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23区では、江戸川、江東、港、中央、品川、大田と6区、海に面しているわけです。それぞれに港湾局から照会文書が行っているはずです。私のところに決裁が回ってきて、「特に意見なし」と書いてあるわけです。担当課長を呼んで、「これはどういうことなの」と聞きました。「従来こういうことなので」「東京都に何か意見いっちゃいけないの」「いや、そういうことはないですけど」「緊急整備地域であれだけ東京都といろいろやったじゃないですか。何で意見いわないんですか」。こういう応酬を少しやりました。
先ほど申し上げた港区のまちづくりの位置づけ、私が部下で使っている課長も含めての職員とのやりとりを恥を忍んで紹介させていただきました。港区のまちづくりは皆さんの心の中にどういう位置づけにあるのか、お1人お1人に聞いてみたいぐらいですが、私の今のこの瞬間の感触でいうと、高い地位にはないのではないかと思っているわけです。それは継続的に打っていくことで改革しなければいけないと思っておりますし、こういう場にお集まりの皆さんとちょうちょうはっしやることで鍛えられるものはとても多いのではないかと思っております。職員にもその旨を口酸っぱく言う毎日を今過ごしています。
(図5)
今日は、せっかくですから私の成果目標、私なりに皆さんと情報共有してどういう心持ちになっていこうかということをお話しさせていただきたいと思います。
当たり前のことですが、皆さんとは同業ではありません。お互いの違いは、これは差別するのではなく、区別をして理解をしたいということです。お互いの立場がございます。そして、知っていただきたいのは、冒頭から公務のことや組織のことをお話ししているのは、組織の仕組みやどんな給料をもらっているのか、そういう生活も知っていただいた上で公務員を攻略して、皆さんの仕事に役立てていただきたいという思いでこれからのお話をしていきます。皆様にとっては、攻略というのは、街で目指していることを実現する近道なんだろうと思います。今日はいろいろなヒントを散りばめられればなと思っております。
もう1つは、同業ではないんですが、同類という意識。今この瞬間は距離があるかもしれませんが、だんだん話をしていく間に同類だなと思っていただければ幸いです。そうなると、役所への敷居も低くなり、私も皆さんと、一献酌み交わすまではいかないまでも、仕事の上でいい仕事をしていくことができる。心が通じ合わないといい仕事はできないというのは皆さんもご経験だと思いますが、公務員とも、「ああ、こいつとは同類だな」という人を、全員は無理ですが、1人でも2人でも、目指す部門につくっていただきたいなと思います。
ここにお集まりの皆さんは、ほとんどの方が、何かに向かってあがいておられる方だと思います。私も、先ほどのように港区のまちづくりの地位を向上したいとあがいております。
例えば、規則やルールに私は懐疑的です。皆さんはどうでしょうか。守る方でしょうか。懐疑的と言うといい過ぎかもしれませんが、例えば、私は構造改革特区やネーミングライツは大嫌いです。押しつけられてやることではないですね。後でその例をお話しします。規則やルールは人が生活していく上で必要ですが、必要悪でもある。必ずそれに従わなければならないということはないわけです。おかしければ変えていけばいいということです。
もう1つ、次の日には違うことを言う。皆さん、どうでしょうか。私は発想が飛躍して、「前日言ったことと部長、違いますよ」と言われることは毎日のようです。ただ、言い訳をさせていただくと、日々人は進歩しておりますから、「前日とは違うことを言っても正しいんだ」と言って通してしまいますが、どうでしょうか。こんなことを言われたくないと思われるかもしれませんが、同類だという要素の1つに入ってくれば幸いです。
もう1つ、これは皆さんそうだと思います。若い人にもそうであってほしいと思います。何とかしよう。いろいろ壁があって何とかしようとあがいているわけですが、100%ではなくても、いつの間にか何とかなってしまう。自分の時代に100%できると思ったら、すべてのことは大間違いだと私は思っております。自分の時代に50でも60でもできて、次の世代に100を目指すようにしてもらうことが必要だと思っています。
最後に重要なのは、面従腹背。失礼な言い方かもしれませんが、野心を持っていて、上司に対してにこにこと接しながら、いつかそれは乗り越えて、自分の時代になったら何とかしてやろうと思っている方は多いのではないでしょうか。少なくとも私はそういう精神構造で仕事を今までやっています。自分も同じだという方がこの場で1人でもあらわれていただけると幸いです。
そこで、私の成果目標です。目的意識を共有できる存在としてお互いを認識できれば仕事がしやすくなるかなと思っております。これからこういう場面ではなくて、仕事の場でちょうちょうはっしやることが出てくる方ばかりだと思いますので、街をよくする、街を理想的にする、そういう目的意識は規則に縛られず、昨日言ったことと違ってもいいことはいい、何とかしようとしている、そういう、お互い同業ではないけれども同類だなという意識を持てれば幸いです。

  1. 専門性へのテーゼ ~本講演の立脚点~

(図6)
さて、専門性へのテーゼとあります。主張です。その前に、私は区長のそばでどういう仕事をしてきたのかということを少し紹介させていただきます。基礎自治体の政策について簡単にお話しします。
私が管理職になったときに初めて出会った港区長が原田敬美という建築士でした。建築事務所を今でも六本木でやっています。技術系で歴史上初めて港区の区長になった方でした。4年間でした。若かったので、2期目、3期目とやるかなと思っていたら、ある小学校の統廃合問題で、次の選挙に出られない憂き目に遭ってしまいました。通常ですと、元気ですし、能力もある方なので、2期目もあったかもしれない。6月27日が任期でした。2000年の次は2004年の6月、2008年の6月、次は2012年、来年の6月に選挙が来るのが港区のローテーションです。そこで当時部長だった武井雅昭という今の区長が、部長1年目で52歳だったと思いますが、白羽の矢が立ちまして選挙に出ました。そのとき私は前区長のときに介護保険課長をやっていて、ちょっと国に盾突くようなことをやったわけです。私は福祉畑は長いんですが、介護保険制度というのは正直いって嫌いなんです。制度を改善するには、嫌だと言っていても仕方がないので、介護保険白書というものをつくりました。全国で初めて厚生労働省に突きつけたんです。当時嫌がられましたが、何十項目もある提言は今介護保険制度の改善に結びついています。そういうこともあって、原田敬美さんとは少し仲良くなって、よしよしと思っていました。そして政策をやってくれというので企画課長になりました。政策を区長の意を受けて直につくるのは、どこの自治体でも大体企画課長です。部長ではない。部長も重要ですが、企画課長がまず第一につくります。

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