難しいところはありました。専ら交通政策としてやられているということもあります。こんなお金を環境政策でご用立てすることはとてもできない。だけど、環境上の効果はある。こういうのをどんどんやっていくことになりますと、こういった問題を克服する政策、制度も要るのかなと思います。
(図34)
緑地です。緑地はいろいろないいことがあります。私は大好きです。うちの隣も100平米ぐらいの区有の小さな緑地ですが、そこをずっと測っていると、緑地のある側の家とない側の家で、同じような条件のところを測っても、夏は、コンスタントに1度は低いです。100平米の緑地で1度ぐらい低い。結構ありがたいものだなと思います。CO2も吸収しますし、冷熱運ぶ。汚染物質も吸着する。私は、区が伐採に入って枝落としをすると、その枝を家のまきストーブ用にそのまま置いていってくださいといって、もらってしまう。気温も安定化し、生態系も維持される。資源化にもなる、防災にもなる。いいことずくめです。
(図35)
これは国立環境研究所の藤田さんという研究官の結果ですが、川崎市の遊休地を徹底的に緑化するということをやって計算すると、川崎市の気温を2度下げられる。冷房エネルギーを40%ぐらい削減できるだろう。冷房って、外が35度のときは28度にすると、7度下げているだけです。7度のうち2度稼げればすごくありがたいですよ。1度、2度がばかにならない。
(図36)

 

 

 

 

 

 

 

それで、具体例がないか探しました。東京ミッドタウンの緑地です。これはほとんど三井不動産さんが整備してあげたのだと思いますが、港区の公園と防衛庁跡地の木をとっておいて、これをくっつけるように大きな公園をつくった。ミッドタウンのほうが2.6ヘクタール出して、区立公園が1.4、合わせて4ヘクタールの緑地をつくったことになります。これも一体的な計画ができたからよかった。それでどうかということですが、一応昼間で3度、夜間で1度程度は確かに気温は下がったということです。周りに住宅地がありますが、この辺は普通の低層の住宅地です。4階建てぐらいまでの小さいマンションとかがある。恐らくここは地価も上がったし、涼しくなって、景色もよくなって、このあたりの人はきっといい暮らしになったと思います。
(図37)
その人たちが冷房をどれだけ絞ったかというのは余りわからない。もちろんミッドタウン自身の冷房負荷も下がってはいると思いますが、ちょっとよくわからない。お金はというと、もともとあった公園ですから、土地代は入っていない。整備費が12億円。お金からいうと土地代まで入れると1900億円ぐらい。冷熱のために1900億円はないです。1トンのCO2を幾らでここは減らしたかを計算したら費用対効果が悪い。でも、効果は結構おもしろいものがあると思います。

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